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小説の中へ [14]



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投稿日 : 2009/03/24(Tue) 17:18 
投稿者 : ヨツケン  


一点の光すら見えない闇の空間……其処をシャドーは歩いていた。
「誰か…居ないの…?」
見たことも無い闇の空間、其処に仲間も友達も居ない独りぼっちの状態は彼の心を折るには容
易かった…
「此処はお前の夢の中だ…誰も助けには来ない…」
「誰だ!!」
不意にシャドーの後ろから何者かの声が聞こえた。
「我輩だ…」
「ダーク…マインド!!」
シャドーが後ろを向くと其処には巨大な目玉と二つの鏡が浮いていた、同時にシャドーは
ソードをコピーして剣先をダークマインドに向けて構える。
「我輩と戦う気か?止めておけ……マスターを持たないお前が勝てる訳が無い」
「五月蝿い!!」
シャドーは叫ぶと同時にダークマインドに向かって剣を横に振るがダークマインドは其れ
を片方の鏡で受けてもう片方の鏡を横からシャドーに向けて飛ばす。
「くっ…」
もうひとつの鏡に気付い
たシャドーは身を翻すとその鏡を剣で叩き割る。 
「ほう…少しは出来る様だ…だが……」
ダークマインドが静かに自らの瞳に力を集める。
「コイツはどうだ!!リバースワールド!!」
ダークマインドの瞳が怪しく輝くと同時にシャドーの見ていた世界が反転する。
「なにコレ…身体が?」
「動き難かろう…今楽にしてやる」
そう言ってダークマインドが再び瞳に力を集める、さっきより多くの力を。
「深き絶望の淵に沈め…」
ダークマインドの瞳が強烈な光を放ち、同時にシャドーの真上に巨大な光の塊を落とした。
――うわあぁぁ…

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「シャドー…大丈夫か…」
そう言って黒いシルクハット
を被った魔導師がシャドーの寝ている部屋に入って来る。
「身体の傷はもう治ってるから後は起きるのを待つだけだねぇ…」
ウィズはシャドーを優しく撫でると頭のタオルを取り替える。
「うわぁ!!」
「うわ!!」
不意にシャドーが飛び起きる、同時にウィズも転ける。
「はあはあ…」
「シャドー…大丈夫かぁ?」
「ウィズ、ダークマインド
は!!」
シャドーがウィズに抱き付き、恐怖に怯えた顔で聞く
、いきなり抱き付かれたウィズはかなり驚いている。
「だ、ダークマインド?此処には居ないねぇ…」
「ゆめ…なんだ良かった……」
シャドーが安心したのか一つため息をしてウィズに此処は何処?と聞こうとした時。
「なんだ今の騒ぎは?」
そう言って二人の部屋にデデデ大王とフラービィが入って来た。

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投稿日 : 2009/03/26(Thu) 22:04 
投稿者 : 百城葛葉  


夢の泉にたどり着いたペイントローラーは、眼前に広がる光景にしばし唖然としていた。
以前、スターロッドを拾った際に暗く闇に沈んだのは把握していたが、それからまたいくつも…悪い方に様変わりしていたからだ。
全体的に重く沈んだ色合いの中に、ところどころ気まぐれで書かれたかのように『絵画』にされている部分、
そして、噴水の上に浮かぶ、黒い球体…。

ギャギィンッ!

その彼を現実に引き戻したのは、甲高い金属音だった。
黒い球体の向こう側から聞こえたそれにペイントローラーは音を立てないように移動し、
何が起こっているのかを確かめようとする。
「…誰か、戦ってイル?」
そこに見えたのは、赤の混ざった銀色の髪の青年。球体の吐き出す黒い星を辛くも避けたり、紅い刀と鎖のついた短い刀で弾いたりしている。
今の位置からは見えにくいが、球体の向こう側からも攻撃が飛んできているためもう一人いるのだろう。
(「彼はいっタイ・・・?」)
上にかろうじて見える目からして、この球体はダークマターの仲間だろう。その球体に攻撃を仕掛けているということは…味方になりうる人なのか?
そこまで考えた瞬間、かする度に苦悶の表情になる青年を見て傍と我に返る。
おそらく彼は、攻撃に対しての耐性が低い…!
「加勢しなけレバ…!」
ペイントローラーはそう呟くと、近場に『描ける』場所が無いかを探し…場を見つけた瞬間、極太クレヨンを取り出した。

******

スラッドは、正直焦っていた。
攻撃を仕掛けよう、そう思い立ってロブに指示して行動を起こしたのはよかったのだが、相手の攻撃に難があった。
…はっきり言ってしまえば、スラッドは属性系含めた『特殊な攻撃』に耐性を持っていないのだ。
『ナイトメア』の情報を『向こう』側で一応は聞いていたために「星弾は物理」とたかを括ることはなかったにしろ、
自分たちに向かってくる星が厄介なことには一向に変わりが無い。
先ほどから、刀で弾いた欠片や避けた端でかする度にあっさりと傷が増えていく。
「くそ、一回もこっち向いてねぇのに何でこうも正確に・・・っとぉ!」
半分叫ぶようにぼやきながら、頭を狙ってきた星をしゃがんでかわす。違和感や疑念は感じてはいるが、それを纏める余裕が一向に無い。
そう、敵の横から子機爆弾や火炎放射で応戦していた『相棒』の方に気を向ける余裕すらも無いほどに。

ズガァアンッ!!

衝突音…破裂音とも取れる轟音が響き、一気にスラッドの意識がそちらに向く。
彼の目に映ったのは…ショートらしき煙によって覆われて脚部しか見えない、ロブの姿。
「ロブッ! …クッ!」
飛来した星を避けつつ、スラッドはうめく。
機動力そのものはあるヘビーロブスターだが、いかんせん自分よりガタイが大きい。
小回りが利きにくい分打ち落とすぐらいしか回避方法が無いわけだが、どうやら回避し損ねたらしい。
ロブに駆け寄りたい衝動に駆られるが、自分に来る星の対処に手一杯でそれもままならない…と思考を回した瞬間。

