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Another story of Kirby 第二部 [43]



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投稿時間:02/10/24(Thu) 09:10
投稿者名:yuletear


惑星ケビオス。

3つに別れていたカービィ達だったが、
Ωの出現、夢の泉の氾濫の件を話し合う為に
一時、ノヴァに帰還していた。

「Ωは逃がしてしまったし…夢の泉は氾濫してるんですよね?」
カビラスが困ったように頭をかいている。
ノヴァ会議室内は、また煙草の煙が充満し始め番人が眉をひそめている。
「それで?何の対策もしないまま戻ってきたのか?」
番人がカービィに向かって問う。
「………。」
会議室内はカービィの返事を待つかのように静まり返った。
「あ!そういえばそうだね!…忘れてた…えへへ…。」
カービィはバツが悪そうに可愛い舌をペロっと出して照れ笑った。
『忘れ(んなよ・ないで下さいよ)!!』
一部を除く面々がカービィにツッコミをいれる。

「…その、Ωさんという方のことも大切なんでしょうけど…、
夢の泉…でしたっけ?光の氾濫を食いとめないと大変なことになってしまうのではないでしょうか?」
リグレットが空気清浄機のスイッチを入れながら言う。
「そうだな…光を抑えようとすれば、ケビオス自体に負担がかかりかねないしな…。」
番人が腕を組みながら悩む。
カビラスも何かの構図を書きながら頭をひねっている。
会議室には妙な沈黙が訪れる。
ターツは空気清浄機の近くで煙をはいた。
白い煙は、清浄機の出す気流に飲みこまれて消えた。

「あの………」
リグレットが消え入りそうな声を出す。
「どうしたの?」
カービィがきょとんとする。
「…溢れる光の力を…利用することは出来ないでしょうか?
…抑えるのではなくて………。」
その言葉にカビラスがはっとしたように顔を上げた。
「そうだ!流用すれば良いんですよ!!」
カビラスは愛用のリュックをごそごそやっている。

「あった!!」
数分後、カビラスは機械を取り出した。
「…なんだそりゃ?」
ディーラがしげしげと眺める。
「これは…まあ、行ってからのお楽しみということで。」
カビラスは笑いながらウインクしてみせた。


〜ケビオス・夢の泉〜

「おぉ…カービィ殿。そちらの方は?」
ワムバムロックが珍しそうにカビラスを見る。
「僕はカビラスって言います。すみません、ちょっとコレ、つけさせてもらいますね。」
カビラスは簡単に挨拶すると、夢の泉に近づいた。
「…っと、ここをこうして…これで良しっ!」
カビラスは幾つかの装置を泉の周りに設置し、最後に箱の形をした機械を置く。
まとまり無く溢れつづけていた光が1ヶ所に集まり始め、箱型機械に注がれる。
それはさながらミルキーウェイのよう…。

「うわぁ♪綺麗♪」
カービィは嬉しそうに跳ねる。
光が注がれた機械が作動し始めると共に、
目の眩むような光を発していた夢の泉は自然な光を取り戻す。
「おぉぉ…カビラス殿、これは一体…。」
ワムバムロックは目を細めながら、カビラスに問う。
「余計な光を利用したんです。この機械は…空気を綺麗にします。」
一瞬、沈黙がその場を支配する。
こほん。と小さな咳をして、カビラスが続けた。
「ただ空気を清浄するだけじゃなく、それと同時にダークマター達の力を削ぐ事も出来ます。なんてったって、夢の泉からの光ですからね。」

「良かったね♪ワムバムロック。」
「これでケビオスも態勢を整えることが出来る…。
ありがとう、カービィ殿。カビラス殿。」
ワムバムロックの言葉に、カービィとカビラスは笑顔を返した。

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投稿時間:02/10/25(Fri) 17:06
投稿者名:ひでぶ


この季節、プププランドは朝日が昇るころから昼前にかけて、
そして、昼下がりから夕方にかけて、しばしば鱗雲が出る。
生命が住むどこの星であれ、秋の空の具合は変わりやすいというが、
ポップスターの中でもプププランドの大陸は特に天気が崩れたり、
よくなったりを繰り返す。この鱗雲は、そんなプププランドの
秋の天気の象徴だった。一見魚にも見える高積雲は、雲海を泳ぐ
ために、雨雲や雷雲を呼び寄せるのかもしれない。

