×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

Another story of Kirby 第二部 [51]



-------------------------------------------------------------------------------

投稿時間:03/03/05(Wed) 21:34
投稿者名:yuletear

青き水の星へ、ノヴァは静かに進み続ける。

「はぁ……はっ……っ………くそっ!!」
ガッという音が廊下に響く。
壁に叩きつけた拳から微かに血が流れたが、
そんなことは気にも止めず
彼―時の番人はもう片方の手で首から下げた蒼い石を握り締めた。

――――リュウガ、あの青い星は何と言う?
『ウルルンスターのことか?』
『ウルルンスターというのか、あの星は。』
『アクロっていうでっけぇシャチがいるんだぜ。』
『ほぉ…シャチ。…ウルルンスター…青く美しい水の星……。』
『あの星の地表の大部分が水だ。水質、温度ともに水泳にも適している。』
『…ふふ、詳しいな。流石は闇の師。まーびぃも……も、喜ぶだろう。』

「ユート……お前、何故………」
「番人?大丈夫?」
声をかけられ、反射的に後ろを振り返る。
光と闇の管理人である少女が挨拶代わりに軽く手を振った。
「まーびぃか…。」
「苦しそうだけどさ、……なんかあった?」
躊躇いがちに問うまーびぃ。
今は余計なことで仲間へ不安を与えたくない。
番人は心の中で、軽率だったと自分を叱咤した。
「具合、悪いとか?」
「いや……大丈夫だ。」
近づいて思ったより顔色が良かったのだろう。
彼女は小さく笑って少し先にある自販機を指差した。
「なんか飲んでさ、ちょっと落ち着きなよ。
僕も何か力になれるかも知れないしさ。」
「すまない…。」
気を紛らわすにはいい手段かもしれないな…。
深呼吸をすると番人は彼女に続いた。


紫煙は部屋を舞う事無く、小さな機械に吸いこまれる。
最後に作り上げた輪が名残惜しげに
機械に吸いこまれていくのを見届けたターツは、
満足そうに火をもみ消すと、改めて少女に向き合った。
「…もうよろしいのですか?」
柔かな視線が彼を見つめた。
「あぁ。真面目な相談…には、俺も誠意で答えるように心がけてんだ。
…で?俺に話ってのは?」
リグレットは小型空気清浄機を止めると脇に置いた。
露になった両腕に巻かれた包帯には、相変わらず血が滲んでいた。
「…治り、遅過ぎるな。」
眉をひそめターツは言った。

自分よりも若く体力も(男女差を抜きとしても)ある筈の体が、
銃創とは言え完治しない。
回復呪に長けているものがいないわけでも
処置が出来ないわけでもない。
どんなに適切な処置をしても、彼女の傷は癒えなかった。
「皆さんの…沢山のご好意ありがたく思います。でも………」
彼女はその深い紫の瞳を真っ直ぐにターツに向けた。
翠色の瞳はその視線をやはり真っ直ぐに受けとめた。

「もう、私には時間が残されていないんです。」



ガコガコ…ン……。
断続した音を上げて、自販機が小さく震動する。
「はい!」
まーびぃは元気良く番人の目の前に缶を突き出した。
「ありがとう。」
感謝の言葉を述べつつ、番人は蓋を開けた。
プシッ……気泡音と共に香ばしい香りが鼻孔をくすぐる。
「やっぱ大人だねー。僕も飲めるけど…今日はこっち。」
まーびぃは少し距離を置いて番人の隣に腰掛けると
アップルサイダーの缶を開けた。
先ほどよりもやや大きめな気泡音。
たちこめる甘酸っぱい林檎の香り。
林檎は禁断の果実。
それを口にした者は神から楽園を追放され、苦難の道を歩んだと言う。
そんな話を耳にしたのは、何時の事だったか。
「…言ってすっきりするんだったら、何でも言ってよ。
僕達、仲間でしょ?」
暫しの沈黙の後、まーびぃは笑って言った。
「そうだな………じゃあ少し昔話にでも付き合ってもらおうか。」
番人は苦笑し、喉を湿らせる為にコーヒーを飲んだ。