足元に、星が衝突した。

「しまっ・・・!」
とっさに地面を蹴り、身体を浮かす。足元で砕けた瓦礫が跳んでくるが、『それぐらい』ならば星自身より被害は小さい。
当座の被害はそれでかわした。だが、その判断は誤りでもあった。
蓄積ダメージもあり、よろめいて着地する。その瞬間を狙われたかのように、黒い星がいくつもスラッドに向かっていく。
(「クッ…こんなところで…!」)
とっさに動けず、それでも被害を最小限にしようと腕を動かそうとした…次の瞬間、目の前に「何か広い物」が広がった。
ぼすぼすっと、柔らかい物に何かが…おそらく星弾があたる音がして、目の前に広がった物が消えていく。
一瞬驚いたスラッドだったが、すぐに体勢を立て直しその場から一度離れ、消えていくものを見定めようとする。
それは、大きな『雲』のようなものだった。ただ、普通のとは違う点としては…まるで『クレヨンでかかれた』様な現実味の無い雲。
広がる瞬間に見えた『雲が飛び込んできた』方向に視線だけを動かすと…そこには。
「君、大丈夫カイ!?」
球体から少し離れた、ロブのいた方とは対称の位置。愛用のクレヨンを持ち、地面に絵を描く体勢で自分に呼びかける人影があった。
「ペイント、ローラー…?」
意外な人物との対面に、ボツリとスラッドはその名を呼ぶ。が、すぐに気を引き締めると手で『大丈夫』と示しつつ星を回避、迎撃する方に集中する。
ペイントローラーも、自分やスラッドに飛んでくる星を迎え撃つかのように次々と物を描いては具現化させていく。
自分と描き手をかばう様に跳んでいく『絵』のおかげで比較的余裕が出来たのか、星を交わしつつスラッドは思考を回し始めた。
(「ペイントローラーは少数戦だと攻撃速度に間が出来る、よな。今もギリギリっぽいし。 俺は星の中突っ切ってってのが出来ないし…ロブは…。」)
そこまで考え、一度球体から離れてロブを見る。
ショートの煙が収まって先ほどよりは見えるが…攻撃を主に行うアームが、両方とも砕けたように大破している。
もし、電子頭脳にまで被害がいっていたら…。
「……っ! ロブ! 聞こえてたら『起きて』くれッ!!」
必死になりながら叫び呼ぶ。動いてほしいと願いながら。
その声に応えたロブは、消えていた見える側の電光体を青く点滅させ、動けることを示すのを兼ねるかのように球体から少しだけ後退する。
その様子に安堵しながら、スラッドは出来る限り気持ちを落ち着けて状況を飲み込む。
(「ロブは動けそうだが、あのアームじゃこれ以上の戦闘参加は無理だ。…ちぃっ、悔しいがここは…!」)
「ペイントローラー!!」
「エッ!?」
いきなり『見知らぬ』青年に名前を呼ばれて一瞬ペイントローラーは驚くが、目の前で絵と星が相殺したのを見てすぐに我に返る。
「短いだろうが時間を稼ぐ! 『目くらまし』用の絵を書いてくれ!」
「わ、わかッタ! 任せてクレ!」
その返事と共に地面に向き合ったペイントローラーを横目で確認し、スラッドは深呼吸をして『覚悟』を決める。
「黒夢野郎、そろそろ一旦ケリつけようぜ!!」
そう叫びながら、右手の小太刀を球体の適当な位置に向けて投げ放つ。
「ナッ! そんなことしタラ!」
「承知済み! てか絵に集中してろ!」
ペイントローラーの指摘どおり、大してダメージが通らなかった小太刀の攻撃に反応し、
球体から発せられる星が次々とスラッドに向かっていく。
既出な絵にいくつか相殺されるも、それでも飛来する無数の黒い星。
その危険な流星雨を、鎖で引き戻し『黒い何かを付けた』小太刀を構えたスラッドは目を閉じずに睨む。
(「極力当たらないように、じゃない…狙うのは」)
「そこだぁ!!」
肩口や頬などに避けていた頃よりも深く星を食らいながら投げたスラッドの小太刀は、
星の雨を縫うように突き進み…目の下あたりに達した瞬間。

パァアンッ!!

小さくはじけ、球体の動きが悶えるように怯む。
「い、今ノハ?」
「拾ったペイントローラーの『絵』爆弾。」
突然の破裂音に驚いて顔を上げたペイントローラーにあっさりとそういうとスラッドは頬の血をぬぐいながら叫ぶ。
「ロブ、来い!」
独特の機械音と共に走行してきたロブをよく見ると、見えなかった片側のセンサーアイのガラスが割れ、
その近くの装甲がベッコリとへこんでいる。
「…よく電子頭脳とか無事だったな、お前;」
その状態に改めてそう呟くと、スラッドは刀を仕舞ってひらりとロブに乗った。
とりあえずは大丈夫そうだ。
そしてペイントローラーの方を見ようとした瞬間、彼の足元から大小様々なものが浮かび上がり敵にまとわりついていく。
どうやら大きさより量をとったらしく、かなりの数の『絵』たちが球体を押し囲んでいく。
球体から星が発せられるが、すべてを消すにはまだ時間がかかりそうだ。
「よっしゃ。 ペイントローラー、乗れ! 分が悪い、一旦撤退するぜ!」
スラッドはそういって、ペイントローラーに向かって左手を差し出す。
右手はいまだ小太刀を持ったままだ。
「ああ、わかッタ!」
ペイントローラーがその手を掴んだ瞬間、
スラッドは傷の痛みに軽く顔をしかめながらペイントローラーをロブの上…自分の前に引き上げる。
「ロブ、出来る限り全速力で戦線離脱!」
片目だけの青い点滅と共に、ロブが出力を高め猛然と走り出す。
すぐさま追撃のように後ろからいくつかの星が飛来するが、
スラッドの投擲小太刀やペイントローラーの絵によってかすることすらせずに消滅する。

…球体がまとわりついたすべての絵を消滅させた時、その場にはその球体以外誰もいなくなっていた。

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投稿日 : 2009/03/27(Fri) 04:36 
投稿者 : tate   


 オレンジオーシャンの宿で一晩を過ごしたチナツは、携帯電話の呼び出し音で目が覚め
た。目覚ましなんて掛けたっけ? と思いつつ、ベッドの中で伸びをして身を起こした。
 枕のすぐ脇においてある携帯電話は、自分が平素使っているものとは全くデザインが異
なるもので、そういえばここはポップスターだったんだ、ということを思い出す。
 通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『……その声はチナツ殿かな? ビュート殿はいるかい?』
 ドロッチェからの通話だった。視線を右に移すと、毛布に包まるビュートの背中が見え
る。当然、彼は床の上に横になっていた。
 チナツは面倒になって、ビュートに向かって枕を投げた。枕に後頭部を強襲されたビュ
ートが、むくりと上半身を起こす。そして緩慢な動きで、サイドテーブルの上の眼鏡を手
にした。
「……何だ」
「電話、ドロッチェから」
 普段より少し不機嫌そうな面持ちのビュートに、チナツは電話を手渡した。

