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Another story of Kirby 第二部 [55]



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投稿時間:03/06/05(Thu) 04:25
投稿者名:ひでぶ


桜の悪魔の背中から現れたものと、彼女を包むもの。
完全に狂気の化身である八つ首の大蛇と化した桜の悪魔が、
その蛇達をメタナイト達に向かって一斉に襲い掛からせた。

「ぐあ……!」
「うわっ!」
「きゃぁ!」
「うぅ……!」

蛇はそれぞれ一人一人に巻きつき、彼らを締め上げようとする。
「みんな、こういう時はステキな顔するのね……」
桜の悪魔がその光景を見て、クスクスと笑った。

「く……くそぉ」
声を叫びあげることもままならないくらいに締め付けられ、シルトは、
そう小さく呻くのが精一杯だった。あばらが、ぎしぎしと音をたてた。
心理的な圧力に、物理的な圧力。狂気の波動で抵抗できない身体に
なってしまったことで、シルトのその流石の怪力もこの状況では全く
役に立たない。だが、このままでは全身の骨が粉々に砕けてしまう!

ギャラクシアを持ったメタナイトは、完全に締め上げられることを
かろうじて回避することができた。しかし、少しでも手を緩めれば、
たちまち捩じ切られてしまうだろう。やむなく捨てた複製の虹の剣が、
真下の地に刺さる。そうしてメタナイトは、両手でギャラクシアの
柄を握った。

花乱は、その思念体の身体のおかげで、狂気の蛇の巻きつきを受けないが、
濃厚な狂気の影響が、やはり彼女の身動きを封じている。
必死の想いで、蒼白の顔を竜轡の方に向け、何かを叫んだ。
どこかの国、どこかの星の言葉か。シルトもメタナイトも、花乱が
何らかの言葉を叫んだのは、苦痛と重圧の中でも、何故かはっきりと
耳にすることができた。
……だが、姉にだけは、その言葉は届かなかった。

自分より巨大で長い胴を持つ蛇に締め上げられ、竜轡は、意識が
遠のき始めていることに気づいた。

―ああ、あたし、もうダメなのかな?

目の前が真っ白になっていくのをしっかりと理解しながら、彼女は
心の中でそう呟いた。だが、白一色の風景を眺めてみて、何故か、
安心した気分になれたようだった。……それもいいかもしれない。
何もかも、面倒くさくなっちゃった気分。あたし、ここまででいいや。
……もう、休みたい。

「……〜〜っ!」
後で、誰かが、何かを叫んだ。うるさいなぁ、誰?と、竜轡。
振り返ると、決して忘れないであろう、あの少女の姿が。

悲しそうに、必死で何かを伝えたがっている少女の言葉は、ちっとも
うまく聞き取れなかった。どこかで聞いた事のある気がするものだったが、
あいにく、竜轡はその言葉の意味を忘れていた。
だから、竜轡には、少女の言葉が奇声にしか聞こえない。
うるさくてうるさくて、仕方がない。

憎らしくなってきた。

「うるさいわねぇ、あんたなんか消えてしまえばいいのよ!!」
白い風景の中で、竜轡は、光の波動を放った。
少女は波動に飲み込まれ、塵になり、消し飛ぶ。

何もなくなった目の前にせいせいして、竜轡はそこに寝転んだ。
そして、思い出した。
「あー……そういえば、そうだったかな」

―あたし、まだ休めないや。



轟音。
音と共に狂気の蛇は見るも無残に吹き飛ばされ、青灰色の凄まじい光が
辺りを覆った。シルトも、メタナイトも、桜の悪魔でさえも、
信じられない光の力に圧倒され、結局その場から動けないままでいた。
「何だ、何だよ!?」
シルトが驚いて、声がしっかりだせるようになったのに気付く前に叫んだ。
「光の中心にいるのは……竜轡か!?」

花乱は光に数歩近づいてから、力が抜けたかのように、膝を地につかせる。
「ダメだったのね……姉様、ごめんなさい……」


「一体、何?……え……ぁぁ……わぁあああああああああ!?」
闇のものである桜の悪魔の義骸が、ロウの熱に耐え切れなくなり、
崩壊を始めた。義骸といえど、身体の一部一部が削ぎ飛んでいくのに、
驚かずにはいられなかった。

「どうしよう、どうしよう!?……助け……助けて」

下半身を丸ごとなくしてしまった桜の悪魔を、不思議な壁が包み込む。
その壁に守られて、崩壊はそこで収まった。
銀髪の少年が、彼女の身を支える。
「ぁ……ああ……」
少年の顔を見て、桜の悪魔は義骸の顔をぐしゃぐしゃにして喜んだ。
そうして2人は、その場からフッと消えた。


