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小説の中へ [15]



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投稿日 : 2009/03/29(Sun) 12:20 
投稿者 : tate   


「何者だ、お前は」
 眼前に立ちはだかった男……それは多分、彼の背中にデデデ大王達を守るためだ……に
デデデ大王が言葉を放った。
「説明云々は後にしてくれ。しゃくれ顎野郎を叩きのめすのが先だ!」
 カービィと共に突然乱入してきた男が、得物を構えた。
 素性どころか名前もわからない男だが、ダークマインドを敵として認識していること、
そしてデデデ大王のことを知っていて、どうやら好意的な感情を抱いていること……ププ
プランドを治める大王であるのだから、ある意味当然なのだが……を素早く汲み取ったデ
デデ大王は、即座に判断を下す。
「ふん、手を組むぞ。但し、奴を倒すまでだ」
 その言葉に、スラッドは肩越しにデデデ大王を一瞥する。その瞳が僅かに細くなった。
「流石は大将、話がわかる」

 ペイントローラーが、原型を留めている壁を目敏く見つけ、パラソルを描きあげた。パ
ステルカラーのパラソルが、雲の壁から実体化して飛び出した。
「カービィ、吸い込むンダ!」
「わかってるよ!」
 カービィが大きく開いた口の中に、パラソルが吸い込まれていく。ごっくん、という嚥
下音と共に、カービィの手の中に先に星のついたパラソルが現れた。
「ルナちゃん! ボクが守っている間に、デデデと灰色のボクを治してあげて!」
 クラッコ達に歩み寄ろうとしていたルナに向かって、カービィが叫んだ。

「早く、ワシを治療せい!」
「は、はい! 少し時間を下さい」
 デデデの怒声に、ルナが小走りにやって来た。出発したときと随分格好が違うが、よく
わからない男がくっついてきたぐらいには、何かあったのだろう。
 ニューデデデハンマーを握ったデデデ大王の鬼気迫るものを感じ取ったのか、ルナが慌
てて回復魔法を掛ける。淡い青緑色の光がデデデを包み込むと、見る見るうちに体に残る
火傷や擦過傷が消えていった。
「ワシも加勢するぞ!」
 床を蹴るデデデ大王を一瞥し、次いでルナはかろうじて立っているシャドーカービィに
目をやった。フラービィの脇を、少女が駆け抜けていく。
「今、回復しますから動かないで下さい」
 ルナの優しい声がフラービィの鼓膜を震わせているが、その声はフラービィには聞こえ
ていない。彼は、目の前で繰り広げられている戦いを凝視していた。
「もう大丈夫です。でも無理はしないで下さい。失われた体力までは回復できませんから」
「わかりました。ありがとう」
 シャドーカービィが、ぺこりと頭を下げた。
 再びルナがフラービィの横を通り過ぎていく。その際、何か声が掛けられたような気が
したが、フラービィは気がつかなかった。いや、気を回す余裕がなかった。
 スラッドが床を蹴り、ダークマインドと一気に距離をつめる。回転する鏡の間隙を縫い、
刀を振るう。闇の衣を剣圧で一時的に振り払い、現れた本体にカービィとデデデ大王が各
々の得物で攻撃を仕掛ける。
 攻撃を仕掛けられる隙はほんの一瞬、直にダークマインドは空を滑り、闇の衣を纏いな
おすと、スターバレットを放射状に打ち出す。カービィがデデデ大王と体を入れ替え、パ
ラソルで攻撃を弾き飛ばし、スラッドは軽い身のこなしでエネルギー弾を次々とかわす。
いなしきれなかったものだけを、左手に握った刀で弾き飛ばしていた。
「鏡への攻撃しても、しゃくれ顎の野郎にダメージが入る! クラッコ達は稲妻でそいつ
を狙え!」
 スラッドは指示を飛ばし、自身は再びダークマインドに吶喊する。
「あの……キミは後ろに下がっていて」
 シャドーカービィが折れたマスターソードを手に、徐々に闇の衣が剥ぎ取られていく
ダークマインドを鋭くにらみつけている。
 カービィと変わらない容姿を持つモノの言葉に、フラービィは強く拳を握り締める。知
らず知らずのうちに、顎が痛くなるほどに歯を食いしばっていた。