「なん…だって……?」
口の中が渇いていく感覚を覚えながら、ターツは聞き返した。
「……番人さんの記憶は閉ざされています。
私はそれを解放する為の1つの手段でしかありません。」
「手段って……でもあいつは……そりゃ、たまに変だけど……」
ターツは俯き、膝を指で叩く。
「……煙草、どうぞ。」
リグレットはおもむろに空気清浄機を抱え、スイッチを入れた。
「あ…?じゃあ…お言葉に甘えて。」
ターツは煙草に火をつけるとなるべく小さく煙を吐いた。
「煙草…お吸いになられると落ち着くんですよね?ターツさんは。」
「あ…あぁ。…どうしてそれを?」

彼女は知っている。

自分の癖も、番人の名前も、闇の師が読んでいた本も、
元光の師が好んでいた物も、まーびぃの想いも………。

「……私もあの方の一部でしかありません。
躊躇い、嘆き、そんな迷いが私。たった1つの後悔が私。」
「君は……誰なんだ?俺に一体何を望んでいる?」
焦りと戸惑いが冷や汗となってターツの背を流れる。
クセのある、茶を含んだ鈍い金髪が小さく揺らいだ。
かつて一度は憧れた瞳。
同じ光は淡々と言葉を紡ぐ。

「見届けて下さい。出来るのならあの人を導いて下さい。
私が消えた後、全ての真実が明かされた後、
その果てにある結末を。そしてあの方の想いを。」
少女の言葉がやけ遠くから聞こえる気がした。

一緒に行けると思っていました。
『これで良かったのだと思っていた…』
行けたのかも知れません。
『私のしてきた事は、間違いでは無かったと。』
けれど……限界が近づいています。確実に。
『だが、その代価はどうだ……。』
現世に形を留めておく事、それはもう……
『どんなに悔やんでも、嘆いてもそれを取り戻す事はもう…』
「叶わぬ願い……」

「やめるんだ!」
急に大きな声を上げたターツに、
リグレットは驚いたような表情を見せる。
彼女の告白は、彼女自身の死を宣告されたのと同じ…否、そのもの。
かつての友の…嘆きが何故か重なる。
「怪我だって治る……。番人は…君の中にユートの面影を
見ているかも知れないが…嬢ちゃん自身にだってきっと…
だからそんな……そんな残酷なことは口にしないでくれ。」
「優しいんですね…ターツさんは……。」

悲しげに微笑んだ少女の笑みは。
ターツも良く知る者のものに似ていた。
彼がもっと若い頃から知っている。
そして、今も…。
彼は言葉を失った。

「まさか………。」
それを知ってか知らずしてか、リグレットはなおも続けた。
「私はもう誰かを…貴方を頼るしかない。本当に時間が無いんです。」
ふっと息を吐くと、リグレットは幾分 柔かに微笑んだ。

ターツ・スリーズ・ゲイルヴィルム。
彼の中にあった未完成のパズル。
そのパーツが今、揃った。


ターツが立ち去った後…。
一人その場に残ったリグレットは微笑む。
「これで良かった…ターツさんが理解ある方で本当に良かった。
…神も、今頃こうなるなんて思いもしなかったでしょうね…。
…それとも、今だから……?何にせよ…もうすぐ……もうすぐですよ。」
楽しげに笑い、LCHの尻尾を撫でる。
彼は嬉しそうにゆらゆらと揺れた。
彼も感じている。
彼自身の求める場所へ通じる道が、また一歩近づいたこと。
少女は立ち上がり、ターツが向かったであろう廊下の先へ歩みを進めた。