「何が起こっているんだ……!」
真っ青に染まっている光の波動の中、メタナイトが大声で花乱に問うた。
地を睨む花乱は、小さな声で呟く。
「どうすることもできない、もう、どうすることも……」

放出されていた光は、やがて中心に吸い込まれるようにして、
嘘のようにぴたりと収まった。

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投稿時間:03/06/05(Thu) 20:30
投稿者名:yuletear


周囲の光が完全に収まるまでの暫しの間、
その場を静寂だけが支配していた。

やがて、竜轡は小さく身じろぎすると
ふわりとその場に浮き上がる。
「あーあ………」
メタナイト、シルト、花乱をゆっくり見まわし、
ぼんやりと首を振る。

「大丈夫か、竜轡。今のは……?」
メタナイトの問いにも面倒くさそうに尻尾を揺らすと
竜轡は花乱を見据えた。
視線に気づいた花乱が顔を上げる。
「………姉様……。」

交わされる視線、沈黙。
先に破ったのは竜轡だった。


「鬱陶しいなぁ…。」
離れた所でシルトが目を丸くした。
「姉様…私は…」
「うるさいってば!」
叫びと共に竜轡から放たれた光が、花乱のすぐ横を走った。
「生命の司祭として、あんたを消すわ。あたし。」
メタナイトがはっとしたように竜轡と花乱を見る。
「だってあんたがいたら、あたしはいつまでも半分なんだもの。」
「違うわ姉様…それはっ……」

違わない。ちっとも違わない。
腹立たしくて、頭も胸もちりちり痛む。
でも…それももう終わるんだ。
竜轡は薄く笑みを浮かべると再び光を放ち始めた。
花乱は小さくうなだれた後、竜轡を見つめる。
「もう……私にはどうすることもできない…。姉様……。」
そして、小さく呟いた。
「………。」
花乱の言葉など聞こえてはいないのか、
竜轡の苛立ちは高まるばかり。
「早く消えてよ!」
動じない花乱に焦りを覚え、半ば自棄のように光を放ち続ける。
「ごめんなさい姉様……。」


何度も、何度も、光を放つ竜轡。
悲しげな表情を浮かべる花乱。
「待て竜轡っ!」
暫しその光景を呆然と見ていたメタナイトが
竜轡を後ろから羽交い締めにした。
花乱に向いていた一筋の光がその衝撃で空に放たれた。
「離してよっ!邪魔しないで!!」
彼女は大きく身をよじりもがく。
「彼女には戦う意思が無いんだぞ?!」

「関係無いわ!!」
大きな声を上げて、竜轡はメタナイトを振りほどいた。
思ったよりも強い力で弾かれ、メタナイトは膝をつく。
「邪魔すんの?」
竜轡は苛立った声で問う。
「……!?姉様、やめてっ…!」
花乱が悲痛な声をあげた。


「…絶対神の名において、邪魔をするものは何人であれ排除するわ。」
花乱とメタナイトを交互に見つめ、竜轡は一際強い光を掲げた。

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投稿時間:03/06/05(Thu) 21:31
投稿者名:St@Na


花乱を苦痛のないように一撃で消そうとしているのか、力を収束しているのだろう。
竜轡の掲げた光の強さは、最初の2倍になっていた。
「く・・・・・これが『生命を司る者』の力か!?このエネルギー量は、とても強力だぞ!!」
そう言っている間にも詠唱のような謎の言語をつぶやきながらどんどん力を収束していく。
シルトが叫ぶ。
「竜轡、本当にいいのかよ!!こいつ・・・・花乱は、お前の妹だろ!」
しかし、シルトの声は竜轡の耳に届いてはいなかった。
「これが、使命を果たすという事よ!消えて、花乱!」
「止めて下さい!!」
一瞬だった。いつの間にか飛び出したさびかびが竜轡にしがみつき、彼女の集中が途切れたのだ。
“メタナイトよりも遙かに重い彼女を振り払うのは困難である”そう思った竜轡は、何を思ったかさびかびにエネルギー弾を放つ。
バシュッ!「きゃっ!!」エネルギー弾にさびかびが弾き飛ばされた。
「これでも手加減したつもりよ。これ以上余計な事はしたくないから、早くそこをどいて!!」
「くっ・・・・・・」
再び、竜轡が光を掲げる。
しかし、今度はそれをすぐに放った。

光が弾け、何も見えなくなった。

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投稿時間:03/06/06(Fri) 11:00
投稿者名:ひでぶ