 僕の…………

 デデデ大王の息が上がり始めた頃、
「ぐおおおおおお!! おのれ……おノれええエエエ!!」
 ダークマインドの咆哮と共に、闇があふれ出した。
 一瞬のうちに視界が闇で覆い尽くされ、そして直にその闇は消えた。球体に変化した
ダークマインドの纏うフレアによって。
 ぎろり。
 滑らかな表面に一つだけ穿たれた穴に埋め込まれた眼球が、それを取り囲む者達を睥睨
した。

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投稿日 : 2009/04/01(Wed) 22:42 
投稿者 : 百城葛葉  


「…?」
 スラッドは、こちらに向いた視線の鋭さに一瞬だけ後ろを見た。前ではカービィとデデデ大王が奮闘している。
 デデデ大王を支えるように傍にいた、白衣の少年。視線の元は、彼だった。
その目に宿るのは、「何かを取られた」かのような、悔しさがにじみ出た光。
「……?」
「ぐおおおおおお!! おのれ……おノれええエエエ!!」
思考内でのみ小首をかしげた辺りで、ダークマインドの咆哮が聞こえ、辺りが闇に包まれる。
(「…やべっ、こりゃ…『あれ』に成りやがるな。」)
 一度【闘りあった】経験上この反応が何を示すか予想がついたスラッドは、全て闇に覆われる前に走り出した。
…結果的には、途中で覆われて、直ぐに光が…予測してた形状のフレアの光が入ったのだが。
 向かう先は、名の知らない少年の…フラービィの前。
「おい、坊主。 …あ〜、名前は?」
 声をかけると、びくりとしてスラッドの方を見た。視線に宿る光は変わらない。答えも無く自分を睨むように見つめる。
「…まぁ俺も名乗ってないしな。 じゃあ本題。 ちょっと頼みてぇ事があるんだ。」
「…頼みたい事?」
「ああ。…とりあえず、一旦もうちょっと下がれ。」
 さらりと言ったスラッドの言葉にぎっとフラービィは睨み付けを強くするが、続けられた言葉に一瞬できょとんと目を丸くした。
「で、奴の隙を見極めて欲しいんだ。」
「…え?」
 ようやく睨みが解けた事がうれしいのか、スラッドは笑みを浮かべ…その直ぐ後、真剣な顔でダークマインドを見る。
「あの野郎があの形状になったら、いくら弱体化してても容赦と遠慮しなくなってくるはず。
だから、安全な位置から見極めて指示飛ばす奴が必要になってくる。」
 そこまで言って、スラッドはフラービィを見る。視線で「お前の事だ」と示すように。
「俺は前衛思考だから、多分その余裕無くなっからよ。」
「…僕、が?」
「お前が。見たところ結構頭良さそうだし…大将のそばで支えてたって事は、信頼もあるんだろ?
ルナちゃんは魔法唱えてたら周り見るの難しくなるだろうし…頼めんのはお前だろうなと思ってよ。」
 そう言って真っ直ぐ見てくるスラッドに、フラービィは少し戸惑った顔をした後、しっかりと頷いた。
「…わかったよ。」
「よし。…っとやべ、もう戦闘再開してやがる。じゃっ!」
 再びスラッドが戦場に目を向けると、既に目玉は鏡を振り回して攻撃を始めていた。走ろうと足を踏みだしかけた瞬間、
「ま、待って!」
少年に呼びとめられ、顔だけ振り向く。
「…僕は、フラービィ。」
呟かれた名前に、ニッと笑う。
「俺はスラッド。…頼んだぜ、フラービィ!」
名乗り返した後直ぐに戦場を向き、そう言い残しながら走り出す。
傍目余裕に見えながらも、初速で全力出すほどにスラッドは焦っていた。
(「ちぃっ、ちょっと駄弁りすぎたか…!  間に合えっ!!」)
走り出したその視界に、『ある兆候』を見つけたからである。