-------------------------------------------------------------------------------

投稿時間:03/03/06(Thu) 16:54
投稿者名:シルフィード


 「自分が責任者ね!?自分の部下がな、宇宙船でウチの家に突っ込んで来おったから、わての家壊れたやないか!
どうしてくれるんや!人を宿無しの身にしおって!」
 ヒャンスは通信ディスプレイにレクイエムの顔が出るなり、早口で一気にまくし立てた。
 「あの、ヒャンスさん、落ち着いてください。事情をもっと詳しく……」
 レクイエムは必死になだめようとする。が、
 「せやから言ってるやろ!?わての家に自分の部下の船が突っ込んできて、わての家と、システム・ドートンボリをぶっ壊したって!
 弁償せえや!ったく!」
 むしろテンションが上がっていくのみ。
 「……さっきから気になってたんだけど、システム・ドートンボリって何?」
 シードの問いに、ヒャンスは恐ろしい目つきで彼をにらんだが、
 「わてがプログラミングやハッキングやクラッキングのために組んだワーク・ステーションの名前や。
 メイン・コンピュータの「クラブ・ド・ラーク」、セカンド・コンピュータの「ふぐりん」サーバーの「クヰ・ダオーレ」……。
 まあ他にも色々あるねんけど、自分らが突っ込んできたとき、家もろとも瓦礫となりよったんや。
 残っとるのはこの「グリコマン」(ノートパソコン)と「露鉱御炉刺」(デジカメ)だけやで。どないしてくれるんや!」
 あきらかな、からみ口調である。
 「あー、とにかく、シード。彼女を探せとはとは言いましたが」
 「言っとったんか!?」
 ヒャンスの突っ込みはとりあえず無視して、
 「家に特攻せよとは言ってませんよ。どうしてこういう状況になったのか、あなたの口から説明してくれますか?」
 その低く威厳のある声に、シードは2、3歩引いて、……謝った。
 「ごめん!僕が座標を間違えたみたい!」
 「お前のせいかあああああああああああああああああっっっ!!」
 それまで、レクイエムの掌の上で大人しくしていたナイトメアが、思わず声をあげて突っ込んだ。
 でもって掌の上でぴょんぴょん飛びはねて、地団駄を踏んだ。
 目を丸くするヒャンス。
 「な、何やねん、このカメラは!?面妖な!ちゅうか、喋るんかい!?」
 「ふ。ヒャンスといったか?この私がただのカメラだと思ったか!?今は分け合ってこのような姿に封印されているが、
不肖このナイトメア、本来は世界最大級の魔力を持つ大魔術師にして超美男子なのだ!」
 「駄目ですよウソついちゃ」
 「黙っておれ!」
 いつの間に現れたのか、横からぼそっと余計なツッコミを入れた夢見る者に叫び返すキャメラ。
 一方ヒャンスは興味有り気な目でキャメラの事を見ていて。
 「面白そやな。どや、わてを情報担当係で雇ってくれへんか?
 給料っちゅー形でちびっとずつお金を払ってくれれば、数年後にはちゃんと賠償額を払いきれると思うんやけど。
 あ、もちろん住み込みやで?わて宿無しやし。
 それにわてはこう見えても空手やってるからオノレの身くらいなら守れんねん、迷惑はかからへんと思うで」
 レクイエムは腕組みをして考える。胃が痛くなるような思いだった。
まさか自分の宇宙船にクラッキングを仕掛けてきた奴に、
雇ってくれ、などといわれるとは。
 出来ればあまり雇いたくは無いが、彼女の家を壊したのはシード。そしてその上司は誰かといったらナイトメアと自分な訳で――。
 「分かりました。あなたを雇いましょう。ただし、あなたの行動次第では首にするということもありえますから、そのつもりで」
 「かまへんかまへん。おおきに。これからシブロクヨンキュー♪」
 「……は?」
 眉をひそめる一同。
 おそらく誰も知るまい。「シブロクヨンキュー」の意味が、「よろしく(4649)」だということを……。

 「で、僕たちが戻ったらどうするんだいナイトメア?」
 出発の準備をしながら、シードが聞いた。
 「とりあえず、お前がもどったら至急私の部屋へ来いと、レクイエムが言ってたが」
 「げ〜。やっぱ説教?って、そうじゃなくて、今後の方針だよ」
 「おお、そうかそうか。とりあえず、今後の方針は……」
 「方針は……」
 席を外していたレクイエムと夢見るものも戻ってきた。
 「方針はだな……」
 そこで一旦言葉を切り、

 「『充電期間に充てよう』だ!」

 次の瞬間。
 シードとヒャンスは不満そうな目でナイトメアをにらみ(えー?)、
 レクイエムも何か言いたそうな目でナイトメアを見やり、
 夢見る者はいつものように無表情のままだった。

 そしてラークは、今も治療用カプセルの中で寝ている。

 「……何だその目は!することが無いのだから仕方ないだろう!」
 どうやらキャメラフリート、今回はそんなに表立った行動はしなさそうだ。

-------------------------------------------------------------------------------

投稿時間:03/03/06(Thu) 22:02
投稿者名:St@Na


「・・・・・何ともいえませんね、あの奇妙さ」
あの防衛システムのスライドが映されている。
「昔の人間ってどんなセンスしてたのかしら?あたしには気持ち悪い塊にしか見えない」
「今は亡き古代人にセンスを問うのは無駄だぞ」
慧美がぼやいたとき、先ほど入ったデデデが突っ込んだ。
「メタナイトさん達がいないというただでさえ危険な状況にこの有様とは泣きっ面に蜂ですね・・・・・」
「うるさい!」
デデデが机を叩いた。
「俺は戦うことを決めた・・・・・なのにお前らは今更降参か!?」
「デデデさん・・・・・」「デデデ・・・・・」
「よく言ったな。お前の言葉でみんなやる気を取り戻したみたいだ。お前にしては上出来だ」
「『お前にしては』は余計だが、その誉め言葉を待っていたぜ、クー。ところで、どういう方針にする?」
「・・・・・・・考えてなかったな、お前」