ニヤリとした笑みを、竜轡は光が収まるのと同時に止めざるをえなかった。
花乱の前にメタナイトが立ちはだかり、光の弾丸を斬り裂いたのだ。
苛立ちは更に増長され、竜轡は牙を食いしばった。

「あぁ、もう、邪魔……邪魔!!」
竜轡は光球の大きさを小さくすることで、今度は数多くそれを作り出し、
メタナイトめがけて放つ。それを全て地上で回避して、メタナイトは
空いているほうの手で、再び地に刺さっていた複製虹の剣の柄を掴み、
竜轡に向かって跳びかかった。両の剣は、竜轡の目の前で、ロウの光にて
象られたビームシールドに受け止められる。

「攻撃してきた……あんた、あたしの味方でしょ!? 何で邪魔するの!」
「この程度、貴殿なら造作ないはずだ」
おもむろに言って、すぐさま次の斬撃を繰り出すメタナイト。間合を極端に
詰めれば、魔法やロウエネルギーを武器としている飛び道具使いの竜轡が
不利になると考えてのことだった。

「竜轡殿。貴殿は今、正気ではない。……少なくとも戦意のない者を手に
かけるなどということは、いつもの貴殿ではできぬことだ。何者かに
操られているのか?それとも、本当に気が触れたのだろうか?……どのみち、
竜轡殿。これ以上暴れるならば、貴殿には暫く気絶してもらうほかない」
「ふふ、あはははは! あたしは正気だ!!」
竜轡の全身から放たれた光の波動を、メタナイトが十字留めで受ける。
だが、空中では威力を殺すことができず、地上に押し戻されてしまった。
そこに間髪入れず、多数の光の弾丸を撃ち込む竜轡。爆発の後、その場に
土煙が巻き上がる。

「く……」
ヒビの入った仮面をおさえ、ポップスタータイプのからだでの立ち膝をする
メタナイトが、土煙の中から姿を現した。しぶといなぁ。竜轡の苛立ちは
ますます募る。

「おい、どうした!」
「何かあったんだスか!?」
船内への入り口に出てきたλとメイスナイトの声。次の見張りの番である
2人が、不審に思ってやってきたのだ。竜轡は黙ってそれを眺めていたが、
突然わなわなと震えだす。

「邪魔なのよ! ホント邪魔ばっかり! じゃまじゃまじゃまじゃま!!」
竜轡は叫び、その竜面で十字を刻む。

瞬間、その場が凍りつくかのように凝固した。風も吹かない。草木も揺れず、
鈴虫の音色も聞こえなくなった。嘘のように、静寂。
その場にいる者も身体を動かすことができずにいる。術者が思念の介入を
許していないため、動かそうと思うこともできない。

術の成功を確信して、凝固した時の中、竜轡は大笑いした。が。

「クイックタイム……!? どうして時術なんか!」
そう誰かが叫ぶのを聞いて、ぎょっとする。シルトが、平気に動いている。
「そうか……あんた、時人の血も混じってるんだっけ。まずったなぁ」
苦笑して、竜轡は続ける。
「この術が一番便利よね。力を全て使い切るわけでも、たった1人の時間しか
止められないわけでもないし。『時の制約』に基づいた行動を起こすまでは、
全ての時が止まったまま。……まあ、あたしの力不足もあって、あんたまで
動けるようになっちゃったけどさ」

「こんなことして、どうする気なの?」
問いをぶつけても、「さて、どうするでしょう?」と言いたげに、
竜轡は薄っすらと笑ったまま。
「……花乱ってヒトを、どうにかする気? おかしいよ、そんなの。
間違ってる……!」

シルトの言葉に、再び大きく笑い声をあげる竜轡。
「話の展開が読めない奴だなぁ。確かに花乱には消えてもらわないと、
あたしはとても困る。でもね、あたしはあの子を消すためなら、何をしても
いいのよ。時術や空術、生命や精神……何でも使って大丈夫。あの子1人を
消すのなんて、とても簡単なことだわ。でも……」

竜轡はその種族特有の両腕を広げて、印を刻み始めた。
「あんた達は今、その邪魔をしてるのよ、邪魔を。分かる? 邪魔なの!
邪魔だし、あんた達に先に消えてもらうのよ。だからね……こうするのよ!」

印が、驚くほど巨大に膨らみあがる。
「秩序が象り絶対神の名の下……我、追憶の刻より築かれし、大いなる
魔呪の言の葉を告げよう。其の言の葉、万物に知れ渡りし精霊の怒り」

―神術!?

