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遥かなる旅の果てに [37]



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投稿時間:05/08/17(Wed) 17:46
投稿者名:bomb


ここは火口付近。
そこにはレッドとイレイサー達が佇んでいた。
「ねえ、あの中にテレポート出来ない?」
上空を飛ぶ一隻の船を見ながらレッドが聞く。
「やってみます!」
そうラウムが言った瞬間、一同はそこから消えていた。






一方、ここはユエンの宇宙船の中。

「…?消えた…」
窓際でイレイサーの方を見下ろしていたユエンだったが、突如としてイレイサーが消え、怪訝な表情をする。

「変やな?……!?」
背後に気配を感じ取り、すかさず刀を抜いて後ろに向き直るユエン。
そこにはイレイサーとレッド達がワープして出現したところだった。

「なんや、お前らは!」
ユエンはユカリを庇うように移動し、刀をイレイサー達の方に突き出す。
イレイサー達はバラバラに宇宙船の中を見回していたが、声を掛けられると全員が一斉にユエンの方に向き直った。

「ユカリさん!」
レッドがユエンの背後のユカリに気付く。

「ユカリ様!こんな所にいらっしゃったのですか!
イリス様が大変なんです!どこからか現れた怪しげな男に精神を奪われ、ブルー様と無理矢理戦わされています。
早くしないと双方が危険です!その怪しげな男は、この呪いはユカリ様にしか解けないと言っていました。さあ、早く!」
早口でそう言うとユカリの方に近付こうとするイレイサー。

「待て!お前達は何者や!」
ユエンは一歩踏み出して声を上げる。

「お前こそ何者だ!ユカリ様に何をしている!」
イレイサーは一斉に鎌をユエンに対して構える。レッドも炎の剣を取り出して構えた。

「チィッ!やるしかなさそうやな!」
「待って!彼らは私の友達なの!」
舌打ちしながら戦闘に入ろうとするユエンを、ユカリが背後から静止する。

「ん?なんや、こいつらユカリちゃんの知り合いか?」
顔を後方に向けてユカリの顔を見るユエン。
「そうよ!だから二人とも、争おうとするのは止めて!」
ユエンとイレイサー、双方に対して声を張り上げるユカリ。

「あの…そういう貴方こそユカリ様のお友達か何かですか?」
イレイサーが二人の会話に割り込む。
「ん?まあ、友達やね。さっき知り合ったばっかやけど」
再び顔を前方に向けたユエンは平然と答えた。

「ユカリさーん、その人友達ー?」
「え?…う、うん……」
レッドの問いに、先ほどとは正反対に声を細めて呟くユカリ。

「……なんや、味方同士やったか」
目の前の者たちが敵ではないと分かり、刀を下ろすユエン。
それを見たイレイサーとレッドも武器を仕舞い、臨戦態勢を解除した。

「ねえ、イリっちゃんとブルーがどうしたんだって?」
改めてレッドに事情を聞き直すイリス。

「だから、変な奴が現れてユカリさんを操って…とにかく大変なんだ。来れば分かるよ。行こう」
それに対してレッドは説明を省略し、早く来るように言う。

「なあ、オレも一緒に行っていいか?」
ユエンがイレイサー達に聞く。

「ユカリ様のお友達なら構いません。一人だけここに残す訳にもいきませんしね。ユカリ様、構いませんよね?」
イレイサーの一人ラウムはそう答えた。

「え!」
ユカリが動揺して声を漏らす。
「いや……それは……」

「…?オレが行っちゃ嫌か?」
怪訝な表情で聞くユエン。

「えっと……その……」
しどろもどろになるユカリ。

「いいってさ。さっそく行こうか」
話を打ち切るとユエンはイレイサーに言う。

「では、早速テレポートで戻りますので私たちの近くに来てください」
それを聞いたユエンはイレイサーの方に歩み寄っていくが、ユカリは動かずにその場で俯いたままだった。

「…ユカリちゃーん?どうしたんや?友達がピンチなんやないの?」
ユカリが来ないのに気付くと、振り向きながらユエンが言う。

「ユカリ様?どうしたのですか?」
イレイサーが質問をしても、ユカリはその場で俯いて無言のままだ。

「ユエンさん…だったかな?ユカリさんが変なんだけど何か分かる?」
ユエンと同じように怪訝な表情でユカリを見つめるレッド。
「いや、分からんな…オレもさっきこの子と会ったばっかりやしなあ。ところで、そのイリスって子はどこに居るんや?」
ユエンからしたら、極自然な質問だった。
「マトリエス号、という宇宙船です」


――!!


マトリエス号、という言葉を聞いた途端にユエンの雰囲気が変わった。
そして、その変化にイレイサーが気付かないはずが無かった。

「ユカリ様、まさかユエン様に何か連れて行けないような事情があるのですか?」
「え、えっとお・・・」
更にしどろもどろになるユカリ。
「……では、とりあえず、まずユカリ様だけ移動させて、
向こうで問題が無い事が分かったら改めてユエン様も連れて行くという事で――」



「待てっ!」
一同は驚いた。なぜなら、ユエンが左手でレッドの首根っこを掴み、右手で刀を持ってレッドの首に突きつけていたからだ。


「貴様、レッド様に何をするんだ!」
イレイサー達の中で動揺が走る。

「黙れ!このガキの命が惜しかったら、大人しくオレを星の戦士が居るマトリエス号に連れていくんや!」
「止めて、ユエン!」
ユカリがユエンを静止しようとする。

「黙れ!オレを騙していたお前なんかもう友達やない!」
「ユエン!」
「黙れって言ってんのが分からんのか!星の戦士の仲間が、オレの父ちゃんに付けてもらった名前を軽々しく呼ぶな!」
ユエンのその言葉に、先ほどまでユカリに見せていた優しさは無かった。