-------------------------------------------------------------------------------

投稿時間:03/03/07(Fri) 20:19
投稿者名:ひでぶん


エストが持ってきた文書に、デデデ大王は目を通した。
ここ数日間のポップスターの動きが書かれているものだ。
「ほぼ進展無しか……」
「不幸中の幸いですね。防衛システムの存在が、恐らくゼロツーの
地上部隊を警戒させているのでしょう」
「えーっと」
やまもちが立ち上がる。文書によると、昨日の朝方、やまもちとピッチが
地上部隊の偵察に行ってきたらしい。
「ヨーグルトヤードっていったっけ?後続の部隊はどれもみんな
そこで待機しているみたいです」
「数は、全部で12隊」
と、ピッチ。
「グレープガーデンに上ることができる3つの山の5合目に、それぞれ
4隊が布陣してます。隊1つあたりの敵数は……約120です。
種族編成も合計の敵の数も、前回より多いですよ」

「防衛システムは奴等にも邪魔な存在だ。だが、あれによって
俺達も何時また被害を受けるかわからん……かと言って、防衛システムを
撤去した場合、敵の大群が再びグレープガーデンを襲う。
さて、どうする……?」
クーの説明に、デデデ大王は渋い顔をして、黙り込んだ。
……が。暫くの内、おもむろにこう尋ねる。
「そう言えば、あれが『防衛システム』だって、何時分かったんだ?」
「あぁ、それはな……」
言うが早いか、海星が立ち上がった。彼女は、未だスライドに映っている
防衛システムの姿を見ながらこう言った。
「私です。あの子が……防衛システム自身が、そう叫んでいるのを
聞きました。『急いでグレープガーデンからいなくなって』とも」
「……?」
防衛システムそれそのものに深手を負わされたデデデ大王には、
すんなりと理解できる話ではなかった。何しろあの場にいきなり
現れたそれは、問答無用ですごい勢いの攻撃を仕掛けてきたのだから。
それを察して、慧美が付け加えた。
「海星はある種の信号や波長を読んだり、見たりすることができる
能力の持ち主なの。私も、その力で助けてもらったんだ」
「……それがどうかしたのか?」
頷いて「なるほどな……」と感心しているデデデ大王に、怪訝そうに、
クーが尋ねる。
「ああ、すまない。つまり海星は、あれと会話ができるのか?」
「えぇ、きっとできると思います」



翌日。
中心地には、今日も民間人は訪れてはいなかった。
防衛システムは微動だにすらしていないが、街の者には
その存在自体が恐怖の象徴になっているようだ。
ディスプレイを開きっ放しで俯いている彼の姿は、何も知らない
旅の者が訪れたとしたら、ただの街の中心地に立つ像にしか
見えないのだろうが。

そこから少々離れた場所に、戦士達が集まっている。
彼らの体勢は、立っていたり座っていたり、ばらつきがあったが、
全員、防衛システムのほうへと近づいていく数人の姿を見据えていた。

「あれを味方に引き込むなんて、よく思いついたな」
クーが隣りにいるデデデ大王に、顔の向きを変えずにそう言う。
「いや……決心した、か」
同じ場所を眺めたまま、デデデ大王は無言だったが、やがて口を開けた。
「……命を落としたあいつらのことを思えば、余計にこれが得策だと
思っただけだ。別に、決心とか大それたことじゃない」

その場に、少々強い突風が吹いた。
羽毛を身に纏っているクーは、その風に流されないよう、
翼をはためかせる。

「お前、ちょっと変わったな」
突風が収まってから、クーは、今度はデデデ大王の顔を見てそう言った。
「ほんの少しだが、前より王様らしくなったぜ」
「……うるさい」
デデデ大王の悪態に少し笑ってから、クーの眼は、もう一度、
防衛システムに近づいていく海星達の姿を見据え直した。


「この辺りまでくれば、大丈夫」
そこで足を止めた海星は、護衛として一緒についてきた
やまもちと慧美に向かって頷いた。2人も頷き、彼女の後に下がって、
俯いた防衛システムの光る眼を見つめる。