 電話口の人物が変わったのを確認すると、ビュートの声が眠たげだったを若干気にしつ
つ、ドロッチェはこんな言葉を囁いた。
「例の話、考えてくれたかな?」
『……こんな朝っぱらから、そんな話か』
「少々込み入った事情があってね、君の意向を確認しておく必要が出てきたのだよ。どう
かい? 君の持つ刀が眠っていた遺跡の情報とハイパーゾーンへの侵入手段の交換、とい
う話は。それほど悪い条件ではないと思うがね」
 そう鎌を掛けながらも、ドロッチェは剣士がこの取引に対して首を横に振ることはない
だろうと考えていた。ビュートから見たハイパーゾーンに侵入する術の価値が云々という
よりも、ビュートにとって、刀を得た遺跡の情報が価値を持っているようには思えなかっ
たからだ。
 ビュートの話す言葉にはホロビタスターの訛が混じっていることに、ドロッチェはすぐ
に気がついた。宝を求めて宇宙を飛び回っていれば、その程度の判別はつくようになる。
ゼロの手下として、故郷に貢献しているとはとても思えない行為……つまり、ポップスタ
ーの生き物達を眉一つ動かさずに薙ぎ払っている彼が、自らの源泉に繋がりうる情報を持
つ遺跡に対して、何らかの思いを持っているだろうか。ドロッチェの感触では、おそらく
持っていない。
 それに、マジルテに居たときから特にアンティークに興味を示している様子もなかった。
『……遺跡の情報ならくれてやる。それを確認したかったのか?』
「いやいや、結構。では本題に入ろうか。……ここから先はオフレコだが、ハイパーゾー
ンに侵入するためには、闇にぶつける膨大なエネルギーが必要になるのだ。それも、ゼロ
に悟られないように調達する必要がある」
 敢えて言葉にはしなかったが、ギャラクティック・ノヴァにハイパーゾーン内部に転送
するように願うことはできない。ギャラクティック・ノヴァが不穏な動きを見せた時点で、
おそらくゼロに破壊される。その程度のことなら、ビュートならわかるだろう。
『……ポップスターとその星系から、エナジーを接収するということか。だがスターロッ
ドもマジルテの宝剣も、私が破壊した。マジルテはともかく、スターロッドはエナジーの
源ではなかったか?』
「そう。だから、彼らがスターロッドを元に戻す助力が必要だとは思わないかい? 無論、
表立って動けば、我々が先に消されるかもしれないからね。飽くまでさりげなく」
『……つまり、今すぐ私に何かしろということだな』
「察しが良くて助かるよ。ポップスターに向かったダークマインドが、ちょっと不穏な動
きをみせていてね。デデデ城からグレープガーデンの方角へと移動しているのだよ」
『何かを襲撃しようとしていると?』
「そうだね。ダークマインドはかつて鏡の国を席巻したほどの闇だから、その力は大きい。
そんな者が意味もなく動くはずがない。ダークマインドはハイパーゾーンからポップスタ
ーに移動したようだから、ゼロに組するものだろう。これ以上、闇の勢力が強くなると、
都合が悪いとは思わないかな?」
『どこに向かえばいい?』
「座標は調査中だ、確定したら知らせるよ。それが済んだら、マジルテに来て貰えると幸
いだ」
 そこまで喋ると、ぷつんという音と共に通話が切れた。
 彼の目の前には操縦桿を握るドク。脇ではスピンがラウンドレーダー上に表示されるダ
ークマインドの座標を逐一読み上げている。
 彼らはドクの宇宙船で、ポップスターの上空に戻ってきていた。
「さてさて……どうなるかな」
 ドロッチェは小さく笑うと、携帯電話を懐に仕舞いこんだ。

 *

 こちらは雲の隠れ家。シャドーカービィの眠る部屋に、デデデ大王とフラービィがドタ
ドタとやって来たところだった。
「ああ、シャドーが目覚めたのだけど……デデデ大王は動いて大丈夫なのかな?」
 包帯でぐるぐる巻きにされ、半ばフラービィに支えられるかのようにして立つデデデ大
王の姿に、ウィズの双眸が僅かに細められた。
 不意に、地面が大きく揺れた。
「地震? クラッコが隠れ家を移動させ始めた……のかな?」
「違う!」
 焦った様子もなく、辺りを見回していたデデデ大王とフラービィを横目に、シャドーカ
ービィが叫んだ。
「この感じ……ダークマインドが来た!」

 雲の隠れ家の外では、ダークマインドが目の前に広がる雲海に向かって七色に変化する
星を無作為に打ち出していた。
「この辺りだと聞いていたが……おほ! ビンゴ〜!」
 無数のスターバレットの一つが雲に着弾すると、派手な爆音と共に、周囲とは異なった
より黒い色の煙を吐き出した。
「成程ね、雲の中にカモフラージュというわけか。これでは視覚に頼る者では発見も難し
かろう」
 尚も黒い煙を噴き上げる箇所に向かって、ダークマインドはスターバレットをさらに打
ち込み始めた。