 フラービィは、釈然としない気持ちで青年を見ていた。
 突然現れて、戦いながら確実に指示して行く見知らぬ男。
デデデや皆に、自分の覚えている事で手助けする自分の『場所』を取られた気持ちになって、ついその男を凝視していた。
 …その青年から、あっさりと『場所』を返されたようなものなのだ。
自分のこの気持ちに気付いているのかどうかすらはっきりとはわからない、そんな態度で。
 なんとなく、名前を告げておきたくなった。最初に名前を聞いてきていたのは覚えていたが、名乗る気は無かったのに…。
 釈然としないまま晴れない気持ちを抱えつつ、フラービィは青年…スラッドから周りへと視界を広げようと努力した。
 言われたからではない。返されたからではない。…「そうしなければいけない」感覚によって。
 彼の言うとおり、戦闘は既に始まっていた。紅い目玉が…ダークマインドが鏡を縦横無尽に振り回して攻撃していく。
皆が避けながら攻撃していく姿が見えるが…そこで、ようやく気付いた。
(「…デデデの動きが、鈍い?」)
 戦線復帰の際の勢いがどこかに行ったかのように、息が上がりながらも敵の攻撃を避けている。
その姿を見て、フラービィの脳裏に「聞こえてはいた」声が蘇る。
『でも無理はしないで下さい。失われた体力までは回復できませんから』
 シャドーカービィに回復をかけた時の、ルナの台詞。それは同時に、デデデ大王にも当てはまる。
自分の支えがなければ歩けなかった人が、回復をかけてもらったからといって疲れまで飛ぶ訳が無い。
(「まずい、あのままじゃ…あっ!」)
 ダークマインドが空中に留まって回して攻撃していた鏡が、無音で移動する。カービィは気付いたみたいで移動したが…デデデ大王が気付いてない。
 あの鏡の向きは…光線の反射攻撃。
「「あっ…!」」
 見ていて危険と判断したフラービィと、気付いて声をかけようとしたカービィ。
その二人の声をかき消すかのように、銀色が駆ける。
「大将ッ!!!」
 その呼び声と共に、駆けつけた勢いに任せるようにスラッドがデデデ大王を後ろから体当たり気味に突き飛ばした。
勢いと疲労で、デデデ大王は「うおっ!?」と声を上げなら前に転びかけ、かろうじてハンマーで倒れるのだけは阻止する。

