×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

小説の中へ [13]



------------------------------------------------------------------------------- 
投稿日 : 2009/03/19(Thu) 22:36 
投稿者 : 百城葛葉  


……今から語る物語は、時をしばらく巻き戻って語られる。
その始まりは現状から数日前…魔女ドロシアが、デデデ城にプププランドのサーチマップを描く、その2日ほど前。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

オレンジオーシャンは、比較的静寂に包まれていた。
外れにある要塞で起こったダークマターとの戦闘も、海賊たちが襲われた海も、その場所の爪あと以外は、何も無かったかのように静まり返っていた。
人気も無い、小さい部類のダークマターも居なくなったその広場に、ふわりと小さな光が灯った。
光は少しだけ大きくなり、淡く銀にも見える光を纏った本へと姿を変える。
ぱらぱらと、風が無いにもかかわらずページは静かに捲れて行く。
…そして、中ほどまで差し掛かった瞬間…!

カッ!
「おうわっ!?」
ゴンッ!

一瞬の閃光と同時に奇声が上がり、次いで何かがぶつかる音がした。光が収まると、そこには一人の青年。

「〜〜〜〜っ;;」
…顔面抑えてうずくまっているところを見ると、どうやら地面に顔面強打したらしい。
「…って〜; いきなりほっぽり出されるとは;  …と?」
鼻をさすりながら青年は立ち上がり、辺りを見回した。
紅いメッシュが混じった銀の髪と黒いコートが風になびき、輝くほどの銀色の瞳が周囲の情景を写す。
「…多少の予想はしてたけど・・・想像以上な状態だなぁ、コリャ;」
彼の周りはいたって普通。だが、自分に当たって通り過ぎる風と、その目に移る遠くの風景は彼の知っている『普通』ではなかった。
風はどこか禍々しく、見える遠く…方角的にあっていればデデデ城だろうか…には、これでもかというほどに暗雲が立ち込めていた。
「…あってりゃ、あっちは『大将』のとこだよな…。…もしこっちと地形一緒なら、あの方角にゃ…ッ!」
独り言を言いながら情報を整理していく青年の顔が一瞬何かに気づいて見開き、次いで憎々しげな顔に変わっていく。
「…こりゃ、さっさと行動開始したほうが良さそうだ。…と、あれ? 本どこだ?」
そう一人ごちて、傍と気づいて辺りを見回す。その足元には、銀色の表紙の本が閉じたまま転がっていた。
「あ、あったあった。 …さてと、行くか。」
さも当然のように青年は本を拾いコートの中ポケットに入れると、『まるで確信があるかのように』歩き出した。

「彼」は、頼まれた。この世界に膨れ上がった闇の原因の追究を。
だが、それはデデデ大王やメタナイトの指示ではない。
…むしろ、『彼自身は知っているが、2人とはある理由により面識が無い』。
2人だけではなく、この世界に居る有名どころの名前も顔も「彼」は知っているが、誰も「彼」の事を知るものは居ない。
…彼が本来居るべき『プププランド』は、ここではないのだから。

(「『向こう』と一緒なら、確かここら辺にうちの要塞があったはーず〜……あっ!」)
キョロキョロと見回した彼は、その視界に『見慣れた』門を見つけてあわてて駆け寄った。
ダークマターとの戦闘で傷だらけになった門から中を覗き込むと、シーンと静まり返っている。敵も、味方も、居ないようだ。
それを確認すると、彼はさも自分の家のように堂々と要塞内に入って行った。


(「…やっぱり、デカいバトルあったんだな…。」)
中に入るにつれて少なく薄くなっていく、それでもくっきりと残る戦線の傷跡にそっと手を乗せながら、『彼』は悔しそうに思いをはせる。
――もし、その場に俺が居れたのならば。
しかしすぐに頭を振る。
(「例え世界が違っても、「あの方」やあのメタ・ナイツ達だ。やられちゃいないはず…! つか、これ以上考えてると『あっち』と『こっち』がごっちゃ混ぜになる;」)
気を取り直し、足を進めようとした『彼』はある扉に目が行った。重厚な、おそらく倉庫のらしき扉。かなり離れているが…
(「『うち』にはあそこに倉庫はなかったはず。・・・てことは、「こっち」の情報が何かあるかな?」)
思い立ったが吉日、とばかりに、『彼』はなるべく音を立てずにその扉に走り寄った。重そうな扉に手をかけると、意外にも開きそうな気配。
――システムダウンしてロックが外れているのか、それとも常に人がいる体制にしてロックがかかってないのか…。
(「とりあえず、開けてみりゃわかるだろ。」)
力を入れて横に引くと、重い音を上げて扉が動き、人が通れる隙間が出来る。ひょっこりと覗き込んだそこには…
「…うっわぁ〜…」
数台の、修理中と思しきヘビーロブスターが並んでいた。するりと中に入ってまじまじとよく見てみる。
装甲が剥がれ落ちたままのもの、アームの接続部が未修理のもの、センサーアイのレンズが割れたのか中の電光体が丸出しなもの…。
「戦いはじまっちまって、ほっぽり出されちまったんだな。」
そう呟きながら一体一体見ていた『彼』の頭に、ひらりと思い付きが舞い降りた。
「…直せば動く、かな?」
流石に溶接などの完全な専門系は少々技術が足りないが、『彼』はシステム面や改造、中度の修理に関してはかなりの腕を持っている。
ヘビーロブスターそのものに興味があったのもあって、暇あればメカニックたちの手伝いをしていたのだ。…ゆえに、知識はロブスターのもの『のみ』なわけだが。
さっきも言ったが、「思い立ったら吉日」とばかりに『彼』の行動開始は早い。ざっと見回して自分でも修理可能そうな躯体を探していく。