「良く分からないけど、君はユカリさんの友達じゃないんだよね…?」
ユエンに掴まれた状態で、レッドが口を開く。

「ほう、よくこんな状況で減らず口が叩けるな?そうや、あの女…ユカリとは友達なんかやない、憎みあう敵同士や」
口の端を吊り上げ、レッドにだけ聞こえるように囁くユエン。

「じゃあ……なら、君を傷付けてもユカリさんは傷付かないって事だね!」
レッドは掴まれた状態のまま、右手でユエンの右手、左手でユエンの左足に触れた。
そして、ユエンが反応する間も無く――


―燃えろ!


「なッ!?」
ユエンが驚愕する。
驚いて当然だろう。レッドが触れた自分の右手と左足から、真っ赤な炎が噴き出したからだ。



――燃え尽きろ!!



「ぐあああああああっっ!!??」
ユエンは一変、レッドを放り投げようとするが、急な事で完全に油断していた物だから上手くレッドの腕を外す事が出来ない。
そしてユエンがもたついている内に、炎はどんどん勢いを増し、ユエンの手足を焼き尽くしていく。


「がっ…!」
なんとかレッドの手を放し、力なく後ろに倒れこむユエン。
その隙にレッドはイレイサーの方に走り寄った。

「…!」
その酷い姿のユエンから、思わず顔を背けるユカリ。

「…どうする?あの男を倒す?」
小声で話すレッド。
「レッド様、あの死に損ないの男の事はどうでもいいですが、ユカリ様は早く連れて行かないとイリス様とブルー様の命に関わります。
私にいい考えがあります。ごにょごにょ…」
イレイサーの一人のルイスは少しレッドに耳打ちすると、消えた。

レッド達が話している間にユエンは刀を杖代わりにして起き上がろうとする。
「(なんや?逃げるつもりか?それとも仲間でも呼びに行ったか?ん、待てよ……テレポート……)」

「しまった!」
立ち上がって振り向いたユエンが見たのは、ルイスに背後から羽交い絞めにされたユカリの姿だった。

「クソッ!」
ユカンがユカリの方へ踏み出そうとした瞬間、ユカリとルイスは、消えた。

「チィッ……はっ!」
再び後ろを振り向くユエン。そこには、レッド達の姿も無かった。

「…やられた!」
ユエンは悔しそうに呟くと、怒りをぶつけるように床に足を叩きつけた。

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投稿時間:05/08/17(Wed) 22:46
投稿者名:プチかび
Eメール:
URL :
タイトル:Re^7: 遥かなる旅の果てにpart19


「なあ、7号よ」
「なんだ?22号」
闇の空間に、2体の人型ダークマター
「お前の『息子』の事だけどさ」
「結縁の事か、どうかしたのか?」
「何であいつは俺たち闇の間にもう数年も居るのに…全く馴染まないんだろうな、闇に。
闇魔法も使えるようになったんだろ?」
―――結縁、7号が拾い、そして名付けた「人間」の名前。
――22号はそんな7号にとって親友関係に値するダークマター。
「ああ。だが何故闇に馴染まないのかはわからぬ、しかし結縁は決して闇に染まらない「光」の持ち主なのかもしれない」
「おいおい、それはここにとっちゃあまり受け入れられないぞ?」
「…そうだな。しかしその中で結縁はいつかこの組織を変えてくれるだろう。
私はそう信じている。あいつは私にとって希望の光だ」
「……お前……」
「私は気づいてしまったんだ、繰り返される殺戮に一体何の意味があるのだろうか、と。」
手に持った黒い剣を見る。
きらりと光を反射して輝いた刀身は、ほんの一瞬紅く見えた。
「…………」
「だから私はもうこれ以上の殺戮は出来ない
……しかし、それに気づかせてくれた結縁には感謝している。
色々な意味であいつの存在は私を変えてくれた」
「…前のお前は感情など無かったもんな、一時は組織の次期頭領まで噂されてたもんな。
兵器として育てる為とは言えあいつを拾ってきた事だって俺たちにとっては驚きだった」
「……思えばあの日が転機だったのだろうな……本当、結縁には感謝しているよ」
「…………」
――だが――同時にその所為でお前は次期頭領を放棄したんだぞ?
22号はそれを心に留めて置いた。
「――しかし結縁にはまだ一つ、頼みたい事があるんだ」
7号の声のトーンが少し、落ちた。
「何をだ?」
「…私は今日の任務でこの組織を抜ける。
当然、私は裏切り者その他諸々で処刑されるだろう。」
「!!」
それだけでも十分驚くべき事なのだが、彼はさらに驚く事を口にした。
「その時――結縁に私を殺してもらおうと思ってな」
「なっ……!お、お前……」
「そうすれば、結縁は歯牙にかけられずに済む、自らの父親を殺せるのだからな
私も結縁に殺されるなら本望だ、まさに一石二鳥。」
――そこまで覚悟が出来ているのか。
―そして、自らの命を懸けてまでも殺戮をしたくないのか。
「……不思議な物だ、もうすぐ傍に死があるというのに……何一つ恐くない
心残りはやはり結縁の今後を見届けられない事だな」
小さく笑う。
「あいつには……その事を言うのか?」
「ああ、戻ってきたら言うつもりだ」