少なからずルックグリーンは、プププランド上空で発生する
この鱗雲の影響を受ける場所にある。現に今、ルックグリーン上空に
流れ着いた鱗雲が、少しずつ、周りに灰色の雲を纏おうとしている。

やがて。
ルックグリーンの樹海に、冷たい雨が降り注ぎ始めた。


その中央よりやや西にある大穴。無数に張り巡らされた蔓を、
雨粒が触れる。水滴は蔓を伝い、木の幹まで流れる。それから
真下へ流れていき、雨水は、木の根へと吸い込まれていくのだ。
だから、雨が底まで届くことは無い。

琥珀の広間よりも、その下の紅い光の部屋よりも更に奥、更に底。
陽が射さないのは当然であり、そこは、いつかポップスターを
覆い尽くしたような『闇』を濃縮し、液体と化したものを蓄える
泉だった。初流乃は、そこに招かれている。

『種……アナタノ持ッテイルモノ、ソレガ……ワタシガ
本当ニ望ムモノ。アナタガワタシヲ必要トスルトキ、
ワタシハ、ソレヲ受ケ入レヨウト思ウ』

闇の泉に根をびっしりと張らした黒き紅に染まった薔薇。
それが、優越の薔薇の本体だ。

「とりあえず、今の貴女は目立ちすぎます。
ポップスターを離れ、どこか別の場所へ移ってもらいましょう。
……そうですね」

彼の左手が静電気を纏わせた、その瞬間。彼と薔薇のいたその場所が
漆黒の異空間へとなった。手の型を変え、空の番人は、薔薇の根に
新たに別の空間への扉を施す。その根、一本一本、それぞれに。

「ポップスターに続いている根は一本だけ。他は、また別の
生命のいる星に。ポップスターだけではなく……様々な星の、
様々な生命の意思を知ってください。少しずつ」

無数に散らばる生命の住む星には、流石に優越の薔薇であっても
根が足りない。一本ずつならば、いくら薔薇の根が肥大化しても
その星に危機を及ぼすこともない。

「貴女の手となり、足となるのは、あの娘達です。今までと
変わりませんよ。貴女の想いを直に他の生命に伝えることが
できるのは、貴女の大切な友達だけですからね」

小さな印を刻んで、初流乃は闇に溶け込んでいった。
「……暫くは、今まで通りに」



琥珀の広間にて。またも読書にふけっている闇の師。薔薇の
使い達が騒然とはしゃぎ回っているその場所から、少し離れた
所に彼はいる。巨大な音響の大音量にも劣らないような少女達の
声は、彼の読書に障っているようである。

およそ一刻程前に、桜の悪魔が義骸に姿を現した。
それからというものの、少女達は『新しい友達ができた♪』などと
喜んで、こんな風に騒ぎ始めた。桜の悪魔は、彼女なりに事を
楽しんでいるようではあるが、何やらどうも不満そうなのが、
闇の師ハインも、時幻魔スラリンも、よく読み取れた。


パタン、と。ハインは考古学の書物を閉じると、立ち上がり、
1つ下の層へと降りていった。その姿を見て、含み笑いをする東、
な〜ビィ、くるみに菊花。そろり、そろりとハインについていく。

2人きりとなったのは、レモンと桜の悪魔・夜深。
「随分見ないうちに、なんだか縮んだね」
あの場所で会ったときのレモンは、今の姿をとってはいなかった。
小さな子供と話をする時のように、桜の悪魔は膝をついている。
「あの時あなたに会って、思っていたの。きっと、あなたは
こんな風になるってね。……変わらないのよ、あなたも。
いいように扱われるダークマターって子達と。『生きる』って
ことを、希望を捨てて、あなたは成り下がったのよ。操り人形に」

濃い緑に色づいたレモンの瞳は、焦点が合っていない。
桜の悪魔と面を向け合って入るが、どこか、別の場所をみている
ようである。……桃色の髪の少女は、薔薇に冒された少女の顎を、
片手で掴んだ。

「やっぱり私は、あなたが嫌い。この場で殺してしまいたい。
でもね……暫くは見ていてあげる。操り人形の、あなたの姿をね」

立てた爪が、レモンの顎に食い込んだ。
そして、滲んだ血が爪に付着する。


ふふふ……あははははははは……!!