それは、奥の奥。一番奥に『居た』。
それを見た瞬間、『彼』は一瞬で確信した。確信が溢れ、顔がにやりと笑みを作り上げる。
「…お前なら、手ェ出せそうだな。」

装甲の溶接は終了してあり、アーム自体は繋がってないが延びたコードは本体との間に橋を作り、電子頭脳部分から伸びたコードは傍にあるコンピューターに直結してある。
…つまりは、『腕付けてシステムチェックすれば終了』まで行っている躯体が一体あったのだ。
『彼』は辺りを見回して工具箱を見つけ、モンキーレンチを取り出すとヒュン、と手の中で一回転させてからヘビーロブスターを見た。
「いっちょ、気合入れてやりますか。」

*********

キチリッ

小さい金属音を立てて、レンチが動きを止める。もうこれ以上回らないと言わんばかりにびくとも動かない。
それを何度も確認すると、『彼』はロブスターの頭頂部からひらりと降りて見上げ、ふぅと一息ついた。
「…う〜っしゃ〜っ; ようやく終わった〜;」
レンチを音立てないよう横に置き、大の字に床に寝転がる。

システムチェックのコンピューターはALLシステムがグリーン…正常であることを示し、
アームはしっかりと本来ついている場所に接続されている。
…それ以外にも、今しがた居た頭頂部に何かパネルのようなものがくっついているのも見て取れる。

「動力炉直結させたソーラーシステムもちゃんと連動してるみたいだし、後は『起こす』だけだな。」
上半身を起こしながらそう呟く。…が、窓の外を見た瞬間、大きな欠伸が出た。
「…ふぁ…。…うぇ、もう日が落ちかけてる;」
どうやらかなり集中してしまったらしく、時間の経過を把握し切れなかったらしい。窓の外には今にも沈みそうな鮮やかな夕日が浮かんでいる。
長い間の集中作業が途切れたのもあって、彼はだんだんと睡魔に犯されていく。
「…あ〜、まだ寝るな自分; 忘れそうだからこれは今のうちにやっとかねぇと;」
そういってモニターに歩み寄り、キーボードを慣れた手つきで叩く。呼び出されたのは『音声認識システム』の管理画面。
彼はコンピューター備え付けのマイクに口を寄せると、この世界に来て初めて『名乗った』。

「俺の名は、『スラッド』、だ。」

そしてその音の波長をロブスターの音声認識リストに追加し、音声データそのものを削除する。そのついでとでも言うように、
システムチェック等で残ったログイン情報もすべて削除する。
これで、『ロブスターが一体持ち出された』以外の自分が関わった証拠は消えたはずだ。
スラッドはそう確信し、コンピューターの電源を切った辺りでまた大きな欠伸をする。
「ふぁ〜〜; …通電してるから皆戻ってきそうで怖いけど、眠すぎ; …ロブ、足元寝床に借りるな;」
そういうと、コートを一度脱いで自分が修理したヘビーロブスターの足元に寝転がり、毛布代わりにコートに包まって目を瞑る。
…ほどなくして、静かな寝息が聞こえ始めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