―――それは、7号が極秘に処刑される数時間前の事―――
――この遠征先で、父親は「殺された」とされたから―――
―ユエンには、父親の最後の願いは届かなかった――――――



「死に損ない」



頭の中で、先ほどの誰かの声が反芻した。

父親が死んでから、自分に対する差別の意はついに表面化した

悔しかった。

上司に任務と言う名の死を宣告されたのは14歳の時

俺は瀕死の状態になりながらもその任務を遂げた

そしてその時に上司に言われたのが――

「死に損ないめ、何故生きている」

――――その結果、俺はその時初めて「同胞」を殺していた

裏切り者と向かってきたものも全て殺してやった

当時の幹部は、そんな俺を殺そうとはしなかった。

しかもその事件を期に俺は持ち上げられるように地位を上げていった

そして幹部になった時、当時向けられる部下からの視線の大半は畏怖だった

最も3年経った今、それはゆっくりと風化こそしていったのだが……


今でも周りが自分に向けてくるのは尊敬もしくは畏怖の視線。
強いから。逆らえないから―――
さらに言えば同僚を自分は無意識の内に避けていた一面があった。
故に同僚ともこれといった交流関係を持っていなかった。
だから。
ユカリと言う存在、たった少ししか共有した時間は無かったけれども
――嬉しかったんだ
ナンバー2ではなく、ユエンとして見てくれる第2の人物だったから。

―――だから……

彼は、父親の言う、闇に染まらない「光」ではない
誰も見えないところで彼には闇が蓄積されていたのだ
そしてそれが14歳の時、爆発したのだ。
闇は再び眠りにつきこそはした、しかし3年の月日で力を失った闇は再び力を取り戻していき、さらに闇は増殖を続け――

―――もし、過去の起爆剤となった記憶と
星の戦士やその仲間達への尽き果てぬ憎しみ
そして、信頼しかけた少女に騙されたという事に対する――深い悲しみが
彼に潜在する「闇」とシンクロしたら―――?



――― ユエンが 目を見開いた 瞬間 

         彼の意識から「ユエン」が 消えた



「……やってくれたよなぁ……?」
一度見開いた瞳は閉じて、軽く自嘲する。
――油断してたオレが悪いんやけどな
気のせいか、ユエンの細胞の一つ一つが闇を纏ったかのように肌や、髪の色素が少し黒い…声のトーンでさえも、少し低い――
あれだけ焼け跡の酷かった手足の傷が、黒い煙と共に再生されていく――

そうっと瞳を開ければ、空気が一気に張り詰めた。
パリンと、空気に圧されたかのように窓が割れた。
例えばそれがダークマターだとしても、近づくのを避けてしまいそうな、そんな威圧感――目にも見えてしまいそうな邪悪な黒いオーラ……
それを彼は今纏っていた。

たった今再生された手のひらに業火を生む。
レッドの能力をラーニングした証。
しかしその業火はどこか青く黒かった。
生んだ炎をコクピットに向けて放つ。
ばあんと爆発音、小型の宇宙船内に鳴り響く警報。
爆風に髪が煽られ、バンダナが外れ、それは窓の外へと消えていった。
しかしユエン本人はその場に根を張ったように微動だにしなかった
一気に燃え上がるオレンジの炎はこの宇宙船がもう風前の灯である事を意味しているにも係らずユエンは焦りの一つも見せずにその手で解けかかっていた髪留めを解くと、床に手放し。
黒い瞳、一切の光の反射を許さない瞳を小さく細めた。

「俺はマトリエス号へ行くんや……星の戦士や、その仲間を殺すために
皆殺してやる、俺の邪魔をする奴なら……!!」

そう言った直後。
ぶつっ、とテレビの画面を切ったかのように、ユエンの姿が消えた。

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投稿時間:05/08/18(Thu) 10:37
投稿者名:一太郎(焉)


エンジンの修復が完了したことによって、マトリエス号は惑星からの離脱が可能となった。
食堂付近での戦闘も既に終了したのを受け、発進の準備で艦内はやや忙しかった。
そんな中、艦橋にレッド、イレイサー、そしてユカリの姿は現れた。

「…イリス様の波動を感じません…」
「え?」
ルイスの呟きにレッドは疑問の声をあげる。
「それって、既にイリスさんがいないってことですか?」
「…恐らく、私達がユカリ様を迎えに行っている間に戦闘が終了してしまったのでしょう…イリス様は、この場を去った。」
レッドはその言葉を聞いて動揺した。
ならば、イリスと戦っていた姉はどうなったのか、と。
「姉さんは…?」
「ブルー様の波動は感じられます。無事のようです。」
「…そう、ですか…」
よかった。レッドは心の中でそう呟いた。

その傍らで。

―――私は…どうすればいいの…?
ユカリの心には、深い疑念が渦巻いていた。
イリスを助けられなかったこと、ユエンを傷つけてしまったこと…
…ユエンから、引き離されたこと。
様々なことが心の中でぶつかり合い、心が痛かった。
胸が張り裂けそうだった。
―――私は……どうすれば…?
同じことを、何度も、何度も、自分へと問いかけ続けた。