琥珀の広間に響いた、桜の悪魔の狂気に満ちた笑い声を聴き、
レモンもまた、微かに笑ってみせた。



すっかり日が落ちたその時間。雨はしとしとと静かに降るように
なった。グリルや竜轡らは、合流したメタナイトと共に、ディーラと
マルクの帰りを待っていた。「日没までには戻る」と、マルクを
抱えたディーラはそう言ったはずだったのだが。
……彼らは未だに帰還していない。

リップルフィールドに発生していた怪奇植物の根や蔓が、嘘のように
縮んで、地中に戻っていくのを目撃した時、グリル達は驚きを
隠せなかった。あの2人が、これを成し遂げてみせたのだろうかと、
事情を知っている者、薄々と勘付き始めている者は胸を膨らませたりも
したが、彼らが帰ってこないとなると、段々と不安になってしまう。

捜索隊を作るという案が、そろそろ立てられるような展開になってきた。


かがり火は、防水製のテント群を、少し離れた場所から
照らしている。火の粉を巻き上げるそれらの独特な明るさと
温かさは、秋の夜警に十分役立つ。

「柳さん、少し休んだらどうだスか?」
かがり火用の薪を持ってきたメイスナイトが、昼から警備を
続けている柳を気遣った。「ありがとう」などと微笑しながら
(正確には、メイスナイトは口元だけでそう判断したのだが)
礼をしたものの、彼女は首を横に振る。
「……こうしていたほうが、気が紛れるんです。何かを
していなければ、どうも考え事をしてしまうから」

「考え事……」
感慨深そうに呟いたメイスナイトは、続いて唐突に尋ねた。
「そう言えば柳さんは、何で我々の仲間になっただスか?
交流パーティの時も、聞けなかっただスし」

柳は口篭もり、それからばつが悪そうに頭をかいた。
「ごめんなさい……今は、まだ言えないんです。
とあるヒトに、星の戦士達の仲間になるよう命じられて。
いずれ……きっと話す時が来るでしょう。それまで、どうか」


「ふぅん……謎多きヒトなんだねぇ」

聞き覚えの無い声。2人は、武器を構え辺りを見回す。
「どこだスか!?」

「……慌てないで。撃たないでよ?ボクは敵じゃないからね」
声の主である少年が、彼らの上空から軽やかに着地した。
何やら大事そうに球体を抱えているこの少年、頭に、角が生えている?

「悪魔……?」
柳が、咄嗟にそう呟いた。それを聞いて、悪魔の少年は
「ピンポーン♪」とOKサインを出す。
「正確には、ボクの種族は『時幻魔』。割と上級種族なんだから、
そこらへんよろしく。とりあえず、ボクが知ってる人はここには
いないみたいだなぁ……。カビラス君とか、番人さんとか。
……ま、当然まだ宇宙か」

「それで……その時幻魔さんが一体どうしただスか?」
「ちょっとね、受け取ってもらいたいものがあって」
時幻魔は球体を、ちょうど3人が囲む中心に置いた。
「助け出すときに、運びやすくするように中にいれてきたんだけど、
応急処置しかできなかった。特にディーラさんは急いで手当してあげて」

『ディーラさん!?』
2人が顔を見合わせている間に、即座に時幻魔・スラリンは
マジックボールに解呪をかけた。

「それじゃ、用は済んだから」
夜の闇に消えゆくスラリン。
「ちょっと待てダス!……ああ、もうっ!」
「メイスナイトさん、そんなことより早く、この2人を!」

解呪されたマジックボールの中から出てきたのは、
ディーラとマルク、紛れもなく彼らであった。

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投稿時間:02/10/25(Fri) 19:58
投稿者名:St@Na


グレープガーデン。
さっきからデデデは『シャイン』と書いた紙を貼った枕に殴打を加えていた。
「・・・何をあんなに怒ってるんですか?」
「・・・あー、Mr.シャインがうっかり『優越の薔薇』の花弁捨てたから怒ってんの」
「城が破壊された原因を作ったのは自分の部下ですか・・・(苦笑)」

あふれた光を吸入し空気清浄機を強化したのはいいが、
ターツは調子に乗ってさらに煙草を吸い始めた。
「・・・・・このヘビースモーカーが(怒)」
リックは切れる寸前っぽい。
「・・・拾ったロープの正体は何だ?」
番人が訪ねる。
「・・・・・・」しかし何も言わずカビラスは沈黙した・・・。

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投稿時間:02/10/26(Sat) 18:04
投稿者名:yuletear