就寝が日の落ちる前と早かったせいか、起床も早かった。
「…ん〜〜〜〜〜ぬぁ〜;」
コートから身を起こし、気の抜ける奇声と共に伸びをしたスラッドは一瞬きょとん、と辺りを見回す。
「…あ、そっか。『こっち』の世界に来てたんだったっけか。」
すぐに立ち上がり、バサリとコートを羽織ながらそう呟く。…呟いてから傍と気づいた。
「…夢、見なかったな。 …こりゃ相当やばいかも。」
平行世界の、とはいえ、彼もまた『プププランド』の住人。『夢を見ない』と言うことの重大性は知っている。
スラッドは、腰に刀を差すとロブスターを見上げ、軽く息を吸った。
「…ヘビーロブスター、システム起動。」
その声に応え、ウィーンと言う機械特有の音と共にセンサーアイに光がともる。どうやら認証成功のようだ。
「調子良さそうだな、うし。 …さて、これからどうするか…。」
システムチェックの際についでにデータログも漁ってみたのだが、しばらく止まっていたらしく襲撃中の情報と町の地図があっただけで、
知りたかった『現状』の詳細は見当たらなかった。
…実際は調査中のデータがあるはずだが、どうやら本気で『ロブスター関連』だけの特化技術らしく、見落としている様子。
ロブを起動したまま放置、の状態で延々思考を回していたスラッドだが、傍と思い当たるものがあった。
「…夢がない。」
それは、夢の泉が機能していないことと同じ。ならば…。
「ロブ、ちょっと付き合ってくれ。」
合図を出しつつ、格納庫の扉を開けてロブスターと共に外に出る。そして『突進形態』を指示し、その上に乗る。
「泉の位置は地図で確認した。ロブにもデータ入ってるだろ? …振り落とされねぇ自信はある。遠慮なく突進応用して突っ走れ!」
そういってスラッドは黒く沈んでいる方角…デデデ城のほうを指す。
それに応えるように、ロブスターは出力を一気に高めると即座に発進しだした。

「泉に行きゃ、少なくとも現状の重大性はわかるはずだ!」


…そして、オレンジオーシャンは再び静かになった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


オリキャラ説明


スラッド/白椿(しろつばき)
性別:男。20〜22辺り。
口調:俺、てめぇ(敵用)、お前、 〜だ、〜じゃねぇ? (ようはチンピラ口調)  メタナイトにだけは崩れ気味だが敬語。
デデデ→大将  メタナイト→メタナイトさん  女の子→敵味方問わず『ちゃん』付け 
ダークマター系→タコスケ、ボケ一族(ようは説明記号以外でダークマターと呼ぶ気なし)  その他(前述以外)→呼び捨て

外見:赤いメッシュが所々に入った白銀の髪に銀色の瞳、黒いズボンに前全開の黒コート着用で中に鎖帷子。
右手のみにレザーグローブ。
腰には日本刀。鎖刀は鎖を右腕にグルグル(血が止まらない程度に)撒きつけて、刀身は袖内の括りつけ鞘の中。
身長はデデデの肩辺りぐらい。

戦闘スタイル:基本戦闘は左手の刀のみ。(雑魚マター&弱めのコマンドマターレベル)
大ボス系やビュートなど、『確実に強い』とわかる相手には右手の鎖刀も使用し、必要ならば鎖によるリーチも大幅利用。
『勝ち方』よりも『勝つこと』にこだわるタイプ。ただし味方に迷惑かけたくないらしいが。


立場:(全力で)デデデ側


『平行世界』と俗に言われるもう一つの『プププランド』から【本】を介してオレンジオーシャンに現れた(人間型の)青年。
彼がいた『平行世界』にも影響が来そうなほどにこのプププランドの闇が膨れ上がっている現状に知り合いが気づき、
偶然本を拾った彼が「闇が膨れ上がった理由」を探るべく、本を利用した世界移動をもって代理調査をすることに。


要塞の内部が大まかにわかってたり、ロブの修理がキッチリ出来たりと『向こうでの立場』をにおわせつつ、必要以上は自分のことを言わない男。
とりあえず、ダークマター族は名前を呼びたくないぐらいに嫌いらしい。
『白椿』はコードネーム兼敵名乗り用の名前。『花ごと落ちる椿の如く、てめぇの首を取って勝つ』と言う意味で。
 

-------------------------------------------------------------------------------
投稿日 : 2009/03/20(Fri) 18:42 
投稿者 : tate  


「おお、そうじゃ団長。例のマシンからちょっと変わった情報が入ってきたんだが」
 身支度を整えたドロッチェに、回復カプセルの脇に立っていたドクが話しかけた。ドロ
ッチェの眉がピクリと上がる。
「例のハイパーゾーンに、別に大きな力を持つ闇が入っていったようなのだ」