――また、取られた。
 …そんな思考が出る暇すらなかった。

デデデ大王を突き飛ばしたスラッドは、必然的にその位置に入る。
そして、刹那の差で飛来した反射光線は、

スラッドの左肩を、貫いた。

「ガッ…!」
 ぐらり、と光線のベクトルに流されるようにスラッドの身体が揺れる。
「「っ!!」」
「なっ!?」
「「スラッドッ!!」」
 フラービィとルナが息を呑み、突き飛ばされたデデデ大王が声を上げ、カービィとペイントローラーが名を叫ぶ。
 その声に反応するように、即座に踏ん張って倒れなかったスラッドが、瞬間的に叫ぶ。
「鏡来るぞ、避けろぉ!」
 その言葉に押されるように、カービィは飛んで避け、デデデ大王は前のめりになったのを利用して前滑りし、
叫んだ当人であるスラッドは踏ん張った状態からバックステップをして鏡の突進をかわす。
 フラービィも、その言葉でスラッドに目が行っていた事に気づく。
 そして一度それぞれがダークマインドから間合いを取るため移動した…辺りで、スラッドが軽く息を荒げながら口を開いた。
「…俺なんかの被弾で意識逸らすなよ、あぶねぇなぁ; …心配しくれるのはありがたいけど、よ。」
 そう言って『大丈夫』とばかりに右手をひら、と振るスラッド。
 理由はなぜかわからない、けれど、フラービィはこの言動に少しだけむっと来たと同時に、気付いた。
(「…あの人は、自分のことは『二の次』なんだ。」)
 襲撃に気付いて駆けつけたのも、自分の方に気がついて気にかけたのも、
今ああやって庇ったのも…他の人を助けることを、『他を優先する』からかもしれない。
(「…だったら、今この気持ちをぶつけるのは無駄だ。」)
 きっと同情ではなく、彼は本気で「お前の方が向いている」と任せてくれたのだろうから。
(「だったら…!」)
 意を決すると、フラービィは出来る限り思考を落ち着かせる。そして、息を大きく吸い込んで叫んだ。
「シャドー、ペイントローラーに頼むから、コピーとってデデデの援護に回って! 疲労で動き鈍くなってる!」
「えっ!? あ、うん!!」
 次いで、ペイントローラーに視線を移してからカービィを見る。
「ペイントローラーは、カービィとシャドーのコピー用に絵を描いて支援を! 
カービィは星型弾にするなりコピーするなりで攻撃して!」
「ああ、わかっタヨ!」
「う、うん!」
 状況を見定め、自分が考えれる指示を出していく。
「デデデ、あいつの弱点は開いた時の目と攻撃に使ってる鏡だ! でも、鏡は割れる際に刃になるから気をつけて!」
「なるほどな、わかったぞ!」
 そして、自分の後ろのルナに顔を向ける。
「ルナさんは攻撃届かないところまで怪我している人達と下がって!」
「あ、はい! …スラッドさん、こっちへ!!」
 さっきの光景が少し衝撃的だったのか、半分涙目になりながらルナはスラッドを呼ぶ。
しかし、スラッドは軽く振り返ると、苦笑しながらやんわりと返した。
「…俺はまだ戦えっから大丈夫。ルナちゃん、他の奴護ってやってくれ。」
「そ、そんなっ!」
 さらに泣きそうになっているルナの声を後ろに、フラービィはウィズに声をかけた。
「ウィズ、あの男の人の援護に回って。で、倒れそうなら無理やりにでもこっちに引っ張ってきて。
…そうでもしないと、あの人退かなさそうだ。」
「やれやれ…、わかったよ。」
 ウィズが動き出すと同時に、各自指示された行動を開始する。
そんな光景をフラービィは真剣な目で、ルナは泣きそうな目で見つめていた。


「まったく、無茶をする人なんだね君は。」
 再び来た鏡の突進を回避した辺りで、後ろから聞こえた声にスラッドは振り向く。
そこにはシルクハットとマントが『本体』であるかのように浮かぶ者が一人。
「…なーんか、それペイントローラーにも言われたんだよなぁ;」
 痛みからか若干の脂汗を浮かべつつ、スラッドはそう愚痴る。
「つまり、言われるほど無茶をする回数が多いと言うわけだね。」
 呆れたようなウィズの言葉の直後、後ろからフラービィの声が飛んできた。
「『スラッドさん』! ウィズをサポートにつけるけど、倒れそうだったら無理にでもつれて来てって頼んであるから!」
 はっきりと呼ばれた名前ににっと口元で笑いつつ、右手の親指を立てて声と共に返事を返す。
「サンクスッ! さっき言ったのマジで頼んだぜ、フラービィ!」
「それはいいとして…怪我した方の腕は動くのかい?」
 ウィズにそう言われて、スラッドは先ほどから試していた事をもう一度やる。
刀を落とさないぐらいに刀は握れてはいるが…。
「…グッ;  …動くにゃ動くんだが…左肩があがらねぇ;」
 もともと『特殊』とみられる攻撃にまったく耐性が無いスラッドは、先ほどの光線でかなりのダメージを負っていた。
貫通した傷は焼けたのか血こそ少ししか出ないが、腕を振ろうとすると激痛をもたらしていた。
「それじゃあ、やっぱり後ろ行った方いいんじゃないのかい?」
「…いや。」
 ウィズの言葉に、スラッドはニヤリと笑うと両腕を近づけて…左手の刀を、右手で持って支障なく振りぬいた。
「ルナちゃんに言ったとおり、俺はまだ『戦える』んだよ。」
 そして、真っ直ぐダークマインドを見据えると吼えるように告げる。
「援護頼むぜ、ウィズ。 …行くぞぉ!!」
「やれやれ。 了解したよ。」
 スラッドの咆哮に付き合うように、ウィズもステッキを構えて臨戦態勢を取った。