「カビラス?」
番人が怪訝そうにもう一度 声をかける。
カビラスはその幼いながらも端正な眉をひそめ、何やら考え事をしているようだ。
「どうした?何か気になることでもあるのか?」
そこまで言われて、カビラスはようやく呼ばれていたことに気がついた。
「あ、すみません。で?何ですか?」
「…いや。大した事じゃない。何か考え事でもしてるようだったが…何かあったのか?」
ひとまずロープの話題から、カビラスの考え事に話題を振る番人。
「いえ…ちょっと…」
カビラスが口篭もる。

「何だ?聞かせろよ。」
何時の間に喫煙を終えたのか、ターツがカビラスの背後から現れる。
「た、ターツさん?!…ビックリさせないで下さいよ。」
カビラスは驚いたのか、胸に手を当てている。
「良いだろ?とりあえず解決しなきゃいけない事は『一応』一段落ついたんだからさ。」
『一応』を強調しながら、ターツはカビラスを促した。
「え…えぇ、まぁ…。」
彼は小さな溜息をつくと、憶測に過ぎないんですけど。と前置いて話し始めた。


「僕が皆さんと合流する前、スラリン君達と一緒に居たというのはお話したと思います。」
番人とターツは頷く。
「僕達は大彗星を呼ぶ為に、夢の泉を巡っていたんですけど………」
そこでカビラスは言葉を切った。
「…彼等の行動は不可解です。僕達の力になるよう、ノヴァに願った。
そして、ここ…ケビオスの夢の泉。泉の光を氾濫させても…ハインさん達には何の利益もありません。」
「しかし…。奴等が何か企んでいないという保証は…」
番人が反論する。
「そうです。もしかしたら、何かの為に氾濫を起こしたとも考えられます。
けど…ずっと考えていたんですが。…泉の光が起きて被害を被るのは誰だと思います?」
「それは…ケビオスの連中じゃないのか?」
ターツが怪訝そうに答える。

「…僕も最初はそう思いました。でも、考えてみると違うんです。」
カビラスは二人の顔を順に見た。
「むしろケビオスの人達はそれによって利益を得る事が出来るんです。」
「…どういうことだ?」

カビラスは説明を始めた。
夢の泉の光の氾濫によって、ケビオスの人達への実質的被害はほぼ皆無であること。
光が大幅に流れ出たとしても、夢の泉の光は尽きないということ。
そして………
ダークマター達は、その光を嫌う。ということ。


「つまり、02達の侵攻からケビオスは守られるということなんです。」
カビラスの言葉に番人とターツは絶句する。
「ハインさん達…つまり、初流乃達は02とも友好関係にはありません。
02達に有利になるような事はしないと思います。
光の氾濫は…確かにケビオスの人達にとっては未体験で、驚くのも無理はありません。でも、それに守られてるんです。彼等は。」
「だが…本当にケビオスに弊害が無いと言いきれるのか?」
番人がなおも食い下がる。
初流乃に関わることでもあり、やや過敏になっているようにもとれるが…

「カビラスさんの言う事は、正しいと思います。」
灰皿の片付けを終え、リグレットが話に加わる。
自分の血がつかないようにカービィを抱えながら、彼女は付け加えた。
「憶測だけで言っているわけでは無いでしょう?被害の可能性が皆無ということ。違いますか?カビラスさん。」
カビラスは無言で頷いた。

「私は…その、ハインさんという方がどのような方かは存じ上げませんが…
少なくとも、この星には悪意が残っていません。
他で何が起きているか…そこまでの予測は出来ないにしろ、この星はあの光で守られています。…それは、ケビオスの皆さんだけでなく、私達も。」
番人は暫し考え、やがて頷いた。
「確かに…02達でも、この星に侵攻することは難しいだろう。
あいつ等が何を考えているかはわからない。
だが…あれは必要だった。という事なんだな」
「…リグレット嬢ちゃんには弱いよな。お前も………いてっ!」
ターツが茶化し、番人に小突かれた。

「ケビオスの皆はちょっとビックリしたかも知れないけど、
でも、それで痛い思いや悲しい思いをする人が減るんだったら…
良い事だよね♪綺麗だしw僕達も負けてられないね。」
リグレットの腕の中でカービィが笑った。
「僕等も、僕等に出来ることを考えようよ!今、僕等に出来ることをしよう!」
カービィの言葉に、三人は強く頷いた。
『僕の知りたいこと。近くなるね。』
リグレットの肩の上でLCHがふわりと揺れた。