 ドロッチェ達がいるのはフロリア、その中でも常春のエリアだ。
 相も変わらず、エナジーコンバーターはギャラクティック・ノヴァに連なる星々から力
を吸い上げ、ハイパーゾーンにいるゼロへエナジーを送り届けている。そして今では回復
カプセルだけでなく、ドクの作り出したよくわからない機械類もごちゃっと置かれている。
常春の風景も台無しである。
 宇宙に上がったカービィ達が、フロリアではなくアクアリスに直行したところを見ると、
デデデ大王達もフロリアで異変が起こっていることを察知していることは容易に推測でき
た。そろそろ引き時か、と考えていた矢先の報告だった。
「ほう、ハイパーゾーンに……ということは、あの時私が設置してきた『ゼロ・ディテク
ションレーダー』は想定どおりの動作をしている、ということだね」
「親分、何ですか? その何とかレーダーってのは」
「我々、闇に連なるモノ以外がハイパーゾーンに出入りできないのは知っているかな?」
 いんや、とストロンが首を横に振る。
「出入りできないのだよ。私が立ち入ることを許されたのは、バウンダリースペースまで
だった。だが、それはそれで癪な話じゃないか、同じ配下なのにダークマターの出入りは
スルーで、我々の通行はブロックされるなんてね」
 全くじゃ、とドクが頷く隣で、ストロンは首を傾げている。が、部下の反応には頓着せ
ず、ドロッチェはさらに言葉を紡ぐ。
「そこで、まずはハイパーゾーンを監視することにしたのだ。ドクに頼んで闇を検知する
機械を作ってもらってね、その機械を設置するために理由をつけてハイパーゾーンに接近
した、と。いずれはハイパーゾーンに侵入する手立ても考えたいところだが、ドク、その
辺の首尾はどうかな?」
「その辺なのじゃが、ハイパーゾーンに入り込むためには膨大なエネルギーを使い、周囲
を覆う闇を吹き飛ばすか、ベクトルが真逆なエネルギーで相殺するかしなければならんじ
ゃろ。以前、カービィがハイパーゾーンに入った際には、『ラブラブステッキ』というア
イテムの力を使ったようだが、アレはプププランドの人々の感謝の心を具現化させたモノ
だったようじゃ」
「感謝の心を具現化とは。全く、面白いことをするね。そのレプリカは……」
「無理じゃ」
 ドクはきっぱりと言った。
「『ラブラブステッキ』がどんなものかわからんし、そもそも感謝の心などという抽象的
なモノのレプリカなぞ、ワシでも作れんわ」
 そうだよね、とドロッチェは苦笑した。
「では仕方がないね。エネルギーをぶつけて穴を開ける方向で、もう暫くドクには試行錯
誤をしてもらおうか」
「あっれ〜? 親分、もう怪我は大丈夫なんですかい?」
 甲高い陽気な声が飛び込んできたのと同時に、小柄なサングラスのネズミが姿を見せた。
「姿を見ないと思っとったら、団長のお使いか、スピンよ」
「まあね。親分に頼まれていた調べ物、ばっちりしてきましたぜ! 柄に赤と青の紐が巻
かれた二振りの日本刀、確かにホロビタスターの財宝のようですぜ。文献を色々と調べて
みたら、ホロビタスターに文明が栄えていた頃の、とある名工がよく似た業物の刀を残し
たっつー記録があったわけで」
「財宝か」
「あ、でもそれほど刀自体に金銭的価値はないみたいですぜ、残念ながら。歴史を考察す
る材料にはなるかもしれない、てだけで」
「成程。その刀が発見された遺跡を調べれば、目ぼしい財宝が見つかるかもしれないとい
うわけか」
「ああっ! その可能性は高いですぜ、さっすが親分!」

 ドロッチェは、ビュートの得物が業物と見て取り、その由来をスピンに調べさせていた
のだった。スピンの報告は確実な内容とは言いがたいが、ドロッチェ団がターゲットとす
べき遺跡の姿が浮かび上がってきた。
 二振りの日本刀の持ち主であるビュートは、ホロビタスターの遺跡であの刀を見つけ、
得物として使っているというわけだ。人々の間を巡っていたり、裏市場に出回っていたと
いう噂がなかったのであれば、彼自身が遺跡で発見したと考えるのが自然だ。刀自体に価
値はなくとも、刀が発見された遺跡には同時代の遺物がいくらでも眠っているだろう。
 金になる。
 これまで接触してきた感覚からすると、ビュートのゼロに対する忠誠心はさほど高くな
い。ドロッチェと同等か……いや、それ未満かもしれない。ならば、ハイパーゾーン内部
に侵入する手段と交換ならば、彼が刀を手に入れた遺跡の情報も得られるだろう。
 ドクの好奇心を満たしつつ、ゼロに対する切り札を手にでき、さらには財宝に繋がる情
報も手に入る。ドロッチェにとっては悪い条件ではない。

 すっげ親分! さっすが親分! と騒ぐスピンを横目に、ドロッチェは内心ほくそ笑む。
 心の中の高揚感を押さえ込み、いつもと変わらぬ冷静な面で部下を見据えた。
「さて、そろそろ我々はフロリアから移動することにしよう。ここで異常が起こっている
ことを、デデデ大王やカービィ君達も流石に察知したようだからね」
「分かったぜ! ……ん? でもその機械はどーすんだ?」
 とスピンが指差したのは、例のエナジーコンバーター。
「コイツはこのまま置いていこう。エネルギーをゼロ様に送り続けてくれるのならそれで
よし。破壊されたとしても、私達に影響はない。……まぁ、ドクがそれを許してくれれば
の話だがね」
「もう、そのエナジーコンバーターは破棄してしまっても構わん。もっとコンパクトで高
性能な、エナジーコンバーター・改のアイデアがあるからのう。そのような不恰好な機械
など、むしろ破壊してもらって構わんぐらいじゃ」
「だそうだ。ドクの許可も下りたことだし、さあ、撤収準備だ。次は……そうだな、一先
ずはポップスターにでも向かおうか。ゼロ様はポップスターを掌握したいようだからね。
さあ、我々も暴れようではないか」
 ドロッチェが仰々しく手を広げると、三人の部下が鬨の声を上げた。