「次の目的地は何処だ?ルクソル。」
「何処だろうな。ブルブルスターか?」
ルクソルが宙図を見て、訊き返す。
「ブルブルスターにあるはずの氷の欠片と器は、既にあそこには無いはずですよ。」
ゼロの隣に立つリヴリィーナが十瑠に言う。
「となると…リップルスターか?」
「だろうな。だが、リップルスターに行けば激戦は必至。闇の勢力が強く及んでいる。」
ゼロが言う。
リップルスターはポップスターと並んで最も穢れ無き惑星。
ファイナルスターから近いリップルスターは最初の標的とされた。
妖精の秘宝であるクリスタルを押えておきたかったという話も聞いたことがある。
「クリスタル…か。重要なものなのか?それは。」
十瑠がゼロに訊く。
ゼロはあぁ、と答えて、
「聖なる力を秘めている。つまり、邪なる力を祓うことが可能だ。ただ、強い力は使い方を誤ることで逆の意味を成す。今では闇の勢力にクリスタルが使われているかもしれないな。」
「そうか…」
「クリスタルを奪還すればいいんじゃないのか?」
治療を施されたイチタが提案する。
「…難しいとは思うがな。第一、まだリップルスターにあるとは限らないだろう。」
「そうか…」
「まぁ、とにかく。目的地はリップルスターということでいいか?」
十瑠がその場にいる全員に言う。
反対する者も無く、マトリエス号はコレカラスターから脱出した。



だが―――



その瞬間。

艦内にいた誰もが戦慄に身体を震わせた。
恐ろしいまでの…殺気。
それこそ、見境無く全てを絶ってしまいそうな、危険な殺気。
いち早く、ゼロはその殺気の主の名を口にした。

「まさか…結縁…か?」

そうでなければ良いと思ったが、期待はするだけ裏切られて。
かつて自らの上に立っていた者の変貌に驚いた。
想像もできない、闇の力。
何が、彼をそこまで変貌させたのか。
考えても、答えは出ない…



抜き身の刀をダラリと下げて。
ユエンはマトリエス号の通路に立っていた。
『この艦内に、星の戦士とその仲間がいる』
その事実は、彼の心をさらに掻き乱した。
―――殺す。
今、彼の視界に入った者は全て斬り捨てられてしまう。
そう感じさせるだけのオーラを、彼は纏っていた。



「…目的地変更だ!」
「なんだって?」
十瑠が怒鳴るように言ったゼロを振り返る。
ゼロの頬を一筋の汗が流れた。
「ブルブルスターに急行してくれ!艦内に敵が現れた!コレカラスターに戻っている余裕は無い!…このままでは艦諸共、皆殺しだ。」
十瑠が、ルクソルが、リヴリィーナが、イチタが、ルークが、息の呑んだ。
ティーラだけが、肩を竦めた。
「宇宙空間で艦を吹っ飛ばされでもしたらお終いだ。奴をどうにかしてでも食い止めなければ…少なくとも何処かに着陸するまでは。」
「…艦内で一番頑丈な部屋は何処だ?」
十瑠が艦内のデータを見て、呟く。
「…ここか。アシュルの造ったトレーニングルーム。ここに何とか誘い込めれば…」
トレーニングルームは、幸いユエンのいるすぐ近くだった。
「戦える者はなるべく集まったほうが良さそうだぞ。…命の保証は無いが。」
「やらなきゃどっちにしろ死ぬんだ。やってみる。」
「僕も、行きます。」
「あはは、人様の艦で暴れるとはいい度胸だなぁ。」
イチタ、ルーク、ティーラも揃って立ち上がる。
「それと、カービィだけは保護してくれ。奴の狙いは、恐らく星の戦士カービィ。」
「…わかった。ルクソル、カービィを連れて来てくれ。」
「了解。」
ルクソルがすーっと部屋を出て行った。

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投稿時間:05/08/19(Fri) 20:18
投稿者名:枯城


「え…と、こんにちは☆」
とりあえず目の前の黒い少女に挨拶するカービィ。
その少女も微笑んで挨拶した。
「こんにちは」


…


………


会話が続かない。
それはそうだ。少なくとも闇の欠片を持ってる、もしかすると闇の欠片そのものかもしれない少女相手に、
「エンデは、やみのかけら、だよ。カービィ、くん」
「ええええええっっっっっっ!!!??」
「えっ!?どうしたの!?さっぱり状況読めないんですけど僕!?」
どうやらシャドーはよくわかっていないらしい。
カービィが急いで説明しようとする。
「えっとね、このコが闇の欠片でね、えっとね、そのね、多分このコは人の心が読めるんじゃないかなーってね、って僕って人なのかなどう思う?」
「落ち着いてカービィ。よくわかんない」
頭にクエスチョンマークを浮かべるシャドー。
「…まぁ、このコが闇の欠片だってことは分かったけどさ」
─っていうか眼球が黒い人って不気味だぁ…

「エンデ、ぶきみ?」
唐突にエンデと名乗る少女が悲しげな顔で言った。
「え?へ?いえいえそんなことまったく思ってませ…」
唐突の言葉に焦るシャドー。
だが、途中でシャドーの焦りが停止した。
「もしかして…」
この少女は心が読める?
だが、目の前の少女は少し首を傾げただけだった。