海星は息をゆっくり吐いて、眼を閉じた。
……すると、彼女の全身が淡い光に包まれて、額の辺りから、
これまた淡い光による細い糸が伸びる。
そして、光の糸は、防衛システムの胸部に繋がり、防衛システムもまた、
淡い光を纏い始めた。

「私の時もあんな感じだったの?」
小さな声で、慧美はやまもちに尋ねる。
「いや……君の場合は、海星さんが一方的に何かを呟いていた
感じだったよ。……やっぱり機械と人じゃ、違うんじゃないかな」

光の糸を伝い、光の珠が防衛システムの中に入っていく。



2種類の記号の海の中を、光の珠となった海星は泳いでいた。
手当たり次第に渡っているのではない。彼女とはまた別の青い光が、
彼女を案内してくれている。
その後についていき、大きな『0』の輪を潜ると、青い光は、
1人の少年の姿をとった。

「……こんにちは」
こちらに背を見せて下を向いているその少年に、海星は話し掛けた。
少年は言葉を返さず、暫く両者の沈黙が続く。
ここでの時間がデデデ大王達のいる場所の時間にどれだけ
反映されるかは分からないが、この場にいる海星の
体内時計からして十数分。彼女は何も言わずに待ち続けた。

そうして。
やはりこちらには顔を向けなかったが、少年は溜め息をついた後、
ようやく口を開けた。
「……君も、早く自分の体に帰って、あそこから離れた方がいいよ。
僕は、『人殺し』なんだから」

彼の後姿を見つめて、海星は言う。
「あなたは、私達と一緒に戦ってくれた人達を、あんな酷いめにあわせた。
故意だとしたら、私もあなたのこと、許せない。でも……」
尚も振り向かない少年に向かって、海星は続ける。
「今、あなた、私に『離れた方がいい』って言ったよね?
それにあの時だって、あそこにいた人の身を案じた。
自分が何をしたか分かっていて、そんな風に悲しんでいて、
でも、あなた自身はグレープガーデンからいなくなろうとしない。
……いなくなることができない」
海星は、一歩前に出た。
「あれは、あなたの意志でやったことではないんじゃないの?」

後姿の少年は、海星の位置からも分かるくらいに震え出し、
そして、ゆっくりと振り向いた。
「できなかったんだ……」
ようやく素顔を見せた少年は、いかにも人間のように、瞳から
大粒の涙をこぼしている。
「止めようと思っても機械の体が言う事を聞かないで……
逃げようとする人にまで攻撃をして……どうしようどうしようって
思っているうちに……もう、みんな……」
大声で泣く少年の肩を、海星は優しく抱きしめた。
「この体から出る事、別の媒体に移る事、できるよね?
私の仲間が、きっとあなたを助けてくれるから……」

人工の意識の中に入り込む時、その意識の主の姿は、対面する者の
強い想いに反映されるという。防衛システムの意識体は今、彼女の兄の、
幼い頃の姿を象っていた。



海星が現実の世界に戻ってきたのは、意識の海に入り込んでから
数時間経った後のことだった。彼女は防衛システムの中から出てきた
四角のプレートを、デデデ大王に手渡す。
「結局、あのまま説得することは無理だったわけか……」
「ごめんなさい。でも、この子に体を造ってあげれば、きっと
心強い力になってくれます」
「そうだな。……ま、抜け殻とは言え、元はまだこの場に
存在しているわけだし。暫くは時間稼ぎになるだろう」

「デデデさん、海星さん!」
その場に、エストが走ってきた。きらした息を整えてから、
彼女は2人にこう告げた。
「伝令です。……宇宙に行ったメンバーから通信が入り、
ウルルンスターからこちらに向けて、明日にでも出発するみたいです」
目を丸くするデデデ大王。宇宙に行ったパーティは、ポップスター圏を
包囲しているアトランティス軍を警戒して、目的を達成するにしろ
しないにしろ、暫くは帰還しないはずだったからだ。
「何だって……どうしてまた?」
「何でも時の番人さんの話だと、『カービィが試したいことがあるらしい』
……だとか。詳しく説明を聞く前に接続が切れてしまったんですが……」
デデデ大王の隣りにいたクーが腕を組む。
「一体何だってんだ……とりあえず、俺達がいる場所は伝えたのか?」
エストはこくりと頷く。
「受け入れ態勢については場所さえ教えてくれれば大丈夫だそうです。
だから、宇宙に行った人達は、問題無いみたいなんですが……」
暗い表情で、エストは告げる。