 そしてドロッチェ一行はフロリアにエナジーコンバーターのみを残し、ドク謹製の宇宙
船でポップスターに向かった。

-------------------------------------------------------------------------------
投稿日 : 2009/03/21(Sat) 00:37 
投稿者 : 百城葛葉  

ヘビーロブスターは、一人の青年を乗せつつ、レインボーリゾートをひた走る。
「…慌てすぎだよなぁ、俺ってばよ; わりぃなロブ;」
改造ヘビーロブスター・通称ロブの上に乗りながらスラッドは彼に謝った。

彼らがオレンジオーシャンを出発して、実は約1日経っていた。
理由はたいしたことではない。
…『突進』に使用するエネルギーが予想より多かった上に、スラッドが出発時にエネルギー残量を確認するのをミスったからである。

「まさか途中でエンストさせちまうとは; おかげでえらい時間食っちまったなぁ。」
そういってスラッドが前を見据えた瞬間、空に変化が起こった。
急に暗くなり、またすぐに明るくなったりくるくると明暗が入れ替わる。
不思議に思ったスラッドは空を見上げ、目を見張る。
…制御が取れなくなったかのように、月と太陽がめまぐるしく暴れまわっていたのだ。
「…これ…まさか、ブライトとシャインまでやられたのか!?」
Mr.ブライトとMr.シャイン。二人のどちらか、もしくは両方がやられない限りこんな『昼夜の混沌』は起こらない。
ひしひしとぴりぴりと、猶予のなさを肌で感じる。だが、スラッドは月陽2人の現在位置も、『誰を』相手にしているのかもわからない。
「…多分、殺られてまではいないはず。…なら、まずは場所のわかるほうを優先! ロブ、全速前しn」
スラッドが突進指示を出そうとしたところで、がくんっ!とロブの動きが止まる。
びっくりしてセンサーアイを見ると、注意を促すかのように赤く点滅している。
「…ああ、わりぃ。やっぱり気が急いてんな、俺。 …こいつらの気配に気付かねぇとは。」
スラッドはロブからひらりと降り、左腰にさした刀を左手で器用に抜き放ち、くるんと自分にあたらないように回転させて普通に持つ。
その周りには、ヒマワリのように周りに突起のついた2体を大将にすえた、ダークマターの集団が集まっていた。

******

その『影』は、次第に濃くなっていく闇の気配の中をひたすらに走っていた。
自身の力…『絵の実体化』を利用して走りやすくした…それでもがたがたとする道を、ローラースケートで全力で滑っていく。
…アイスクリームアイランド帰還の際に悪夢の調査を頼まれた、ペイントローラーその人である。
「悪夢…と言うと、やはりあそこしかありませんヨネ…;」
予想と検討そのものはついていた。しかし、隠れ家から距離的に離れている上に各地の戦場に巻き込まれないように移動していた結果、
デデデ城が見える地域まで来るのに今までの時間を要してしまったのだ。
(「早く戻らないと…アドレーヌもだけれども、クレヨンが心配ダヨ;」)
いまだに悪夢の中身を若干引きずりつつ、彼は出来る限り見付からないように走る。
デデデ城の惨状も見えたが、今はあそこに寄る勇気と必要はない。
襲撃した者たちは居ないだろうとも、他のダークマターが居る可能性があるのだ。
(「とりあえず夢の泉の様子を見て、何があるか確かめなイト…;」)
真剣に前を向きながら、ペイントローラーは足を速めた。