 「私が様子を見てくるよ」とドアを開けたウィズは、同じく扉を開けようとしたクラッ
コJr.とぶつかった。クラッコJr.の勢いのほうが勝ったのか、ウィズが後方に大き
く飛ばされた。シルクハットが飛んでいきそうになり、白い手袋が慌ててそれを押さえた。
 クラッコJr.は混乱気味に、目玉をくるくるさせた。
「ふぎゃ! あう〜……って、ウィズさん!? 大丈夫ですか? ごめんなさい、あわわ
わ……」
「いや、私は大丈夫。そんなに慌ててどうしたのかい?」
「な、何か変な顎鼻が雲の隠れ家を襲っているって、父さんが大王様に伝えて来いって言
っていたので、報告に来ました!」
「顎鼻……やっぱりダークマインドが来たんだ」
 クラッコJr.の珍妙な言い回しに確信を得たのか、フラービィはシャドーカービィの
元に歩み寄った。
「マスターソードは持っている?」
 不意に鏡の国の最強武器の話を振られ、シャドーカービィは警戒の色を浮かべた。何故
このヒトは鏡の国の至宝のことを知っているのだろう、とでも言いたげな顔だ。
「真っ二つにされた、という話はウィズから聞いたけど」
 飽くまで、ウィズからの又聞きだということを、フラービィは強調した。無論、彼は知
識としてマスターの存在を知っているが、それを説明している余裕はない。
「はい、それならここに……」
 と、シャドーカービィが口の中から折れたマスターソードの柄側のみを取り出した。
「刀身の方は、二つに折られた際に消えてしまいました……」
「そうなんだ。これで戦うのは……流石に難しそうだね。今戦えそうなのは、デデデ……
は除外して、ソード、ブレイド、クラッコ、ウィズと僕ぐらいか。厳しいな……」
 「ワシを除外せんでもよいぞ」というデデデ大王の言葉を、フラービィは黙殺した。他
人が肩を貸さなければ動けないような怪我人は、流石に頭数には入れられない。
「クラッコJr.、君のお父さんとソードとブレイドを呼んできてくれな……」
 フラービィの言葉を遮るかのごとく、どかんという乾いた音と共に部屋が大きく揺れた。
突然、クラッコJr.の背後の壁が崩れたのだ。
 そして出来た穴からは、白い雲と青い空と共に、側頭から大きな二本の角を生やし、怒
りを表しているかのような仮面と、しゃくれあがった顎が妙に印象的な大男の姿が見えた。
その手には、何故かニューデデデハンマー・改(造途中)が握られていた。
「きゃー! 何か、キターーーーー!!」
 クラッコJr.が、慌ててデデデ大王の背に隠れる。
「キター! じゃない。直に怪我人を避難させるんだ。その足で三人を呼んで来い。メタ
ナイトの奴も探してくるんだ。行け!」
「はははは、はい!!」
 デデデ大王が、彼の背中に隠れていたクラッコJr.を一発ひっぱたいた。それで喝を
入れられたのか、クラッコJr.はダークマインドの目の前を全速力で飛び抜けていった。
「その慌て振りからするに、私が何者なのか既に把握しているようだな。……ふ、鏡の国
の住人も居れば、それも当然か」
 大男……ダークマインドが口を開いた。低く威圧感のある声だ。ウィズが咄嗟にシャド
ーカービィを自身の影に隠す。
 ダークマインドは、持っていたニューデデデハンマーを、フラービィ達の前に投げてよ
こした。
「フン。ワシの得物をわざわざ持ってきてくれるとはな、ご苦労なことだ」
 デデデ大王はフラービィの肩を離し、ゆっくりと歩を進めると、ニューデデデハンマー
の柄を握り締めた。ダークマインドの仮面に覆われていない唇の両端が、きゅうっと釣り
上がる。
「ダメだよ、デデデ! その怪我で戦うなんて無理だ」
「そうです! ボクがっ……くぅぅ……」
 折れたマスターソードを手に、シャドーカービィがベッドから飛び降りる。だがその衝
撃が傷に響いたのか、両手を床についた。折れた剣を杖代わりに、シャドーカービィはよ
ろよろと立ち上がったが、彼はまともに動けまい。
 ウィズとフラービィ二人で、クラッコ達が応援に来てくれるまで凌ぐしかない。
「フラービィよ、奴のことはわかるか?」
「ん……一応。マントの奥に本体があるから、そこを攻撃できればいいけど。周囲の鏡の
衝撃も間接的に伝わったはずだよ。星型のエネルギー弾を打ち出して攻撃してくるけど…
…」
 カービィなら星型弾がコピーできるけどね、という言葉は飲み込んだ。把握すべき情報
量は少ないに越したことはない。
「でも……少し待って。僕が時間を稼ぐから」
 フラービィはデデデ大王を制すると、ダークマインドと距離をつめた。今の彼は、バッ
クパックを持っていない。自室に中身を広げたままだ。もし、スターバレットが飛んでき
たら? 当然彼の身体能力では、最初の一撃はかわせても、二撃目以降は無理だ。でもニ
ューデデデハンマーをわざわざ持ってきたのだから、藪から棒に攻撃はしてこないはずだ。
「ダークマインド! さっきお前は、僕達がお前のことを知っているから慌てていると言
ったな。でもそれは違う」
 ダークマインドの視線が、フラービィに向いた。
「面白いことを言う、どういうことだ」
「お前はカービィに倒され、消滅した。それが前触れもなく復活したことが、多少の驚愕
に値するに過ぎない」
 フラービィは、敢えて断定口調で言葉を紡ぐ。かもしれない、はずだった、という弱気
では相手に付け入る隙を与えるだけだ。
「多少? そのようには見えんがな。第一、お前達鏡の国の住人が切り札とするマスター
ソードは、破壊された」
 ダークマインドの視線がシャドーカービィとウィズを一瞥し、再びフラービィに戻って
きた。フラービィは怯むことなく、言葉を続ける。
「お前を消滅させることぐらい、マスターソードがなくても十分可能だ。それに、今のお
前は、以前鏡の国を支配しようとしたとき程の力を持っていない」
 推測だ、根拠があるわけではない。
 ただ、不完全だったニューデデデハンマーの一撃でドロシアが容易く撤退したこと、復
活したというダークマインドがマスターソードを破壊しただけに留まっていることを鑑み
ると、きっと100%の力は得ていないのだろう。
 それに、必ずしも正しいことを言う必要はない。間違い探しをしているわけではないの
だから。
「そ、そうだ……その通りだよ、ダークマインド。キミが本当に以前と同じなら、ボクが
あそこまで戦えるはずがないもの」
 シャドーカービィの言葉に、仮面の間隙から見えるダークマインドの双眸が細められる。
仇敵の存在を忌々しい、とでも思っているのだろうか。
 でも、シャドーカービィの言葉で少しフラービィには視界が開けてきた。

 ダークマインドは、やはり以前よりも弱体している。
 ウィズに弾幕張りと攪乱を担当してもらい、デデデには本体を攻撃してもらう。デデデ
には負担を掛けてしまうことになるけど……攻撃パターンは自分がわかるから、多少の負
担は軽減できるはず。後は、外部からイレギュラーな干渉があるのを期待する……か。

 通路の向こうから、一閃の稲妻が飛んできた。ダークマインドはミラーを回転させ、そ
の攻撃を弾き飛ばす。クラッコを先頭に、ブレイドナイトとソードナイトが走ってくる。
ダークマインドが悠然と腕を組んだ。
「ほう、援軍か。面白い」
「さあ、ワドルドゥ達よ! 大王様を助けるのだ」
 クラッコの雲の中から、ワドルドゥが一体、また一体、次々に飛び出してくる。赤い体
が、大男に向かって果敢に突撃を開始した。