「とにかくさ、悪いヒトには見えないし…」
カービィが言いかけたところで、聞き覚えのある声が聞こえた。
「カービィ君!シャドー君!早くコクピットへ!」
ルクソルだ。
壁という壁をすり抜け(幽霊という職権乱用)、カービィ達に突進してきていた。
「…って誰?そのヒト。」
「エンデは、エンデ、だよ。ルクソル、さん」
突然名前を言い当てられて、頭にクエスチョンを浮かべるルクソル。
だが、すぐに本来の目的を思い出す。
「っとそうだ!今艦内に敵がいるんだ!確実に君ら星の戦士を狙っている」
「ええ!?」
「だからすぐにコクピットに…」

次の瞬間、カービィ、シャドー、ルクソル、エンデの姿が消えていた。



マトリエス号・コクピット

カービィとシャドー、ルクソルが、視界が一変していたのに気付くのには少し時間がかかった。

突然現れたカービィにシャドーにルクソル、そして見慣れない少女に驚く十瑠達。

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投稿時間:05/08/21(Sun) 15:43
投稿者名:サイビィ


コレカラスターのジャングルの奥地。
ここには先程まで戦艦ハルバードが停船していた。
しかしそれは数十分前のこと。
今はマグマが流れ、火の川と化している。
そこからジャングルを抜けたところにある荒野に、3つの人影があった。
石像のように固まったそれらは、マグマにさらされても、溶けることなく、それどころかマグマを弾いていた。
どうやら防御魔法をかけられているようだ。
だが、6時間もすれば防御魔法は解けるだろう。
それまでにマグマが収まればいいのだが・・・。


時は少しさかのぼる。


心が『悪』そのものになった宿主・・・今はエオと名乗る者がメタナイトやクヌギと戦闘中のハルバード付近、そこから東に進んだ荒野。
そこには、1人の女性がいた。
腰まで届くロングヘアーの髪、黒い目、白いローブ・・・。テュールだ。
彼女の後ろにいる2人の人間。
1人目は顔の右側を覆うようにのびた黒髪の男。
2人目は灰色の短い髪。
デットと28号である。
大方テュールに呼び出されたのだろう。

「着きましたよ。」
「・・・前のはなんだ。」
「見て分からないんですか?人ですよ?」
彼等の視線は、何があっても微動だにしない1人の人間。
奇妙な形で止まっている所からすると、時を止められているのだろう。
それも、闇の器もどきの力によって・・・。
「・・・どういうつもりなんです?テュールさん・・・。」
闇の器もどきを取り出したテュールに28号が口を挟む。
それに対しテュールは、闇の器もどきをしまう。
「あら、察しがいいですね。もちろん、あなた達の時を止めるんですよ。それが私のこの宇宙に存在する理由です。」
「どういうことだよ、時を止めるだなんて。」
デットはテュールを睨み付ける。
「あなた達は時の女神に微笑まれてはいません。だからですよ。
本当に時を取り戻せる素質のある人間だけを必要とするんです。あなた達は―
「・・・選ばれなかった。っていうことか。」
「そうです。この2人も。」
テュールは闇の器もどきを出す。
前回みたこの光も禍々しかったが、今回はそれが2倍以上はある。
「この闇の器に似せて作られたもの・・・これを使えば一時的に時を止めることができます。ある程度使ったら力は失われるんですがね。
例え、それが欠片の守護を受けたものであっても、既に死人となり、本来止まっているはずの人間の姿を借りたものであっても。
ましてや、『ego』と呼ばれる現象で意志を持ったものであっても。・・・前回時を止めたラグも、これで・・・。」
次第に小さくなっていくテュールの声。
この不用な人物の時を止めるという仕事は、テュールにとっても相当辛いもの。
「すみませんが、世界が元に戻る時まで止まっていただきます。こちらとしても、急いでいるので。」
闇の器もどきは不可視の光を辺りに撒き散らし、その光はデットに集まっていく。
その光を大量に浴びたデットは、足の方から動きを失われ、声にならない声を出して時の流れから逃れた。
デットの時を止めた張本人のテュールは、悲しそうな表情でデットを見ていた。
そしてテュールの手に握られた闇の器もどきは、28号の方へと方向を変える。
「あなたを入れてあと2回しか使えません。1つはもちろん、あなたの時を止めるためのもの。そしてもう一つは・・・―


――私が時の流れから逃れるための力・・・――


闇の欠片はデットの時を止めたときと同じような現象を起こす。
もちろんそれは28号の時を徐々に奪っていき・・・。

「・・・これで、私の仕事は終わり・・・。後はこの人達を安全な場所へ移すだけなんだけど・・・そうも言ってられないみたい・・・」
テュールは3人に防御呪文をかけ、そして自らを近くの洞窟に身を隠し、死にゆく者のように時の流れから身を投げた。



そして、現在に至る。



場面は変わって、ハルバード船内。
今のハルバードの位置は、コレカラスター近海。
ブリッジにはメタナイト、ケルベロス、クヌギがいた。
「今頃マトリエス号の連中は、ブルブルスターに着いて氷の欠片を手に入れていることだろう。・・・なら、目的地はリップルスターだ。」
メタナイトはそう言いながらも、何か別のことを考えていたそうな。

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投稿時間:05/09/02(Fri) 22:10
投稿者名:bomb


「…さて、お二人とも、分かっていると思うが」
ケルベロスが唐突に言う。

「ああ」
メタナイトがそう答えた直後、何者かが通路からブリッジに駆け込んできた。

「大変だ!奴が起きて動き出した!」
それはジョニーだった。激しく呼吸を繰り返し、大慌てしているようだった。
ジョニーはメタナイトに気絶したエオの見張りを任されていたのだ。