デデデ城に寄らなかったこと、それが彼にとって2つの意味での正解だったことに気付かずに…。

******

「…しんにゅう、しゃ。」
「ここは〜、通りぬけ不可能だよ〜」
目を細めながら見るダークマターが呟けば、ニヤケ目になったダークマターが楽しそうに告げる。
「…なんだ、てめぇらは。」
その様子を、スラッドはまったく面白くなさそうににらみ付けながら鋭く言い放つ。
「…ここに、はいち。」
「夢の泉に向かう〜愚か者が居たら〜、倒しちゃっていいって言われてるんだよ〜」
喋れる…上位のダークマター(正確にはコマンドダークマター)を2体も配置するとは、よほど重要に見てるのか、来る奴がいると踏んでいるのか。
「…オーライ、よーくわかったぜ。」
目は逸らさず、ため息をついて呆れたようにスラッドは言葉を綴る。
「この闇膨張の件、てめぇらタコ一族がしっかりがっちり絡んでやがるってことがな。」
「た、」
「タコ一族〜?」
突如出てきた名前に、コマンドマター2匹はぱちくりと瞬きする。ピンと来てないらしい。
「…だって、てめぇらの頭領ことゼロは、白い足なしタコだろ?」
もちろん、そんなわけがないのはスラッドも重々承知。…つまりは、挑発しているのである。
また、頭領=ゼロの可能性も考えた『カマかけ』でもある。
「こ〜の〜〜〜!!」
「…ゼロさま、ぶじょくするな!」
そんな意図にまったく気付いていないコマンドマター2匹は、挑発にもカマかけにもしっかりとはまったらしい。
「はっ、てめぇらの忠義や都合なんざ知ったことか! ロブ、全周囲火炎放射!!」
スラッドの声に応え、ロブが即座に動く。
両アームを前でなはく若干横目に伸ばし、ハサミを限界まで開放。そしてそのまま内部にあるノズルを露出させ、
方向転換用の噴射ジャンプ機能を利用し、前に後ろに横に、と縦横無尽に炎を吐き出し始めた。
予期しない攻撃行動に、小さいダークマターは避けるヒマと思考も無く炎に飲まれ、消滅していく。
驚愕し、それでも行動を起こそうと出来たのは、2匹のコマンドマターのみである。
…だが、彼らにもロブに注意を向けているヒマなど、なかった。
「余所見は厳禁だぜ、お二人さんよ。」
ロブの炎を避け、そのロブの行動を囮にし、スラッドは瞬間的にニヤケ目のコマンドマターの傍に駆け寄っていた。
注視していれば見えただろう動きだが、ロブに目が行った2匹には見えていなかった。
スラッドの左手に収まっている紅い柄の刀が、容赦無用とばかりににやけ目コマンドマターの身体を下から上へ通過し、一体目を両断させる。
「「なっ……!?」」
「俺を…『白椿』を舐めてんじゃねぇ!!」
その両断したコマンドマターへ消える前に蹴りを叩き込み、もう一人の伏し目コマンドマターに衝突させる。
距離が近かったのと唐突な事で避けれずにぶつかり、動きが一瞬だけ止まる。
遠心力を利用したスラッドの回転多段切りによって両方とも霧散するのには、その一瞬の隙だけで十二分だった。

チンッ、と鍔鳴りの音を立て、刀が鞘にしまわれる。
「…尋常じゃねぇな。」
周りに残った燃える匂いに包まれながら、泉の方を見てスラッドは呟く。
囲んでいたダークマターはあらかたロブの火炎放射に燃やし尽くされ、逃れたものも2体のコマンドマターの消滅を期に逃げ出している。
この状況が尋常ないなのではない。
「夢の泉がここまで近いのに、ボケ一族がこれだけ多い上に光が見えねぇ…。」
あえて、『ダークマター』とは呼びたくないらしい。それはともかく。
彼はロブにひらりと乗ると、エネルギー残量を確認する。 …まる半日充電に当ててた上に走行中も充電してたため、
火炎放射を多用した今の状態でも十分エネルギーは残っている。…昼夜が混乱しているので、これ以上充電するのは難しそうだが。
「ロブ、泉に急いで行くぜ!突進は使わなくていいが、何があろうと止まるな! 全部俺がなぎ払ってやる!」
その声にセンサーアイの青い点滅で応え、ロブは示された道を真っ直ぐ走り出した。

******

かつて、夢と希望を司り、安らかな夢を生み出す水と光に囲まれていたそこ…『夢の泉』は、もはや面影が所々にしか残っていなかった。
噴水まではまだ少しかかるものの、その惨状は走っていくスラッドの目にもはっきりと映っていた。
闇に乗っ取られたかのように暗くなっているだけではない。そのあちこちには、空間ごと歪まされて出来上がった『絵画』があった。
禍々しいほどまで変質させられた、かつての光の集う場所…その様子に、スラッドは苦虫を噛み潰した表情をしきりに浮かべていた。
「くそっ…ここまでやられてんのか…!  …けど、夢の力が無いのに、何であんなもんが…?」

それは、充電かねた休憩中の出来事。仮眠を取った彼にしか起こっていない状況。
一定ではない、悪夢の浸食。それはやはり、今この地に在る彼にも降りかかっていた。
…シンプルで、無音で、モノクロと後1色だけしかなく…それゆえに、彼にとって一番恐ろしい『悪夢』。

「…あんな『状態』には、絶対にさせねぇ…!!」

それは、『真紅』。それは、『灰色』。それは、『漆黒』。
音も無く、静かなそこに広がるのは…『向こう』と『こちら』、全部含めた…『仲間の全滅』。


ギキィッッ!!
ゴガンッ!
「ダッ!!」
突然ロブが急停止をし、思い出した夢に意識を向けていたスラッドは落ちる無様はしなかったもののまたもや顔面強打の状況に陥った。
しかも今度はロブの装甲。かなり痛い。
「いっつー;; どうしたよロブ…」
そこまで言って顔を上げた瞬間、スラッドはロブが『自分の判断で急停止した』理由を悟った。