 雲の隠れ家より一マイルほど離れた上空で、雲に紛れてワムバムジュエルが浮かんでい
る。その掌の上には、チナツ、ビュートに黒丸の姿。
 瞑目していたチナツの双眸が、ゆっくりと開かれる。はしばみ色の瞳が淡い燐光で縁取
られている。視力を一時的に増強させるエンハンスドポーションの影響だ。チナツはゆっ
くりと得物を構え、弓を引く。キリキリとしなる弓と彼女の右手が、徐々に黄金色に輝く
三本の矢を形作っていく。
 大きく吸った息を吐き切ったところで、チナツは矢を放った。
 三本の矢が一つの閃光となり、大気を貫いていく。そして光は見えなくなった。
「上手くいったか?」
 ビュートは、光の消えた方向を凝視するチナツへ問い掛けた。
「……大丈夫、三本とも当たった。でも、どれぐらい効果が持つかはわからないわよ。闇
の力を相殺させるといっても、所詮はアタシが考えた光のイメージだし、ドロッチェとド
ロシアが持つ以上の力は出ないんだから。アンタが乗り込んで斬った方が、断然確実だと
思うけど?」
 灰白の瞳がチナツを映し出す。
「出来るのならやっている。さて、次はマジルテだ」
 ワムバムジュエルの姿が、灰色の雲の向こうに消えた。


 クラッコが呼び出した沢山のワドルドゥが、ダークマインドの周囲に転がっている。そ
の向こうには、床の上で苦しげに目を瞬かせるクラッコと、血を滴らせながら必死に立ち
上がろうとするブレイドナイトとソードナイトの姿が見える。だが彼らにはもはや、ダー
クマインドに攻撃を仕掛ける力は残ってはいないようだ。
 対するダークマインドは、マントに多少の焦げ目は見えるが、その本体にダメージを追
ったようには見られない。ブレイドナイトとソードナイトが万全の状態だったら、また結
果も違っただろうが。
「まるで児戯だな」
 ダークマインドがフラービィ達に向き直った。緊張で背中が強張る。
 が。
 不意に目の前のダークマインドが閃光に包まれたかと思ったら、急にもがき始めた。
 デデデ大王が驚愕の呟きを洩らす。
「な、何だ。何が起こった……」
「ぐ……ぐあああああああああ!!」
 ダークマインドの両手が、自らの顔を、体を掻き毟る。闇の帳に包まれた最奥にも光は
入り込み、漆黒の衣の力を弱めていく。
 先程まではフラービィにも感じられるほどであった負の波動が、急激に小さくなった。
何が起こった? ……でも、これで僅かながらにも勝機が出てきた。
「おのれ……闇の力を光の力で相殺するとは……許さぬぞ!」
 ダークマインドが吠えた。

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投稿日 : 2009/03/27(Fri) 22:38 
投稿者 : 百城葛葉  


「くそっ、絶対厄介なものなんだから倒しておきたかったのに…!」
既に遠く見えなくなった泉の方向を見ながら、走行中のロブの上でスラッドは心底悔しそうにぼやいた。
その真剣みを帯びた表情に、ペイントローラーは彼が敵側でないことを確信して安心する。
そして今だ血を流す彼の頬の傷見て、大き目の絆創膏を…ロブの上に描いて具現化させる。
「さて…ちょっと聞いてもいいカイ?」
絆創膏を差し出しながら、ペイントローラーはスラッドに呼びかける。
「あ? …っとわりぃ。なんだ?」
スラッドは一瞬険しい表情のまま向いたが、すぐさま眉間のしわを解いて絆創膏を受け取り、頬の血をぬぐって絆創膏を貼る。
「君は何者で、どうしてあそこにいたんダイ? 敵じゃないのはさっきまのでわかったけど…どうして私の名前を知ってイル?」
「あ〜、そこか。…そういや自己紹介してねぇよな。俺の名前はスラッド、このポップスターをあちこち旅してまわってる身なんだよ。
最近妙に闇のはびこり多いから、場所知ってるところから調べてみようと思って。
…旅している間の噂やらなんやらで名が通ってる人達のことはあらかた知ってるぜ? デデデ大王とか、戦う絵描きさんとか。」
そういって、最後当たりでペイントローラーを見てにっと笑う。
……半分ほどが『嘘』である。『名が通っている人を知っている』、『闇のはびこりの原因を知っている場所から探る』あたりは本当だが。
だが、本来人がいい上にすらっと揺ぎなく話すスラッドにペイントローラーはすっかり信じてしまったらしく、
『戦う絵描き』の辺りに「そんなに戦ってはいないけドネ」と苦笑を返す割に警戒をしていない。
「ヘビーロブスターに乗っているし、メタナイトとしりあ…あ、ちょっと止まってクレ!」
「おうわっ!? と、ロブ、ストップ!」
急に声を上げたペイントローラーに驚きつつ、スラッドはロブを停止させる。
「どうしたんだよ、いきなり。」
「…あれを見てクレ。」
ペイントローラーが示した方向をスラッドが見ると…そこには、『絵画』にされてゆがみまくったデデデ城が見えた。
「…あ; 逃げるのに意識いってて方向示してなかったか; またすげぇ変質のし様で…」
「私が言いたいのはそこだけじゃないンダ。 城の様子ガ…。」
その言葉に、スラッドは改めて城を…そして歪められたその周りの森を見る。
「…元に、戻ってきてる?」
「いったい、どういう事なんだロウ?」
徐々に、『本来』の色彩を取り戻していく周りの様子に、二人して首をかしげる。
「……この歪められ方、多分なんかの魔法じゃないかと思う。そういうのが解ける条件ってぇと?」
「術者が自分から解くか…術を維持できなくなった時ダ!」
「おそらく。多分、デデデ城を塗り替えた敵が倒されたかなんかしたんだろ。じゃなきゃこんなゆっくr」
瞬間、言葉をとぎらせてバッとスラッドは上空、デデデ城のうえ辺りを険しい表情で見る。ペイントローラーも視線を追うが、何も見当たらない。
「スラッド、どうしたんダイ?」
「……なんかと誰かが、バトッてる。 ロブ、デデデ城方向に出来る限り全速前進!」
「ナッ!?」
急にロブが走り出したこととその方向に、ペイントローラーは驚いてスラッドのほうを見る。
当のスラッドは相変わらずデデデ城の上の方を真剣に睨んだままでいる。
「敵がいるかもしれナイ! 今の君の状態で行くのは危険ダ!」
「割と俺は目がいいほうだから見えるんだ! 女の子がボケ一族の奴っぽいのと戦ってんのに、見過ごしてられっか!」
この距離でそれが見えている場合『割と』とは言えない。
そんなツッコミすら思いつかず、ペイントローラーはスラッドの言葉に驚いて再度視線を向ける。
だんだん近づいてくるデデデ城上空、ようやくペイントローラーにも見えてきたそこにあったのは、白い服の人影と、黒い剣を持つ人影。
「…あ、あの子はまサカ…!」
ペイントローラーがそう呟いたまさにその時、黒い影が動いて白い影に近寄り、一瞬白い影が斬られたと思った瞬間…