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投稿時間:02/12/08(Sun) 18:46
投稿者名:シルフィード


 「いったい何なんや、あれは……。早よ帰って調べんと……」
 一方、泉の光が逆に自分達を守っているなど知る由もないヒャンスは、泉でとった写真を分析すべく、帰路を急いでいた。
 そして、家まで後2、300メートルとせまった時――それは起こった。
 ゴゴゴゴゴ……と、上の方から地鳴りがした。
 つまり、何かがケビオスの岩盤を掘り進んでいるのだ。
 しかも、その何かは、その……ヒャンスの家のほうへ向かっているようだった。
 「ちょと待てや!あかん!」
 彼女は慌ててダッシュしたがもう遅い。
 
 ずがががあ〜ん!

 盛大な爆音と土煙を上げて、「何か」は彼女の家に突っ込んだ。
 当然、家は全壊。
 ヒャンスは、破壊された家の前で呆然と呟いた。
 「わての家が……。システム・ドートンボリが……。」
 システム・ドートンボリ。
 それはメイン・コンピュータの「クラブ・ド・ラーク」、セカンド・コンピュータの「ふぐりん」
そしてサーバーの「クヰ・ダオーレ」の三つを主とする、彼女が独自に組んだパソコン・システムの名前である。
 それが今、彼女の目の前で家もろとも破壊されてしまった。彼女のショックは相当大きいものだろう。
 彼女はしばし呆然としていたものの、しばらくすると怒りがこみ上げてきたのか、あのクソ忌々しい何かを一目見て&ぶん殴ってやろうと、家の裏側に回りこんだ。

 突っ込んできたのは宇宙船であった。中から、数人の声が聞こえてくる。
 「あちゃー……。座標を間違えたかな?」
 「しっかりしてくださいよ!全く!また始末書書かされるじゃありませんか!」
 「そりゃこの船はこれくらいで壊れるような代物じゃありませんが……だからって、目標の家に突っ込むのはどうかと……」
 その時、どごっ、という鈍い音がして、船内がわずかに振動した。
 続いて、
 「責任者出て来いやボケぇぇぇッ!」
 という、ヒャンスの天をも揺るがすような大声。宇宙船の分厚い壁を難なく貫通している。
 「ひ……ひいいいえええっ」
 「うわ……どうしよう……。とにかく、表に出るか」
 
 ヒャンスがドアを空手キックして、大声で怒鳴ってからしばしの間を置いて、一人の青年が出てきた。
 頭にターバンを巻いた、およそこんな宇宙船には似つかわしくない男だ。
 「えーと……。僕が一応、責任者のシードです……」
 声に、怯えの色が混じっている。
 「わての家を破壊しおってからに……とーぜん、この責任はとってもらえるんやろな……?」
 ヒャンスは今や怒気の塊と化していた。
 「責任とってもらうのは家だけやあらへん……。システム・ドートンボリもやで。
自分らが宇宙船で突っ込んできおったおかげで……。
生き残ったのはわてが今持っとる、ノートパソコンの「グリコマン」とデジカメの「露鉱御炉刺(ろっこうおろし)」だけや。
寝屋川に突き落としたろか?え?」
 シードの胸ぐらをつかんで揺さぶり、ヤクザのように迫るヒャンス。
 彼は命の危険を感じた。
 「で、でも……僕は下っ端なんですよ!
ボスと司令官は本隊を動くわけには行かないし、他の部下も一人は本隊の家事全般を請け負ってるから行けないって言ってるし、一人は大怪我で治療用
カプセルから当分出てきそうにないし……僕しかいなかったんですよ!
だ、だからどどどどーか、命だけは……」
 最後の方は涙声になっていた。
 無論、シードの実力からすれば、ハッカーの一人や2人簡単に倒せる――あるいは「種」に変えてしまうことができるだろうが、さすがにここまで威圧されてしまった後では、それも無理であった。
 「ボスと司令官……やと?」
 シードの言葉に、ヒャンスは食指を動かされた。
 「あ、ああ。なんなら、今すぐ通信つなぐよ!だからちょっと宇宙船の中に……」
 ヒャンスは、ふうん、とシードを一瞥し、
 「なら、そいつと話させてもらうでぇ」