「シルト君達……ランナイさんを救出にいったメンバーの中で、2人……
メタナイトさんと竜轡さんが負傷して……酷い状況だそうです」

-------------------------------------------------------------------------------

投稿時間:03/03/07(Fri) 23:31
投稿者名:ソルビィ


―オレンジオーシャン
「今日も膠着状態か。」
オレンジオーシャン、アトランティス軍ポップスター駐留基地。
豪勢な司令室の壁によりかかっていたヘブンが呟く。
「うるさい!貴様は黙っておれ!!」
いつになく苛立ったアンフィッシャーが彼を睨みつけた。
だが、ヘブンはふんと鼻で笑う。
「貴様が陛下よりポップスター侵攻の命を受けてから既に5日経過だ。
 かつては完全にヘこんだと思われていた星の戦士の片割れはだいぶその勢力を取り戻し…」
そこで彼は区切り、立ちあがる。
「…お前の手勢がやっとのことで奴等の居場所を捕まえ、一斉に攻撃にかかったが見事に撃退してみせた、と。」
「あの失態は空中都市の防衛システムによるものだ!断じてやつらの実力ではない!現に…」
「強がりはよせ。あれが無くても貴様の軍勢は敗退していた。まぁ、お前の腕などたかが知れてるがな。」
「言わせておけば…ならば貴様は何故前線へ出向かなかった!」
アンフィッシャーの口調が、さらに荒くなっていく。
「俺はあんたの部下じゃない。あくまで陛下の部下だ。」
「ぬぅ……。」

わずかに沈黙が続いた後、ヘブンが薄ら笑いを浮かべて言った。
「…あんたの首、そろそろ危ないかもな。」
その一言で、アンフィッシャーの怒りは頂点に達した。
「貴様ぁっ!!」
洗練された手つきで腰から銃を抜き、ヘブンめがけて発砲する。

だが、それは彼に届く前に塵となって消える。
「…あんたには所詮無理なんだよ。そろそろその席から降りてくれないか?」
ヘブンのハルバードは、アンフィッシャーの喉元にあてられていた。
「貴様…いくら陛下直属の部下とはいえ処分は免れんぞ…。」
「だが陛下は俺ですらただの道具扱いだ。貴様など所詮捨て駒にすぎない。お互い様だ。」
「おのれぇ…。」
怒気のこもった唸り声と共に、アンフィッシャーは歯軋りする。

「そこまで。」

「…02様!!?」
部屋のど真ん中には、いかにも時代劇風味の「悪代官」といった格好をした男が立っていた。
ヘブンはフッと笑ってまた壁に寄りかかった。
驚いたのはアンフィッシャーだった。すぐにその場に跪く。
「ぜぜぜぜ…02様っ!!ファイナルスターへ帰られたのでは…?」
男は、ゆっくりと玉座に座る。そして、ふところからキセルを取り出し、火をつける。

「…そんなことはどうでもよい。」
男は腰の刀を抜く。そして、その切先をアンフィッシャーにむけた。
「ずいぶんと手間を取ってるようだな。」
「お・・・お許しをっ!!ま…まだ…。」
「……。」
だが、男は険しい表情でアンフィッシャーを睨む。
「…もうよい。」
「は…?」
「ヨーグルトヤードに布陣させている部隊を全てここ、オレンジオーシャンに戻すのだ。
 そして、わしが連れてきた軍勢を加え、兵力を増強せよ。」
「ぎょ…御意。」

「…アンフィッシャーよ。今まで御苦労であった。」
男は、煙を吐きながらゆっくりと立ちあがる。
「…これより、ポップスター侵攻は、このわしが指揮する。」






「この、『零弐』がな……。」

-------------------------------------------------------------------------------

投稿時間:03/03/09(Sun) 18:17
投稿者名:ソルビィ


・捕捉…じゃなくて補足。
零弐は第一部に出てきた悪代官02のことです。
女帝「ゼロツー」が魔力に秀でてるとすれば、悪代官「零弐」は力です。
その剛剣で押して押して押しまくるタイプです。

もっとも、皆さん御存知のように姑息な人なので、あまり進んで前線には出ることはないでしょうね。
どんなキャラなのか知らないという方は、第一部過去ログ14を参照です。イケてます。(ぇ
      
-------------------------------------------------------------------------------



前へ リストへ  次へ