時の番人がテラ・フュージネスを放つ際にも唱える、最上級クラス『大霊』の
詠唱。刻む印も、紛い物ではない。シルトはそれを理解して青ざめた。

「万物の生命を産み出したるは、母なる母が胎内にありき揺り篭。
其に抱擁を受けし汝こそ、其に捧ぐ壱なる贄になるであろう。
……天命と知り、此を受け入れよ」

「くそぉっ!」
テラ・ソルトを竜轡に向けて放つシルト。しかしそれもまた、彼女が時術を
使うより前もって張っていた属性波動の盾により弾かれてしまった。
攻撃が回避されたことに、「しまった!」と叫んだところで、シルトは
他の者と同じように硬直した。1つの行動を終えたことで、シルトの時も
止まってしまったのだ。

「残念だったね、これでおしまいだよ」
込み上げる笑いをこらえながら、竜轡は大魔呪の名を叫んだ。

<ミッドガル・ブレイカー!!>

『大霊』の神術の発動と同時に、シルト達にかかっていた時術の効果が
解ける。真っ先にシルトが「みんな、逃げるんだ!」と叫んだが、彼らの
足元には、もはや極端なまでに収束された大地の持つ生命波動が姿を
見せていた。……一閃。

竜轡が浮いている、その下の足場いくばくかを残し、地が裂け、そこから
一斉に灰色の光が噴出す。まるで間欠泉が沸騰する湯と更に熱い水蒸気を
飛び出させるかの如く、大地はそれ自身が秘めるエネルギーを放出した。

「あはは……あははあはあはあは!!」
直撃を与えれば、間違いなく消滅させるだけの力を持つ大魔呪。
竜轡は今度こそ、勝利を手にしたと確信した。
「は?」
そこに立つ、黒きポップスタータイプの姿を見るまでは。

仮面は砕け、剥がれ落ち、その素顔をあらわにしているが……
メタナイトが、確かにそこに立っている!
「……うそ?」
彼の背後にはハルベルトと、術の対象とするつもりだった者全てが存在した。
「全員生きて帰還させる……もちろん竜轡殿、貴殿もな」

勢いよく振り下ろしたギャラクシアは疾風を呼び、それは切り裂く風となり、
やがて、荒れ狂う竜巻へと姿を変える。
信じられない。呆然としたまま、竜轡はその竜巻に飲み込まれた。



「あれ? いつ帰ってきたの?」
スラリンが突拍子もなく、そう言った。
ルックグリーンの件があって以来、姿を見せていなかった桜の悪魔が、
いつの間にか、初流乃の背に憑いているからである。
桜の悪魔はクスクスと笑い、スラリンを眺めた。

スラリンは怪訝そうに桜の悪魔と視線を合わせて、それから初流乃に
こう問いかけた。
「その様子だと、仲直りした?」
「……はい?」
初流乃はきょとんとして、「仲直りですか?」と聞き返す。
「え、お? 痴話ゲンカでなかったの? 初流乃がレモンちゃんに
あんなことするから」
「あんなこと……って、何でしょう?」
「いや、だからさ……ふう。もぉ、ホントに初流乃って……」

桜の悪魔はなおもクスクスと笑い、全くその表情を崩さない。
よほど良いことでもあったのだろうか。と、スラリンは溜め息をついた。
「鈍感……でもないのか。初流乃は初流乃のコードーリネンで動いてるし。
……ボク、ぜぼしんさん達と話してくる」
初流乃の頭に疑問符を浮かばせたままにして、スラリンはその場を後にした。

「多少気になりますが、まあいいでしょう……ん?」
いつの間にか初流乃の力を拝借し、桜の悪魔は、新しい義骸を取り出して
それに憑いていた。初流乃に背を向けたまま、ぼんやりと呟く。
「あの子のこと、キライじゃなかった……」

銀髪の少年は少しの間だけ黙り、それから微笑んで、ツクリモノの身体に
入った思念の少女に、こう告げた。
「彼女は……花乱さんは。恐らくここに来るだろう。姉のことを想ってね。
その時こそ、夜深。お前が望む行動をとればいい」
「……そうか。そだよね? ふふふ、あはは……」

あはははははは……

狂ったように……違う。彼女は、狂っているのだ。狂気の笑い声を響かせて、
急に抱きついてきた桜の悪魔の腰を寄せた、初流乃そのひともまた、その
冷ややかな笑みを保っていた。

―お前が望む行動をとればいい……それは、僕も望む行動なのだから。

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投稿時間:03/06/07(Sat) 01:53
投稿者名:yuletear