白い人影が…少女が落ちた。

「アッ!!」
思わすペイントローラーが声を上げる。スラッドも、焦りの表情を濃くする。
ロブが頑張っているおかげか、かなりのスピードで近づいていく…が。
(「若干…距離足りねぇか!」)
「クッ!!」
目算でそう判断すると、スラッドは猛スピードで走るロブの上から『跳んだ』。
「スラッド!?」
唐突な行動にペイントローラーは呼びかけるが、ロブの進行ベクトルに自身の跳躍力を乗せたスラッドは既にかなり斜め上を行っている。
(「とど…けぇ!!」)
声に出さず、そう祈りながら、スラッドは手を伸ばす。その手は……木々の茂りに少女が入る瞬間、届いた。
草木で彼女が肌を切らないよう抱えた両腕を引き寄せ、見当たった中で一番太い枝に着地する。
気配を消し、殺気を消し、顔と視線だけで彼女の近くにいた黒い奴の様子を伺う。
…影は、見た瞬間だけこちらを向いていたが、すぐに余所を向くとあっさりと飛び去っていった。
「…つくづく俺も運が良い。 あの野郎、俺に気付かずに行っちまったか。」
安堵の息を吐いて、スラッドはそう呟いた。

身体に走る痛みで、魔法に集中できない。せっかく、仇を見つけれたのに…
ルナは、激痛と死の覚悟でぎゅっと目を瞑る。
だが…予想した衝撃は来ず、代わりに感じたのは軽い衝撃と、暖かさ。
「つくづく俺も運が良い。 あの野郎、俺に気付かずにいっちまったか。」
聞いたことの無い声が聞こえ、ルナは瞑っていた目をそっと開いてみた。
そこに見えたのは、まぶしいぐらいの銀色。…赤い線が混じった、白銀の光。
瞑っていたためぼやけていた視界が晴れていく中で、それが『誰か』の髪であると気づく。
と、そこでその頭が振り向き、銀色の瞳を自分に向けた。
「お? 起きてたのか。嬢ちゃん、大丈夫か?」
真顔で言ったその青年の顔がとてもかっこよく見えて、しばらくルナは痛みも忘れて呆然としていた。
「スラッド〜!」
「お。追いついてきたな。」
下から聞こえた声に、青年はルナを抱えたまま木から飛び降りる。スタンッと軽い音がすると同時に、近くに機械音が近寄ってくる。
「かなり無茶をするんだね、君ハ;」
「緊急事態の不可抗力、と。 そういや、なんか見知った子っぽい反応だったけど?」
「うん、隠れ家にいたときに見たことがある子ダヨ。確か…ルナって名前だったカナ。カービィと一緒に行ったはずなんだケド…」
その声の持ち主の姿が…カービィ達と会ったあの隠れ家で見た姿を見た瞬間、ルナは傍と自分の現状に気付いた。
(「私…抱きかかえられている?」)
先ほどから暖かいのも、声や銀の髪が近いのも、青年の腕に抱えられているからで…。
そこまで理解した辺りで、ルナは急にものすごく恥ずかしくなってきた。顔が一気に火照ってきて、外見からわかるほどに真っ赤になる。
青年がそれに気づいて視線を向けて声をかけようとした瞬間。
「きゃああっ!」
恥ずかしさのあまり、ルナは真っ赤のまま短い悲鳴を上げていた。

「うわっ!?」
いきなり悲鳴を上げられ、スラッドはびっくりする。急に顔が紅くなってきていたからどうしたのかと声をかけようとしたまさにその瞬間だったのでなおさらだ。
「あ、その、えっ、ご、ごめんなさいっ! 」
「いや、謝らなくていいんだけど…とりあえず落ち着け;」
真っ赤になって混乱しているルナに、スラッドは苦笑して言う。
「あの黒い野郎に斬られたッぽく見えたんだが、怪我とか無いか?」
「え? あ……っ!」
問われて動こうとすれば、いまだ残っている痛みが走って顔をしかめる。
「外傷は無そうだが、痛いってことは…まだ安静にしてたほう良さそうだな。」
「…は、はい。」
いまだ真っ赤になりながら俯くルナを一瞥してから、スラッドは抱えたままロブに飛び乗る。
と、その時だった。
「ルナちゃん!? 大丈夫!?」
ガサリ、と茂みが揺れたかと思うと、そんな素っ頓狂な声を上げながら転がり出てきたピンク色の丸い球体。
「カービィ?」「カー君?」
その見知った姿に、ペイントローラーとルナが同時に声を上げる。
「あれ、ペイントローラー? 何でここにいるの? それにルナちゃん、さっきの悲鳴はいったい…と言うかその人は誰?」
どうやら、先ほどの短い悲鳴が聞こえてそれを頼りに駆けつけてきたらしい。
しどろもどろに今の状況の説明しようとするルナ、きょとんとして説明を受けるカービィ、それを微笑ましい苦笑で見守るペイントローラー。
「…何なんだろう、この有名者集合率;」
この状態を見てちょっと遠い目をしてのスラッドの呟きは、一番近いルナが聞ける状態じゃないためロブにしか聞こえてなかった。

******

とりあえず『デデデ城の近くは留まると危険』と言うペイントローラーの意見もあって、一向はロブに乗って森を抜け、『隠れ家』の座標まで行くことになった。
ペイントローラーはアイスクリームアイランドに帰る用事があるのだが、方向的には似たようなものなので、座標につくまで同行する形になっている。
「へ〜。つまりカービィたちはちょい前まで宇宙に行ってたのか。」
カービィやペイントローラーの話を聞いて、スラッドは感嘆の声を上げる。
「うん。アクアリスの夢の泉は開いたから、ドロッチェの襲撃も含めて一旦報告しに帰ってきたんだけど
…ワープスター壊れちゃった上にルナちゃんがいきなりどこか行っちゃって。 
そういえば、なんでペイントローラー達はあそこにいたの?」
そう切り返すカービィに、まずペイントローラーが口を開いた。
「私は大王様に『悪夢』の調査をするよう頼まれたんダヨ。…あの後、まちまちだけれど皆が悪夢を見始めテネ。」
「ほへぇ、そうなんだぁ。」
「俺はさっき自己紹介したとおり旅の途中でさ、異変感じて…場所知ってる夢の泉を調べようと思ったんだ。
そしたら妙なのがいて苦戦してたんだが、ペイントローラーに助けてもらってさ。」
「時間稼いでもらったし、おあいこだと思うけドネ。」
そういってペイントローラーは苦笑し、スラッドも「それもそうかもな」苦笑を返す。
「で、これからどうするの?」
「そうだなぁ。結局俺ら双方とも報告内容持ちだろ?一旦その隠れ家ってのに行った方がいいとおも「あの…」…ん?」
言葉の途中でか細い声が聞こえ、スラッドはその声の持ち主…ルナの方を見る。
「…もう大丈夫なので、そろそろ下ろしてもらえませんか…?」
顔がいまだ真っ赤なルナの声は、今にも消えそうなほどにか細い。