                           *
 
 「ふふ……また一つ、記憶が加わったわ」
 一人の少女が、いとおしげに扇子を眺めていた。扇子は、さまざまな色に輝いている。
 不気味なオーラを放ちながら。
 「そろそろ、誰か引きずり込んであげようかしら」
 少女は、口元に笑みを浮かべた。
 
 「あなたが、花乱?」
 ふいに少女は声をかけられた。振り返ると、いつの間に忍び寄ったのか、そこにはひとりの女性がいた。
 「そうよ。でも私に声をかけたのが運の尽きね」
 「どうして?」
 女性が問う。
 「だって……私が記憶の箱庭に引きずり込んであげるから」
 おもむろに、彼女は扇子をすくい上げるように振った。

 光の網が、女性を捉える。
 でも、それだけ。

 「どうして!?あなたは一体……」
 「そんなことどうだっていいの。それより……あなた、私と「似ている」ね。
ねえ?似たもの同士、私と一緒にいましょう?」
 十数秒の沈黙の後。
 「いいわ……。一緒にいましょう」
 
 感のいい人々ならもう分かっているだろう。
 女性は桜の悪魔だった。


 
 ――似ているところって――何かしら?
 
 ――それはね――あなたも――私も――

 
 ……ふふふふふ……

 あははははは……っ……

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投稿時間:02/11/12(Tue) 03:00
投稿者名:ひでぶ


ex:40

初流乃の目的:
残るゼロツーをスナッチにて吸収し、莫大な力を入手して、
破滅の厄災『ウルティアリス』を発動させること。
即ち他の誰かが成すのではなく、自らの力で終焉をもたらすこと。
自分の肉体がそれにより朽ち果てようとも、達成すること。
"I'm not OK.You're not OK"に近い考えであること。

初流乃とゼロツーの関係:
初流乃は↑を望んでいるので敵対関係である。
ゼロツーは初流乃に対し何かしらの恐怖観念を持っている。

初流乃と夜深(桜の悪魔)の関係:
虚空の歯車に宿っていた夜深は、初流乃の肉体に核を移動してから
同体(not一心)である。故に、初流乃が死ぬ時、桜の悪魔も死ぬ。
桜の悪魔がマテリアル状態で存在できる理由は、宿主である初流乃が
闇の力で彼女に義骸を与えているからであり、桜の悪魔本人は
自らを生命界にマテリアライズすることはできない。


追記:桜の悪魔 黒1無1 ホラーの召喚 2/1
防御側のプレイヤーが黒2を支払わない限り、
桜の悪魔はブロックされない。(意味不明)

いや、追記は本編とは全く関係ないです。(/ー\)


※話が壊れないよう桜の悪魔は暫く花乱に預けておきます。

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投稿時間:02/11/23(Sat) 16:19
投稿者名:ひでぶ


葉が風に揺れる音のみだったその島も、黒い影が目立たないくらいに
収まった後は、数時間で虫達の鳴き声が蘇った。

夜。すっかり気温は下がっていて、ハインはいつものマントを羽織っている。シロツメクサは夜露を纏っており、彼の靴の表面を濡らした。
穴の西側に出たハインの目の前にある、植物だけで造られた東屋。
初流乃がここで『面白いものを見つけた』と、思念波で彼を呼んだのだが。

どうやらここは、あの薔薇に仕える少女達の『家』らしい。殆んど眠らない
彼女らは、専ら浴室しか利用しないようだが。

東屋の寝室に、初流乃はいた。そして寝台には、薔薇の者ではない誰かが
棘に拘束されて横たわっている。

「何者だ?」
ハインは横たわった少女……いや、少年を眺め、言った。
「ゼロツーの側近の、確か、マーテルという者ですね。いつだか
薔薇の者に連れ去られてここに来たみたいです」

初流乃が指先から睡魔退散の魔道を放つと、マーテルが薄っすらと
瞳を開いた。虚ろにどこかを眺めている眼に、緩んだ口元。
この少年もまた、何かしらの力の虜になってしまっているらしい。

―これは、魔道での洗脳よりも性質が悪いな。

直感的にどのような力によるものか悟ったハインは、そんな風に思った。
「それで?この者をどうする気だ」
初流乃が琥珀製の鍵のような物を取り出して、不可思議な力で宙に浮かべる。
『鍵』は、空中でフッと消え……マーテルを縛っていた棘が解かれた。

「できませんか?……エサにね」

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