決着まで…あと少し。

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投稿日 : 2009/04/02(Thu) 16:19 
投稿者 : guri  


 戦場の音が、鏡を通り鈍く鳴り響く……
「おーおー……派手にやってるやってる」
 鏡の中の小さな一室、暗い暗いその牢獄に彼女はいた。膝を抱え、その上に頭を乗せる
ような形でゆったりと座っている。だが、その眼差しは虎視眈々と外を睨みつけていた。



「カービィとペイントローラーは右の鏡、シャドーとウィズは逆を狙うんだっ」
「「了解ッ!!」」
フラービィの指示で鏡の動きが制限される、やむなく普通に発射されたレーザーがむなし
く虚空を穿つ。
「うらぁっ!!」
 隙を見て取ったスラッドの剣先が、弧を描きダークマインドを捉える。戦いは次第にデ
デデ大王側の優勢へと傾いていた。
「お前の視線にさえ気をつけていりゃぁな、当たる訳ねぇん、だっ」
 レーザーを掻い潜り、スラッドがさらに追撃を叩き込む。

「お〜い……フラービィ、動いても良いか?」
「ダメ!デデデはルナさん達守ってて!」
 指示を出されなかったデデデの呟きが、にべもなく却下される。
「まぁ、こいつらを放ってはおけんしな……」
 ルナの周りにはブレイドナイトにソードナイト、それに無数のワドルドゥ達が気を失っ
て転がっている。ルナは必死に回復魔法をかけ続けている。デデデ大王は、その前に仁王
立ちするはめとなった。
「何か変だな……」
 戦場の騒音が響く中、デデデ大王は上方へ引っ張る僅かな力に気がついていた。周囲を
見渡すとペンやスパナなどの小物が浮かびはじめている。これは、まさか……
「皆、気をつけろ!大技が来るっ!!」
「ちょこまかと、小賢しいわぁぁぁ!!!」
 デデデ大王の叫びを掻き消すかのように、ダークマインドの咆哮が部屋に響く、咆哮と
同時に皆天井へ向かって落ちていく。
 デデデ大王が頭を振り周囲を見渡す。材質が雲なのが幸いしただろうか、皆さしたるダ
メージは無かったようだ。だが、右を向くと左を向いていた。左を向くと右だった。
「ぐ……なんじゃいこれは……」
「「わはははは、喰らえいっ!!!」」
 待ってましたとばかりに、三方から乱反射したレーザーが嵐の様に降り注ぐ。あちこち
から悲鳴が聞こえる。体が思うように動かず、回避行動すら取れない。このままでは全滅
か、と思ったその時、二つの影が飛び出した。

「シャドー、解ってるね。今まともに動けるのは僕らだけだ」
「うん、ウィズ。リバースワールド、僕らには故郷と変わらないねっ」
 シャドーカービィとウィズが、水を得た魚のように軽快に走り出す。ウィズがシルクハ
ットをキュッとかぶり直し、杖でコンコンと叩く。
「シャドー!とっておきだ、使え!」
 シルクハットから飛び出た手袋を投げる、それをシャドーカービィが吸い込んだ。
「ティンクルスター!」
 シャドーカービィが両手両足を広げ、鏡を弾き飛ばす。鏡が壁に叩きつけられる、さら
にハンマーが横薙ぎに振るわれる。
「ていっっ!!」
 壁とハンマーに挟まれ、ガキンッっと乾いた音を立てて、鏡にひびが入る。
「「ふ……ふはははは!!そうか、お前等同郷が居たのを忘れておったよ」」
 レーザーの猛威が低下する中、ダークマインドの声が部屋に響き渡る。
「「予想も付かぬ速さで立ち直ったのは誉めてやろう!だが鏡を打ち壊したとて何になる、
幾らでも再生でき……」」
ザクッ
 鏡より打ち出た一条の刃が、ダークマインドの眼を深々と貫いていた。