目的地である、夢の泉の噴水。一番空間が歪み、黒く沈んだ世界。その噴水の上に…『それ』はいた。
うつろな目が時々飛び出すように動き、黒い星を方々に撒き散らす…目で見る悪夢のような闇の球体。

「なっ…! 何だよ、こいつ…!」
小さいアラーム音とセンサーアイの紅い点滅で持って危険を告げ、ロブはアームを広げて攻撃態勢に入る。
(『組み込んだ自律プログラム…こんなに精巧だったか?』)
ロブの反応に一瞬だけ戸惑うが、すぐに気を引き締めるとスラッドはひらりとロブから降り、左手で刀を抜き持って…右手を袖の中に入れる。
ジャラッ。
鎖が合わさるかのような小さなその音と共に袖から出した手には…白木ごしらえの柄を持った、黒く鋭く光る、小太刀。
「ダークマター…には見えっけど、その吐き出してる黒い星は…あの時の『あの野郎』か。」

それは以前、『あの方』が大将に助力した一番最初の物語。
夢の泉の流れを利用し、世界を悪夢で飲み込もうとした…ナイトメア!

「OK、とりあえず…最悪な状況であることと猶予がとんでもなく少ないのはよくわかった。」
そこまで呟くと、スラッドは刀を闇球に突き付けこう吼えた。
「ロブ、全力戦闘! 影響広がりきる前に、こいつを潰すぞ!!」

-------------------------------------------------------------------------------
投稿日 : 2009/03/22(Sun) 18:52 
投稿者 : tate   


「ルナちゃん! ルナちゃん、待ってよ! ボクも一緒に行く!! ……ワドルディ、君
はデデデのところに戻って」
「え……でも……」
「ボクはルナちゃんを連れて雲の隠れ家に戻るから、一足先に戻ってて。アクアリスであ
ったことを、デデデに早く教えてあげないといけないから」
「わ、わかったです!」
「ワープスターは、ワドルディが使って。それじゃまた後で!」
 カービィはルナが飛んでいったと思しき、デデデ城に向かって駆け出した。
 ピンク色の球体が小さくなり、そして見えなくなるまで見送ってから、バンダナワドル
ディはロロロとラララの方を振り返った。
「ええっと……ぼくは大王さまのところに戻りますが、ロロロさんとラララさんは」
「僕達はもう大丈夫、回復魔法で随分ラクになったよ。それにダークマターが襲ってきて
も、城の皆が手を貸してくれるから」
 ロロロが力強く頷いた。ロロロの手を握っていたラララも、小さく頷く。
「だからワドくんは、早く大王様の下へ行ってください。でもワープスターは……」
「……そう、なんですよね」
 カービィ達の乗ってきたワープスターは、お世辞にも着陸したとはいいがたい状態でプ
ププランドの大地に落ちた。それは、彼らが着地の衝撃で空に放り出された時から既に分
かっていたことだが。
 外装が剥げ落ち、黒い煙を立ち昇らせるワープスターは、どう考えても空を飛びそうに
は見えなかった。それでも一応、バンダナワドルディはコックピットに潜り込み、ワープ
スターの状態を確認する。幾つかボタンを押してみるが、ワープスターはうんともすんと
も言わない。
「やっぱりダメだー、どうしよう……」
「ま、まぁワープスターはそのまま置いていってくれて構わないよ? 僕らの方で回収し
て、保管しておくから」
 修理は出来ないから、落ち着いたら取りに来てね、とロロロは言い足した。
「はい、おねがいします。ではでは、ロロロさんとラララさんもどうかお気をつけて」
 ロロロとラララが見送る中、バンダナワドルディはぺこりと一度頭を下げると、クラウ
ディパークの方へ向かって、てくてくと歩き出した。

 *

 一人飛び出したルナを追って、カービィは必死で大地を駆けていた。
 彼の元を飛び立っていた少女の、あの思いつめた表情が、目に焼きついてしまってどう
しても振り払うことが出来ない。ロロロとラララを襲ったダークマターと、ルナの間には、
何かがあった、それはきっと間違いない。
 そして……ルナはヒトで、ダークマターは闇だ。
 カービィの友達には、ゼロと同族がいる。だがあの彼のような存在は、数多ある星の中
でも片手で数えられるほど稀有なものなのだという。
 その間に横たわるものが良好な感情であると考えるには、あまりに無理がありすぎる。

 ルナちゃん……無理はしないで!

 谷をホバリングで越え、体力の限り走りに走って。月と太陽が迷走し始めた大地におい
て、どれ程駆けたのかは分からなかったが、やがてカービィの目にデデデ城の影が小さく
映り始めたところで、カービィは立ち止まった。上がりきってしまった息を整えながら、
周囲の空を見上げた。
 明暗を繰り返す空には、人影らしきものはない。それどころか、空を舞う鳥の姿すら見
えない。雲だけがぼんやりと大地に影を作るばかりだ。

 地上で戦っているのかな?