「やはりな」
そんなジョニーとは対照的に、メタナイトが冷静に言う。
クヌギとケルベロスも全く動揺した様子は無い。

「…分かってたのか?」
ジョニーは拍子抜け、といった感じだ。

「こんな誰も居ない艦内や。強い気を持った奴がどっかで動いたりしたら分かる」
クヌギが平然と答える。

「…まあ、凄い賞金稼ぎは気で敵の位置が分かるとかいうが…慌て損かよ」
力尽きたジョニーは近くの壁に寄りかかり、座り込む。

「奴はちょっとした特別な鎖で縛って手も足も出ないようにしてあるが、一応安全を確認してくる。
私とケルベロスが様子を見に行く。クヌギとジョニーはここで待っててくれ。ケルベロス、行くぞ」
メタナイトがそう言うと、クヌギとケルベロスは軽く頷いた。
そして、ケルベロスとメタナイトは先ほどジョニーが出てきた通路へ入っていった。


「ところでクヌギくん…でいいかな?」
壁に寄りかかって座っているジョニーが、残ったクヌギに話しかける。

「あんたは確かジョニーやったね。俺の事は好きに呼んでくれていい。どうしたんや?」
特に警戒せずに答えるクヌギ。

「君の妹さん、結局行方知れずのままここまで来ちゃったけど良かったの?」
ジョニーはそう言いながら立ち上がる。

「ルナギの事か?連絡こそ取れては居ないが、あいつはちょっと火山が噴火したくらいでヘバるようなヤワな奴やない、大丈夫や。
戻ってこなかったって事は、きっと仲間の船に乗って脱出してんやろ」
クヌギはジョニーを見ながら…もとい、ジョニーの黒い髑髏の帽子を見ながら言う。
ジョニーの顔を見ているつもりが、何故かそちらの方に目が行ってしまうのだ。

「ほー、信頼してるんだね。兄妹愛って奴?…ま、銀河の色んな星には色んな法律があるしな」
ジョニーはそんな目の前のクヌギから、微妙に目を逸らす。

「(法律…?)…そういうあんたこそ、なんで俺とルナギが兄妹だって分かったんや?確か、あんたの前では言ってないはずやけど…」
ジョニーが呟いた言葉が微妙に引っ掛かりながらも、クヌギはジョニーに質問を返す。

「え?そっくりじゃないか。分からない方が変だろ?」
極当たり前のようにジョニーが言う。

「…そうか、分かった。…なあ、ちょっと背中見せてみ」
ジョニーの発言を流すと、突如話を変えるクヌギ。

「なんだ?」
ジョニーは言われるままに後ろを向き、クヌギに無防備に背中を見せる。


「・・・・・・」
そのジョニーの背後で、クヌギは静かに三つ又の槍を抜いた。





その瞬間、クヌギは槍を床に落としていた。
「…クヌギ、何のつもりだ?」
自らの首に、何時の間にかメタナイトが下からギャラクシアを突きつけていたからだ。

「な……!?」
驚愕の声を漏らすクヌギ。何時の間に…!?

「…どうしたの?」
振り向いたジョニーはこの状況が飲み込めていないといった様子だ。

「お前は敵の陣営の者だったのか?」
メタナイトが全く隙を見せずに言う。
クヌギはもう一本槍を持っているが、この状況ではそれを抜く事も儘ならないだろう。

「お、落ち着け!ちょっと試してみただけや。殺気丸出しで武器を向けても気付くかどうかをな。
こんな状況や、何時命の危機に陥るか分からん。だからちょっとテストしてみたんや」
クヌギはゆっくりと手を上げながら答える。

「…本当か?」
メタナイトは眉一つ動かさず(仮面を被っているので眉が動いても分からないが)下からギャラクシアを突きつけている。

「本当や!ちょっとした冗談やって!本当に殺すつもりやったら、殺気は隠すはずやろ?ジョニーも何か言ってくれ!」
クヌギは手を上げたまま、こちらをポカンと見つめているジョニーに話しかけた。

「まあまあ二人とも、そんなに殺気立つなよ。老けるぞ?」
クヌギの声に答えるように、ジョニーが二人の間に割って入り、両手で二人の距離を離す。

「…洒落にならない冗談はしないように」
メタナイトは問題無いと判断すると、ギャラクシアを鞘に戻した。

「あと、やはりお前とジョニーも来てくれ。どうも勘違いだったようだが、一応私の近くに置いていないと不安だ」
クヌギが手を下ろしたのを確認すると、何事も無かったかのようにメタナイトは先ほどの通路に入っていった。