 フラービィは、揺れる頭をぶんぶんと振った。何せ天井と床を一往復したのだ。この部
屋はかなりの高さがあると言うのに。ふらふらしながら眼を開けると、目の前に一人の女
性が静かに立っていた。
 まだ意識が朦朧とする、レーザーの焼け焦げた臭いが鼻につく、デデデ大王が叫んでい
るのが聞こえる。離れろ……と。
 意識が次第にハッキリとしていく、それとともに体のあちこちが鈍痛を訴える、打ちつ
けた痛み、そしてレーザーに焼かれた痛み。何とか眼の焦点を合わせ、顔を上げるとそこ
には見知った顔があった。
「ドロ……シア……」

「よーやく出られたわぁ……」
 ドロシアが両手を上にあげ伸びをする。周囲の惨状をさして気に留めるでもなく、地に
落ちた橙色の球体を一瞥した。
「「ぐ、、が……ドロ、シア……きさ……ま」」
ダークマインドが苦悶の声をあげる、もう一枚の鏡がぞろりと動き出す。
「おや、まだ息があるみたいね」
 ドロシアが筆を振るう、途端に虚空に剣が数十本現れる。
「「ちょ……ま、て」」
「GO」
ザザザクザザ、ザクッ!
 ドロシアの号令一下、矢の様に剣が降り注ぐ。剣は根元まで深々と突き刺さり、傷口か
ら闇がシューシューと溢れ出る、ダークマインドは次第に体積を失い陽炎のように薄れる
と、虚空へ溶けて、消えた。その跡には最後を看取った剣のみが、墓標の如く残った。

「くっ、、反則だろ……こんなの」
 スラッドが悪態を付く。スラッドも、カービィも、デデデ大王も、だれもが動けないで
いた。体力を殆ど使い果したこの時に新手である、しかも致命傷こそないものの、レー
ザーにあちこち射抜かれている。その意味でも戦闘力は皆無といって良かった。
「ひっさびさの外は気持ちいいわねぇ……ん?何よ、貴方達」
「我等の仲間に手出しは、させん!」
「通さないよっ」
 ドロシアの眼前に、無傷のシャドーとウィズが立ち塞がった。ドロシアに向かって大き
く構える。
「確か、ポップスターの大王様とその仲間、だったかしら」
 ドロシアはデデデ大王を見て取ると、口に手を添え考える。
「いかにもデデデ大王だ。交渉の余地があると見てよいのか?」
 デデデ大王が二人をかき分け、のそりと前に出る。
「そーね、別に貴方たちと敵対するつもりは無いわ。ゼロを利するのもシャクだしね、せ
いぜいあいつ等をかき回してくれると助かるわ」
「まさか、別人……?」
 フラービィが小さく呟く。それが聞こえたのか、デデデ大王が言葉を引き継ぐ。
「前襲ってきた、金髪のドロシアとは別人なのか?蒼髪のドロシアよ」
 デデデ大王が発した問いに、ドロシアは鋭く反応した。
「え、アレと会った事あるの!?どこ行ったか詳しく教えなさいっ」
 デデデ大王の首を掴み、問い詰める。
「デデデっ!!」
「大将ッ!!」
 フラービィとスラッドがいきり立つ。
「ここに来たのを追い払った……後は、知らん」
 デデデ大王とドロシアの視線が交錯する。諦めたのかデデデ大王をポイッと投げ捨てた。
「んー……しょうがないわね。壁借りるわよっ」
 そう言うと、ドロシアは壁に絵を描きはじめた。簡略化されたポップスターの地図が、
次第に構築されてゆく。
「大将、今なら隙だらけだ。仕掛けていいかっ……」
 スラッドが剣を握る手に力を込める。
「馬鹿者、金髪のやつより描く速度が半端無く早い、威力もな。傷ついたわしらに勝ち目
があるとは思えんわい、今は放っておくんじゃ」
 絵が完成し、画竜点睛が如く紅い点が一つ描かれる。その点が暫く静止していたかと思
うと、ゆらりと動き、絵を離れ空中へと浮かび出した。
「うわっ……!ポップスター飛び出てるじゃない!こうしちゃ居られないわっ」
 デデデ大王とスラッドのひそひそ話も何処吹く風、ドロシアは慌てて空へと飛び出した。