さて、ここであえて描写していなかった4人のロブ上配置を示しておこう。
スラッドはロブ上前方。ペイントローラーはロブ上後方。サイズ的に、どうやら2人乗りが限界らしい。重さに制限はなさそうだが。
カービィはスラッドの頭の上。重たそうに見えてそうでもないのはやっぱり風船体質だからなのだろうか。
そして、ルナは…
スラッドのコートを羽織らせてもらった状態で、改めてスラッドに横抱きにされていた。俗に言う「お姫様抱っこ」である。

裂けたローブに見かねたスラッドが、鎖刀を外して「血なまぐさいけど勘弁な;」と言ってコートを羽織らせてくれたのだが、ルナにとっては血の匂いどころではない。
他人と呼べる男の人とここまで近く接した経験が無いルナには刺激が強いらしく、抱えられている間ずっと恥ずかしそうに真っ赤なままなのだ。

「けど、まだ痛いんじゃねぇ? ペイントローラーに走らせるわけにもいかねぇし、座標ついて落ち着くまでこのまま、な。」
「え?;」
結局、その言葉通り座標につくまでずっとお姫様抱っこのままで、ルナは今までで一番疲れたんじゃないかと思うほど気疲れを起こしていた。


「うん、大体この当たりのはずダヨ。」
ロブの片目から投影された地図を見て、ペイントローラーが頷く。
スラッドは頷くと、ひらりとロブから降りてルナをそっと下ろす。ようやく下ろされたルナは痛みも引いたらしく、少しよろけたが立ち上がった。
「…で、カービィいつまで乗っかってんだよ;」
ついでに頭の上のカービィももにっと掴んで下におろす。
「さてルナちゃん、着替えって持ってる?」
「え?」
「いや、いつまでも破れたローブや俺の血なまぐさいコートじゃあれだろ? 着替えがあるんなら着替えておいで。その間コート貸すからよ。」
その言葉で、ルナはようやく落ち着いて上半身半裸(鎖帷子があるから)のスラッドの身体を見て気付いた。
スラッドは、そのあちこちに新旧含めた傷を数多く持っていたのだ。特に真新しいのは生傷と呼んで相応しいほどで、いまだ血が滲んでいる。
「あ、あの、怪我…。」
「ん? あ〜、大丈夫だいじょうぶ。もう血は止まりかけてっし、こんなの慣れてるからよ。」
そういってスラッドは笑うが、ルナは心配そうな顔をしてその傷に手を当てる。
「ル、ルナちゃん?」
「……。」
驚いたスラッドを余所に、ルナは静かに呪文を唱える。するとスラッドの身体が光に包まれ、傷が見る見るうちにふさがっていく。
「…こいつは…。」
「へへっ、ルナちゃんは回復魔法使えるんだよ♪」
傷の様子を見て目を見開くスラッドに、嬉しそうな声でカービィが説明する。古い傷はともかく、球体のと戦いでついた裂傷はすべて塞がったようだった。
「…すげぇ。」
「…あ、えと、き、着替えてきますね!」
スラッドの様子に安堵の笑みを浮かべていたルナだが、傍と気づくとまた真っ赤になって少し離れた位置に行ってしまった。それを見送って、スラッドは苦笑する。
「純情だなぁ…。 と、ペイントローラー、工具って描けるか?」
「描けると思うけど…どうしてダイ?」
「この休憩時間使って、応急でもロブの修理したいんだ。 書く場所ロブなり何なり使っていいからよ。」
「ああ、なるホド。じゃあ・・・」
と、ロブの平たい部分にスパナを描こうとした、その瞬間。

ズ・・・・ンッ

少し遠くから、地響きのような音が響いた。しかし、地面が揺れた様子は無い。
「…なんだ?」
「なんだろうね、この音。」
カービィとスラッドはお互い首を傾げる。
「……上ダ!」
2、3度続けて響いてきた音に、ようやくペイントローラーが出どころを突き止める。
「上? …ちょっと待て、確か隠れ家って…!」
「雲の上、この真上だよ!」
「まさか、襲撃されてイル…!?」
音が聞こえる範囲にいたのか、それとも闇を感知したのか。ルナも慌てて着替えていた場所から走ってきた…が、その姿を見て一瞬スラッドの思考が固まった。
「…ルナちゃん、それ何;」
「え? へ、変ですか? 可愛いと思うんですけれど…。」
ルナの格好は、フリルやアクセントのリボンがあちらこちらに使われ、背中側の腰に大きなリボンがついた、ピンクのワンピースだった。
「…いや、気に入ってるんならいいんだけどよ;」
「大丈夫、可愛いよルナちゃん♪」
「そう? ありがとうカー君♪」
にっこり笑ってそう誉めるカービィに、ルナもにっこりと微笑を返す。
(「…正直、お前のその純粋さが羨ましいぜ、カービィ;」)
「というか、ほのぼのとしている暇はないんだけれドネ;」
若干遠い目をしだしたスラッドを含め、その場全員にペイントローラーはツッコミを入れる。それで傍と我に返ったスラッドは、軽く咳をすると気持ちを整えた。
「とりあえず、上で…隠れ家で何かが起こってる。 けど、どうやってそこまで行く?」
「あ、私が使える魔法の中に、飛翔の魔法がありますよ。 …あ、でもロブ君はちょっと重いかも…。」
申し訳なさそうにルナはロブを見る。しかし、ロブは無事な方のセンサーアイを青く点滅させ、しゃがみこんだ。
「え?」
「…自律プログラム、なんか精巧な方に進化してるみたいでよ。多分「自分は置いて皆が行ってくれば良い」っていいたいんだと思う。」
スラッドの言葉を肯定するかのように一度青く光り、その後スイッチを切ったのかセンサーアイは光を灯さなくなった。
「では、とりあえず私たちだけで行きまスカ?」
「だな。…あ、ペイントローラー、充電用のチビ太陽描いてってくれるか? 昼夜不順だから充電しづらくて;」
「わかっタヨ。」