「まだ完全に信用していないのはこっちもやで…メタナイト」
クヌギも三つ又の槍を拾うと、メタナイトの後ろを歩いていく。

「良く分からないが、むやみやたらに武器を出すのは止めようぜ」
何も考えていないかのようにジョニーが二人に続いて通路に入る。


クヌギとメタナイトの後姿を見ていると、ジョニーの脳裏に先ほどの戦いの光景が過ぎった。
「(しかしクヌギ君、若いのにすげえ強いみたいだよなあ。メタナイトは俺よりも年上っぽいが、
あの狂った男もそんなに年行ってないみたいだし、あのケルベロスっていう子もまだ子供なのに斧なんか持っちゃって戦えるみたいだし。
そういえばテレビで若いバウンティハンターが賞金首を捕まえたとかも見るな。最近は戦士の低年齢が進んでんのかな?
時代が変わったのか?これ以上若い命が失われない事を祈るばかりだな……俺には関係無いが)」
そんな事を考えながら軽く歩を進めるジョニーの前で、
「(この帽子の男、ただのニードル使いではない。さっきの戦いでも本気ではなかった。
何かを隠しているな…私を信用していないだけか?いったい何者なんだ?)」
「(この仮面の男、ただの剣士と違う。いくら気を抜いていたとはいえ俺の首に一瞬で剣を突きつけるなんて…
気配の探査能力と足の速さが半端やなさすぎる。恐らく、さっきの戦いでも本気やなかった。
それにあの男が言っていた『元星の戦士』という言葉も気になる。俺を信用していないだけか?何者なんや?)」
二人の戦士はお互いの腹の中を探り合っていた。

通路を歩く内に、やがて突き当たりに半開きの扉が見えてきた。
メタナイトがその扉を完全に開けると、中に居たケルベロスもこちらに気付き、メタナイト達の方に向き直った。
「メタさん、さっき凄い勢いで部屋から飛び出して、どうしたんだ?」

「なに、ちょっと彼らを呼びに行っていただけだ。ケルベロス、そいつから何か聞き出せたか?」
メタナイトの視線の先には、白く輝く鎖で艦内の柱に縛られたサイビィの姿があった。

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投稿時間:05/09/25(Sun) 02:07
投稿者名:プチかび


警報鳴り響くマトリエス号の通路……
其処に一人立つ青年はその警報の意味に気付いているだろうか。
……いや、そもそも今の彼はあるひとつの事で頭が一杯だ。
そうとなれば他の事など考える予知など無い。

――自分に向けられている警報は雑音にすらならない、只流れていくだけ。

『対象がトレーニングルームに向かっている!急いでくれっ!!』
緊迫した声の十瑠がマイク越しにスピーカーから流れる。
怒鳴るように放たれたその声は、一部割れていた。
戦士達はその声を受けてさらに速く、走る。

「…………」
青年――結縁は何も言わずに手近な扉へ向かう。
扉の先には開けた空間……トレーニングルーム。
歩みを進めて、真ん中らへんで立ち止まる。
―――自分を其処に追い込むことがこの部屋の目的だった、とは露知らず。
それを証明するのが戦士達の到着。既に手には武器を持ち、臨戦状態を整えている。
それに気付いた彼は入り口の方へ振り返った。
その表情には、僅かだが笑みが浮かんでいた。

―――殺す、殺す…全てを。
本能が理性を破壊した瞬間、唯一つの感情に突き動かされて行くそれはある種人形。
…性質の悪すぎる、闇色の人形。

ユエンが振り返った先に、5つの人影。
「…やはり……お前だったか……」
「ユエン様…」
いや、わかっていたのだ。
わかったいたのだが、……やはり、信じたくはなかった。

自分がまだ、本当の「闇」だった頃。
彼はまだ幼い少年だったか。

初めて彼を見たときは親であるダークマターが連れて来た時。
彼は背に隠れていてこちらをまともに見ようとしなかった彼だったか。
よく覚えていない。

その後、彼の父親が戦死したと伝えられた。
だがその時は別に気にも止めなかった、むしろ感情を持ち始めていたあれは処分されるべきだった、其処まで思っていた。
だから当然、遺された息子の事など何一つ思わなかった。
自分にはその時、他を無関心にさせる野望があったのだから。

しかし時が経ってみれば何時の間にか、彼は強力な力を得ていた。
気がつけば彼は自分を飛び越えて、組織のナンバー2に君臨した。

更に言えば、久々に対面した今の彼は暴走している。
理性が見当たらない、容赦を知らない野性的な瞳。

……一瞬だが、ゼロの瞳に焦燥の色が混じった。


「……あぁ、ゼロ、か、後、レイ。」
静かに見据え、ポツリポツリ呟く。
――かつての同僚を見て、多少「意識」が戻ってきたのか。
しかし行動は刀を持った腕を、こちらに向けてくる。
「…結縁、問おう。……どうしても、我々と戦うと言うのか?」
避けられない事はもう分かっている、だが……問わずには居られなかった。
この場にいるのはゼロ、リヴリィーナ、イチタ、ルーク、ティーラ……
リヴリィーナは戦わせないから4対1、人数的にはこちらが有利。
―――最も、彼女はユエンが放つオーラに圧され完全に怯えてしまっているのだが…―――
ゼロは、小さくリヴリィーナに戦える奴を探して来い、と命じた。
彼女は頷くと、足を竦ませながらもゆっくり、扉をあけて素早く外へ出て行った。
代わりにゼロ達は一歩前に出る。ユエンの放つオーラを、逆に押し返すが如く。
――しばらく時間を稼げばリヴリィーナに出会った者は勿論、艦内放送で危険を察知している他の仲間も駆けつけてくれるはずだ。
彼らなら、それまでの時間を稼ぐ事は充分可能だ。
しかし――
「……邪魔する奴はね、誰であろうが殺すんよ?」
―――不安は拭いきれなかった。