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投稿日 : 2009/04/04(Sat) 21:19 
投稿者 : あおかび  


水晶で出来た巨大な手が、暗く重い雲を突き抜けた。
光が瞳孔の中に蘇り、オレンジ色の髪の少女は思わず目をつむった。
一方、ブラウン髪の青年は微動だにしていない。

ようやく眩い光に慣れた少女は、透き通った手のひらから景色を見下ろした。
「うわぁ」と感嘆の声があがる。
それでは満足しないのか、両膝と手のひらを水晶に着けてよつんばいになった。

「こんなに高い所まで飛んだことはなかったわ……」

チナツの口からため息が漏れた。

彼女の眼前に映っているのは、『プププランド』の大地である。
家屋、街、山、湖――――
さまざまな風景がとことん縮小され、彼女の小さな瞳に収まっているのだ。

当然目の前にそれらがあるのなら、とても広く、大きく感じることは間違いない。
自分がいかにちっぽけなモノであるか、自覚して憂鬱になるのかもしれない。
それゆえ、実際はスケールの違うそれらがミニカーよりも縮小されて自身の瞳に映っていることに、彼女はえもいえぬ征服感を味わっていた。

「女王様になったような気分ね」
「……そうか」
「アタシは心が広いから、アンタに市民権を与えてもいいわよ」
「だが断る」
「……冗談よ。誰がアンタなんか」

仮にプププランドを征服できるだけの力があったとしても、コイツだけはどうにもできそうにない、とチナツは思った。

いつの間にか風が吹くようになり、真下の緑色は視界の外へ追いやられていた。
その代わりに、青々とした静かな海に埋め尽くされていた。
太陽の光を受けてギラギラ輝いている様子は、まるで子供が大笑いしているかのようである。

それを見たチナツの表情は、すまし顔へと姿を変えていた。
口直しに何か面白い物はないかと、さらに顔を乗り出していた。

「――――――――――――」
「なに、さっきから黙ってこっちを見てて。なんかすることないの?」
「別に。だが――――」

温かみも冷たさもないビュートの口が、ゆっくりと開かれる。

「――――その姿勢は、どうかと思うが」
「どういうこと?」
「直に強風が吹く」
「だから、どういうこ――――」



そのとき、一際強い風が吹いた。



手のひらが、ワムバムジュエルの手から離れる。
水晶に全体重をかけていた、腕が、支えを失い、宙に浮いた。
それに伴って膝が伸び、やがては足も支えを失い、空に投げ出された。

自分の体の預け所を喪失する恐怖。
それを味わいながら、チナツは、海へ真っ逆さまに落ちていった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



雲の隠れ家には、久方ぶりの平和が戻っていた。
ただ、静寂とは程遠い『平和』である。

内部は、地獄絵図と言っても差し障りないであろう。
傷を負い、ただただ呻き声をあげ続ける兵士たち。
どこを見ても、痛々しい傷が目の中に入ってくる。
なんとか目を逸らそうとしても、適当な逃げ場所がない。