 もう少しデデデ城に近づく。すると、深緑を抱く木々の間隙に絵の具で塗り潰されたデ
デデ城を窺うことが出来た。何が起こっているのかカービィにはわからなかったが、およ
そカービィが知るデデデ城の面影を全く留めていないそれに近づくのは、現状では危険だ
と思えた。

 まずは、周りの森を探そう。ルナちゃん、無事で居てね!

 カービィは口の中で、「よし!」と小さく呟くと木々が作る影の中に入っていった。

 *

 所も時も変わって、こちらはオレンジオーシャン。
 カプセルJのメンテナンスに付き添い、出かけたっきりになっているバル艦長達は一体
何をしているのかというと――オレンジ色の髪の少女と眼鏡の青年が席を立ち、暖簾をく
ぐるのを見送ったところだった。
「そうだ、ジャベリン。街で小耳に挟んだ噂なんだが、メタナイト様が要塞に出入りされ
ているらしいぞ」
 白米を口に運んでいたジャベリンナイトの手が、ぴたりと止まる。バル艦長も箸を止め、
トライデントナイトを見た。
「だが、要塞はあの通りの有様で、メタナイト様が直々に雲の隠れ家に来いとおっしゃっ
たのでは」
「ああ、俺もそうは思ったんだが、きっと何か事情があってメタナイト様は要塞に戻られ
たんだと思う。何でも要塞からは四六時中、物音……つか、騒音まがいの音が聞こえてく
るらしいし。……要塞に戻ってみないか?」
 しばしの沈黙の後、そうだなとジャベリンナイトは頷いた。
 恐る恐るバル艦長が口を開く。
「……私も、ご一緒させて頂いて宜しいでしょうか?」
 トライデントナイトが、はぁ? と間の抜けた声を上げた。
「当ったり前だろ。大体、雲の……あそこでメタナイト様には会ってるじゃないか。何を
今更」
「要塞に戻れば、メタナイト様や我々メタ・ナイツ以外の面子ともイヤでも顔を合わせる
ことになるが……艦長がそれを厭わないのなら、私は構わないと思います」
「そうですか。――私も、要塞に同行させて頂くことにします」
 バル艦長の決意に満ちた双眸に、二人のナイツは小さく頷いた。
「じゃ、まずは飯を片付けようぜ」
「カプセルJにもその旨を伝えてからでないとな」
 ばくばくと飯を書き込み始めた二人を見て、バル艦長は小さく微笑んだ。

 そしてホテルに戻ってみると――床の上に散らばった、何だかよくわからない金属塊が
三人を出迎えた。
「な……なな……何だこりゃー!!」
「あー……あの、これはどういうことでしょうか」
 口をパクパクさせて、わなわなと震えているナイツ二人と、呆然と佇むバルに向かって、
ソファの方から声が掛けられた。
『オオ、久シブリダナ。マダおれんじおーしゃんニ居タノカ』
 カプセルJの声はするが、そこには誰も居ない。そして女性技師は金属塊から伸びる
コードに接続された機械を、食い入るように見つめているばかり。
『ココダココ、電子頭脳ニ発声器ヲ繋イデオルノダ』
 ソファに近づくと、確かにそこにはスピーカーが置かれていて、その先には掌代の四角
い金属の箱が繋げられている。カプセルJの電子頭脳なのだろう。

 カプセルJ曰く、当初はメンテナンスだけで済ませるつもりでボディを調整してもらっ
ていたのだが、色々と話をしているうちにカプセルJも女技師もノリノリになってしまい、
気がついた時には完膚なきまでに分解されていたのだと。電子頭脳がフォーマットされな
ければ自己を喪失することもないから、これを機に、と徹底的なチューニングを受けるこ
とにしたのだという。

「それで時間が掛かっているのですね。後どれ程掛かりそうですか?」
 バル艦長が、女技師の背に問いを投げる。
「さぁ〜、どうでしょうかね。明日かもしれないし、一ヶ月後かもしれないし……」
 『一ヶ月後トハ……』とスピーカーから小さな呟きが聞こえてきた。が、バル艦長達は
聞こえなかった振りをすることにした。
「カプセルJ、俺達はオレンジオーシャンの要塞に戻る。もし、俺達がここに戻ってこな
かったら、アンタも要塞に来るといいぜ」
『要塞ニ……?』
 カプセルJも要塞が廃墟と化していることは目の当たりにした一人だから、トライデン
トナイトの言葉に違和感を覚えたようだった。だが、その言葉に問いを発することはなく、
『承知シタ』とだけ答えた。

-------------------------------------------------------------------------------



前へ リストへ  次へ