密封された空間の中。
やけにざわついている空気が突き刺すようにゼロ達を包む。
これから起こる、壮絶な戦いを待っているかのように…


「はあっ!!」
打ち破ったのはイチタ。
その手には蒼く淡く輝く双剣、エターナル・シンメトリー。
例えばその双剣を創った者がその剣に別の意味を込めていたとしても、持ち主にそれは伝わらないだろう。
―――仲間を護る、それが彼が宿した意味なのだから。
イチタの双剣が光としたら、間違いなくユエンの刀は闇だろう。
二つの剣が交わった時、バチリと音がし、火花…いや、電撃が散った。
そのあまりの反動の大きさに、2人は大きく後方に跳躍する。
「はっ!!」
「逝っちまいなあ!!」
其処にゼロの放った幾つもの紅球と、ティーラの放った強力な魔法が左右両方向からにユエン目掛けて放たれる。
「…!」
回避は不可能、ならば相殺するまで―――そう一瞬で判断したユエンは、左手を突き出した。

耳を劈くような爆発音、舞い上がる煙幕。
しかしそれは魔法が起こした物、すぐに晴れる。
最初と変わらない、向かい合った状態。

「…あいつ……なんで……!」
そんな中、ティーラは眉を顰めた。
「……何でアル兄ぃの魔法を…!?」
――破滅の鎮魂歌、それは彼女の兄の魔法。
「結縁は相手から受けた攻撃をコピーして自分の物に出来る」
その時、ユエンが刀を地に突き刺した。
地割れのように巻き起こる炎の渦―――4人は2手に散った。
「だから、恐らくは使ってくるのは大半が――そのコピーしたものだ。」
「…卑怯な奴だな……!!」
炎は扉にぶつかるとふっと焦げた亀裂を残して消えた。

――まさか、兄に何か……?
一瞬浮かんだ言葉は、すぐに新たな攻撃でかき消された。



仲間を護ろうとする意志
全てを殺そうとする意志

2つの強力な意志が、刃となって交錯する。

――刃と刃がぶつかり合うたびに、空気がバチバチ音を立てる。
其処に魔法が加われば、空気が激しく振動し、爆発音を生み出す。

一度、ユエンの方が後ろに後退した。
何を思ったのかは分からないが…その表情は小さく微笑んでいる。
激しい打ち合いに加えあちらこちらから飛んでくる魔法や投具にやはり疲れは見えてきた、それを隠すようにか、それとも焦りと感じて微笑んでいるのか。
はたまた………飽きた、もしくは余裕を意味する微笑みか。

しかしなんにしろ、ユエンの「心境」が変化していることには変わりない、4人は攻撃の手を緩めない。
ゼロの紅球、ティーラの魔法……ユエンはそれを跳躍しつつかわして…
自分を包む煙幕に小さく目を細め…ふ、と自分のすぐ後ろに、気配。
「ぐっ!?」
びしゅ、と背中を切り裂かれて血が飛んだ、まともにダメージを受けた瞬間、振りかえり様に刀を振るうが其処に「その」姿は無く。
「驚いた?」
ルークだ。変身を解いた手の先の鋭い爪で、ユエンの背後を襲ったのだ。
「ちっ…!」
「ナイスだぞ、ルーク!!」
それを勢いにティーラがいよいよ大剣を引き抜きユエンに向かい走る。

――傷は深いわけでは無いが、浅いというには心細い。
―このまま待っていればやられるかもしれない。

「そう言うわけには…いかないんやっ!!」

専ら吠えるように叫んだその言葉ひとつに、殺気と衝撃波。
ユエンはティーラとイチタの2人の剣士の剣を、片方は受け止め、片方は上手い具合に避けて。
次の瞬間―――
ティーラの大剣から力が抜ける、ざくりと地面に刺さった。
「「!?」」
そして一瞬前まで其処に居たはずのユエンが、消えていた。
「どこだッ…!」
誰もが見失った、その一瞬―――
「上だっっ!!」
ルークが叫び天井を指差せば……其処には、刀を振り上げたユエンが居た。
彼の前には、漆黒の光球が風船のように膨らみ、重低音を響かせ白い稲妻を小さく発生させ今か今かと弾けようとする…
ユエンの背には濃い灰色の天使の翼、それが一瞬で宙へ飛翔する手助けをした。
「しまっ…!!」
ゼロが慌てて手を翳したがもう遅かった―――無抵抗の4人に向け振り下ろされる刀。

漆黒の光球は振り下ろされる刀によってトレーニングルームの中央へ弾かれ――空気を吸い込んだように、見えた。
それに答えるようにトレーニングルームの照明が全て落とされたかのように、視野が闇に染まり、一切の音も吸い込まれた。


そして、それは遂に「発動」した




――――――――――………




割れる風船の音は爆発音。
飛び散る残骸は四方八方に散る稲妻。
「ぐぁああっ!!」
「あああ!?」
「なっ…!」
「うわあああ!!」
爆風に乗り響き渡る4つの悲鳴、そして小さく衝突音。
そんな嵐の中、灰色の羽は爆風に混じり散っていく……


「くッ……!」
壁に叩きつけられた4人。
稲妻は好き放題暴れただけだったので直撃は受けなかった。
だが代わりに床が抉られて煙幕が巻き起こり、先ほどとは違う闇で視野を覆う。
背中から打ちつけられた衝撃で思うように体が動かない。動かせない。
そして――

『……!!』

煙幕が消えてしまえば、其処にユエンの姿は無かった。
開け放たれた扉は「開けた」、では無く「破壊した」跡が残されていた。

舞い散った羽は全て灰となり、一枚も残っていなかった。

「くそっ……!」

―――皮肉な事に、仲間達が到着したのはこの直後だった。

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