傷の手当で慌てふためく隠れ家の内部をあとに、フラービィは外に出ていた。
無意識のうちにあくびが出た。
体が鈍った感触をごまかそうとして伸びをする。
それでも眠気は消えてくれなかった。

「そっか。普通の時間だったら寝ている頃だよね」

重そうな瞼をこすりながら、少年は誰にでもなくつぶやいた。

ついさっきまでは暗かったものの、今現在は異様に明るくなっている。
シャインとブライトが倒れてしまったために起こったことだと、頭の中ではわかっている。
けれども、そう簡単には受け入れることもできず、慣れることもまた難しい。
少しでも油断すれば、体内時計は直に使い物にならなくなる。
……既に正常に働いていないのかもしれないが。

出来ることならすぐに眠ってしまいたい。
このまま起き続けていれば、以降の行動に支障が出かねない。

しかし、このグループの中でそれができるのは極わずか。
瀕死の重傷を負っている者は、深い傷に阻まれて眠ることすらままならないのだ。

フラービィのように自由に動ける者は、彼らを介抱しなくてはならない。
まばたきする時間すら惜しいのだ。
だから、眠ることはできない。

少年は、手元の包帯に視線を落とした。
応急処置の知識程度は心得ている。

「僕にできるのはこれぐらい、か……」

他に自分が出来る事といえば、敵の情報を伝えることのみ。
非常に役に立つ物ではあるが、逆に言えば、戦闘においてはそれしかできない。
今まで情報や指示を与えたことはあっても、前線で戦ったことはほとんど皆無である。

「今のままでいいのかな……」

良い訳がない、とはっきり断言することはできなかった。
それを言ってしまったら、自分を自分で否定してしまうようで。

ふと上を見上げてみた。
空はいつの間にやら静かな闇に支配されていた。

こんなときに限って、星々は綺麗にまたたいていた。







その眺めに見とれていたとき。
このムードを完膚なきまで台無しにするエンジン音が、遠くから響いてきたのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「いやぁ、なんとか着いた。正直な、テストフライトでここまで飛んできていいのか心配だったんだぜ?」

足と手のついたジェット機に、フラービィはおそるおそる尋ねた。

「カプセルJ……さん?」
「お、分かってくれたのか、嬉しいねぇ。要塞の奴らは時間かかってたっていうのに」

がっはっはっ、とジェット機は気前よく笑っていた。
ボディーの修理が終わり、すこぶる機嫌が良いのだろう。

「もしかして、カプセルJ2さんって呼んだ方がいいでしょうか?」
「いいねぇいいねぇ。これからはそっちで頼むぜ」
「あ……、はい。ところで、どうしてここが分かったんですか?」
「適当に探して回っていただけだ。ま、運よくたどり着いたから結果オーライってことよ。
 ま、それはさておき、だ。コイツを預かっちゃくれねぇかな?」
「コイツ……って?」
「背中だ、背中」

そう言われてやっと、カプセルJ2が誰かを背負っていることに気が付いた。

オレンジ色のショートヘアー、ピンク色の衣服。
いくら記憶の中を探っても該当する人物は見つからなかった。

カプセルJ2は割れ物を扱うような所作で、その人を背中から降ろした。
おそらく自分と同じ、ヒトの女性ではあるのだが、やっぱり見覚えがなかった。

「海岸で倒れている所を見つけてな。それで、ここで預かってもらいたいわけよ」
「僕は……、この人を知りませんよ? それに、今ここで預かるのも……」
「最初はオレンジオーシャンの要塞で預かってもらおうかと思ったんだが、医療施設が使えないからと断られてよ。
 俺のところは逆に悪化してしまいそうだしよ。ここがベストなんじゃねぇかという判断だ。
 なんつったっけ……あぁ、『なんたら法』を使える女の子もいるだろ?
 そこらの病院よりも安心できるってもんだ」

どう答えようか考えあぐねている間に、「じゃ、頼んだぜ」と言い残し、カプセルJ2は雲の中へ潜っていってしまった。
フラービィは無理やり笑うしかなかった。

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