「あぁ………」
「く……っ」
呻き声を上げ、竜轡が地に落ちるのと
メタナイトがガクリと膝をつくのはほぼ同時だった。
抉られた大地に乾いた風が吹く。
「助かった………?」
発せられた衝撃の余波が薄れた頃、誰ともなく呟く声が響いた。


動かない竜轡にシルトが近付く。
外傷はやや酷いものの、醜く刻まれていた眉間の皺は見えない。
憑き物が落ちたかのように安らかな表情をしている。
「気ぃ失ってる。多分、もう大丈夫だと思う。」
「そうか……」
λとメイスナイトに支えられたメタナイトが小さく頷いた。
だが、その顔が痛みに歪むのを仮面が無い今、隠す術は無い。
「ともかく……皆、無事のようだな……。
しかし、一刻も早く陛下達と連絡を取らねば……っ。」
歩き出そうとしたメタナイトの体がぐらりと揺れた。
「メタナイト様っ!?」
「…オイラ達でどうにかするから。メタナイトはちゃんと休んでよ。」
竜轡を担いだシルトが目配せする。
λとメイスナイトは頷いて、メタナイトをハルベルトの中に誘導する。
シルトは花乱を振りかえった。
蒼白になった顔。
唇は微かに震えている。
着物の端をぎゅっと握って、何かを耐えているようにも見えたが
しっかりと竜轡を見つめていた。
「来なよ。」
一言だけ告げて、シルトはハルベルトへ入っていった。


被害は思いの他 甚大で、
ここをダークマター達に襲われてはひとたまりもない。
メタナイトと竜轡を救護室に運ぶとシルトは通信の復旧作業に向かった。
花乱は竜轡の顔を見つめたまま、口をつぐんでいる。
中に残っていたジャベリンナイト達は事情を聞くと、
慌てながらも迅速に治療を始めた。

「くそっ!もうちょっとなのに!」
シルトはぎゅっと握りこぶしを作る。
システム自体の復旧は完了したものの、
回線が不安定でなかなか繋がらない。
桜の悪魔の襲撃からかなりの時間が経ってしまっている。
既に日は高い。
時間が無いのに。

焦る気持を抑えながら、あれこれと試行錯誤を繰り返していると
プシュン…という音と共に、誰かが入って来た。
「…シルト様。」
さびかびが遠慮がちにシルトの隣に腰を下ろす。
「メタナイトさんと竜轡さんは、一応は大丈夫です。
でも、今…私がここに来た時みたいなものがやってきたら…。」
さびかびは俯いた。すん…と小さく鼻をならす。
「…直りそうですか?」
小さな声で問われ、シルトは簡単に説明する。
懸命に聞いていたさびかびだったが、
不意に口を開いた。

「じゃあ、その、相手の端末とここの端末を繋ぐ力が強ければ
良いってことですか?」
「え…うん。まあそうなんだけどさ。
でも、通信できる機械はここにあるだけだし…」
彼女は少し天井を見上げ、頷いた。
「私、お役に立てるかも知れません。」


「正気!?電気通ったら苦しいんだぞ!?」
「でも、やってみない手は無いと思うんです。
私、ここでいう電話みたいなものだって言いましたよね。
今は鉄だから、ちゃんと電気も流れますし。」
「でも……」
「シルト様!」
彼女は反論を許さない目でシルトを見る。
「………わかったよ。」


「……うん。うん、そうなんだ。ランナイ君は大丈夫。
だけど、竜轡とメタナイトが怪我しててさ。結構ヤバイんだ。」
さびかびはぼんやりとシルトの声を聞いていた。
復帰した回線は、彼女を介さなくても無事安定を始めた。
確かに少し苦しかったけれど……嬉しかった。
「…頼むよ。え?わかった。うん…それじゃあまた。」
通信を切り、シルトが溜息をつく。
「連絡取れたよ。ありがとな、さびかび。」
「嬉しいです。じゃあ、私 メタナイトさん達に教えてきますね。」
まだまだ、頑張らなくちゃ。
さびかびは部屋を後にすると、救護室の扉を開けた。

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※編集者注
まことに申し訳ございませんが、
ここより先10レス分ログが消失しています。

ログ[56]の冒頭は10レス飛ばした先、ひでぶさんの書き込みからになります。

消失分のログをお持ちの方がいらっしゃいましたら、
トップページに記載されているメールアドレスまで、ご連絡ください。

なお、消失ログ内の展開についてですが、
大きく状態が変わったチームはないようですので、
現時点においては、各々のご想像にお任せしたく思います。ご了承ください。


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