…そんなこんなで出来る限りの準備をし、一向はルナの飛翔魔法によって雲の上…隠れ家へと向かった。

******
雲の上に到着した一行は、隠れ家の惨状に一瞬目を奪われた。
「こいつは…!」
「ひどい…。」
「何てことだ、ここも襲撃されるトハ…!」
技を撃ち込まれたらしく、あちこちから黒い煙が立ち上り、破片や雲の切れ端が飛び散っている
「…フラービィ君や、デデデ達は!?」
カービィがそういった瞬間、スラッドとルナが同時にある方向を向き、はっきりと言いながら走り出す。
「「あっちだ(です)!」」
「え? あ、まってよ!!」
走り出した二人を、カービィとペイントローラーは慌てて追いかけていく。
「どうしてわかるんダイ!?」
「私は闇狩りですから、闇の気配がわかるんです! あちらの方から強い闇の感じがして…!」
「俺は戦いの気配を感じた。…いやな予感もな。こういう時のこれは、嫌なほどよく当たる!」
そういって、スラッドはさらに速度を上げる。元々個人の素早さが高いスラッドの本気のスピードに、だんだん3人は遅れをとっていく。
「くっ…カービィ、これをコピーするンダ!」
「え!?」
ペイントローラーは拾っておいた瓦礫に車を描くと、具現化させてカービィに放る。
とっさに言われたカービィは驚きながらそれを飲み込み…『ホイール』能力状態になる。
「それならスラッドに追いつけるし、敵がいてもなぎはらえるはズダ。スラッド結構無茶するみたいだから、一人にさせちゃいけナイ!」
「あ、そっか! うん、わかった!」
元気よく返事をすると、カービィはすぐさまスピン走行に入り、前方を走っていたスラッドに追いつく。
(「やっぱカービィって便利そうだよな、その体質。」)
そう思いながら手で『行くぞ』と合図をし、スラッドはスピードを緩めず走っていく。カービィもそれを追従するように、スピンの回転数を上げてついていく。
そして、突き当りの部屋が見えてきたあたりで…見えた光景に、スラッドの思考は一瞬だけ固まった。

床に伏した状態になっているクラッコ。
かろうじて立ち上がっているものの、血だらけなブレイドナイトとソードナイト。
あちこち破壊された部屋の様子。
そして…白い包帯で覆われた、大将。

悪夢がフラッシュバックする。
それは、自分が起こって欲しくないことの象徴。
そして…『過去に味わった絶望』の再来。

無意識に、スラッドはさらに速度を上げる。カービィもスラッドの速度と…先の部屋の状況に気付いて、自身の最高スピードまで持っていく。
部屋が近づくにつれ、元凶がなんなのかがはっきり見えてくる。そこにいたのは…
(『ダーク…マインド…!!』)
かつて、鏡の世界から表の世界をのっとろうとした、鏡の中の闇の一族。
…一度は『あの方』を閉じ込めたこともあり、スラッドは直接あったことがあるゆえに、一気に感情が高ぶる。

「おのれ……闇の力を光の力で相殺するとは……許さぬぞ!」
 ダークマインドが吠える。その声が、その言葉が、最後の一押しになった。

「許さねぇのはこっちの方だ、このしゃくれアホがぁ!!!」
負けず劣らずの叫びとして、感情を全部ぶちまける咆哮として、スラッドは大きく吼える。
その声に全員が振り向く…より前に、スラッドは一番力を入れて踏み込み、跳躍する。
カービィも、敵を見定めてスピン最高速度のままジャンプする。

スラッドの全力のとび蹴りが、カービィの最高威力のスピンアタックが、
ダークマインドのしゃくれた顎に炸裂した。
光の相殺によって弱っていたのもあったダークマインドは、転びはしないものの無様に後退する。
蹴りつけて再度宙に舞ったスラッドは、くるんと宙返りをして…デデデ大王やフラービィをかばうようにスタンッと降り立つ。
そしてすぐさまダークマインドの方を向きながら立ち上がり、スパンッ!とコートを払って整える。
カービィはぽてっ、と着地するとすぐさまデデデ大王達の方に向いて駆け寄った。
「デデデ! フラービィ君! 皆、大丈夫!?」
「大将…よかった、くたばっちゃいねぇようだな。」
スラッドはその様子すら見ず、ダークマインドを見据えながら聞こえるように呟く。
「カービィ!!」
「お前、戻ってきとったのか…。それに、そいつはいったい?」
デデデ大王の視線はスラッドに向くが、スラッドは振り返りもしない。
「なっ、こレハ…!」
「皆さん、大丈夫ですか!?」
「ペイントローラー! どこをほっつき歩いておったのだ!?」
「申し訳ない、連絡が滞ってしまッテ…;」
追いついてきたらしく、後ろからルナとペイントローラーの声が聞こえた。それにデデデが声をかけているのを聞きながら、スラッドは口を開いた。
「ペイントローラー、カービィ用にパラソル描いて、その後全体的な援護。ルナちゃんは怪我人に回復頼む。…疲労度まだ濃いんだから、ルナちゃんは戦闘に出るなよ?」
「ああ、わかッタ。」
「えっ、でも……はい、わかりました。」
即座に飛んだ指示にペイントローラーはすぐに頷きを返し、ルナは何か言いたそうにしたが、それをやめて頷く。
「カービィ、パラソルコピーしたら大将…デデデ大王達かばいつつ戦闘だ。俺はしょっぱなから臨戦方向で行くがな。」
「あ、それでパラソルなんだ。 うん、わかったよ!」
カービィのその返事を聞いてかすかに微笑んだスラッドは、すぐに笑みを消して左手で刀を抜く。
「さて…しゃくれアホ。」
「…貴様、ふざけた事を…」
低く響くダークマインドの凄みに怯えるどころか、スラッドは淡々と言葉をつむぐ。
「何の目的でここに来てんのかはしらねぇが、てめぇが単体でここにいることは『都合が良い』。そして、この場に間に合えた俺らは『運が良い』。」
そして、クルンと刀を正しい位置に持ちかえると、刀の切っ先と…それと同じぐらいに鋭く光る視線をダークマインドに突きつけて言い捨てた。
「てめぇは、ここでぶっ潰す…!」

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