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小説の中へ [20]



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投稿日 : 2009/05/19(Tue) 02:44 
投稿者 : tate   


 デデデ城の物見塔に陣取っていたチナツは、遠眼鏡を覗き込んだ。
 上手く地形に紛れながら接近はしてきているが、デデデ大王を頭とした一団がこちらに
向かってきているのが、容易に見て取れた。
(来たわね。攻撃するのは、相手が城に駆け込める距離になってから、だったっけ)
 ヨーグルトヤードから戻ったチナツは、早々に城内に罠を仕掛ける手伝いをさせられた。
何かがワイヤーに引っかかると、その先に付けられた皮袋が破裂して刺激性の液体が散布
されるとか、槍が頭上から降ってくるとか、いわゆるブービートラップと呼ばれる類の罠
だ。殺傷能力は低いものがほとんどだが。
 こういう時は手榴弾のような殺傷能力の高い武器を使うものだと思っていたが、流石に
こちらの世界にはそのような代物はないらしい。
 とはいえ、トラップの中には、チナツが生成した爆発性の矢を仕掛けたものもあったり
して、何も考えずに敵が城内に入ってきたら、正面にせよ搦め手にせよ酷いことになるだ
ろう。攻撃のタイミングも、そこを考えて指示しているはずだ。
 ワムバムジュエルの姿も今は見えないが、チナツの攻撃を合図に、城外から侵入者に襲
い掛かる手筈になっている。
(そういえば、あの部屋にあったヘンなコンピュータ……アレって何だったんだろう。ア
イツ、アタシは機械に強いとか思っているみたいだけど、そんなことないんだけどね……)
 心の中でぼやきつつ、チナツは再び地上の様子に目をやった。

  *

 夢の泉に向かったのは、先にデデデ大王が指示したとおり、Mr.シャインとクラッコ
Jr.を先頭に、ルナ、ファイアーライオンといった特殊攻撃を得手とする者達だ。
 ペイントローラーとスラッド、そしてヘビーロブスターが連携しても尚、手が出なかっ
たという報告から、敵には斬撃や打撃といった物理的な攻撃に何らかの耐性がある、もし
くは存在そのものが物理的な干渉を受けない可能性があると、デデデ大王が睨んだからだ
った。
 間も無く、夢の泉が彼らの視界に飛び込んできた。
 昼間にもかかわらず、夢の泉の周囲は闇に澱み、その頂上には漆黒の球体が浮かんでい
る。絶えず噴出している黒い霧が周囲の大気を腐らせ、光が夢の泉に届くのを阻んでいる
かのようだ。
 事前にブロントバートが報告してきたとおり、夢の泉にはダークマター以外の敵は見ら
れない。
「ルナさん、ファイアーライオン、敵の射程外からまずは特大の一撃を見舞ってやりまし
ょう。クラッコ君と他の者は、周囲を警戒してください」
「わかりましたっ!」
 クラッコJr.が震える声で返事をした。

 二匹と一人が、同じタイミングで攻撃を放った。
 閃光と共に轟音が大気を震わせ、夢の泉の姿が刹那、視界から消える。次いで激しい砂
塵と共に、しゅうしゅうと耳障りな音を纏った白い煙が激しく立ち昇った。
 一体を包み込んだ白い煙は、やがて攻撃を放ったままの体勢で立ち尽くすMr.シャイ
ンの元にも届いた。煙が彼の頬を一撫ですると、表面がしっとりと湿った。
「……水蒸気?」
 何故水蒸気が? その解をMr.シャインが探そうとするのよりも早く、獣の方向が鼓
膜を振るわせた。
「これは……何の声ですか?」
 ルナが声を上げた。ファイアーライオンもそれが誰のものなのか察し切れず、ルナの問
いには答えられていない。
 だが、Mr.シャインには馴染みのある咆哮だった。
「な、何故彼がここに……」
 そんなはずがない、Mr.シャインは小さく首を横に振った。
 たとえ彼が戦闘の気配を感じ取ったとしても、駆けつけられるような距離ではない。何
故なら彼は、レインボーリゾートからは遠く離れた氷山をねぐらにしているのだから。

 煙が晴れてクリアになった視界には、ずんぐりむっくりな青い巨躯をした二頭身の竜と、
黒い抜き身の剣を手にしたダークマターが一体、映っていた。二頭身の竜は夢の泉を……
いや、そこに佇む闇を守るかのごとく、Mr.シャイン達の前に立ちはだっている。その
足元には氷柱の名残があった。氷柱を連ねたバリケードで、攻撃を凌いだのだろう。
 剣士の風体をしたダークマターは少し後方、ちょうど夢の泉の脇に浮かんでいる。
「アイスドラゴン!? 何故貴方がここに!」
 そう呼びかけてみたが、青き竜の瞳は赤く澱み、Mr.シャインを睨め付けるばかり。
時折首を振っては、威嚇の叫びを挙げている。
「ま、まさか……」
 ルナが搾り出すように、小さく呻いた。
 ルナが動揺するのも無理はない。Mr.シャインも己の目を疑いたかった。何故、アイ
スバーグを守護するはずのアイスドラゴンがここに居るのか、そして彼らの行く手を阻ん
でいるのか。
「ククク……オ前ト相見エルノモ、コレデ二度目ダナ、娘ヨ」
 ダークマターが言葉を発する。ルナが拳を握り締めた。どうやら彼女とこの敵は面識が
あるらしい、だから少女は動揺したのか。
「情報ドオリ、夢ノ泉ヲ奪還シニキタカ。殊勝ナコトダ」
「ああ? 情報どおりだって? グルルルル……」
 ファイアーライオンが唸った。
「妙ダトハ思ワナカッタノカ? オ前達ノ仲間ニハ、よーぐるとやーどヲ守護スルモノガ
イルダロウ。月ノ化身デアルオ前デスラ召集サレテイルノニ、ナゼよーぐるとやーどノ守
護者ハ姿ヲ見セテイナイ」
 そうだ、ヘビーモールにも召集自体は掛かっていたはずだ。だが、その彼は当日の朝に
なっても姿を現さなかった。デデデ大王が、「ヘビーモールのヤツは何をしとるんだ!」
と怒りながら携帯のボタンを押し捲っていたから、ヘビーモールとは連絡がつかない状態
になっているのは想像が出来た。
 あそこは携帯が繋がらなくなることが多々あるエリアであるし、それに気を回している
時間的な余裕もなかったが……まさか!?
「ククククク……アノモノナラバ今頃、よーぐるとやーどノドコゾデ、無様ナ姿ヲ晒シテ
イルダロウ。雑魚ニモ程ガアル。マアヨイ。ぜろ様ノ仇トナラヌヨウ、オ前達ハ、ココデ
我ガ剣ノ錆トシテクレヨウ」
 ダークマターは掲げた剣を振り下ろした。それが戦いの合図だった。

---
騎士マターは、ヘビーモールから奪還戦の情報を引き出していたみたいですわよ。
ヘビーモールがそんな情報をどうやって手に入れたんだ、という話もあるのですが
ウィスピーとデデデが携帯で話していた具合に、連絡だけは行っていたとか、
まぁそんなオチです。


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投稿日 : 2009/05/20(Wed) 02:03 
投稿者 : シンキ   


デデデ城奪還作戦の前日の夕方――

 海面が夕焼けの色に染まる港、オレンジオーシャン。その街中で普段人々があまり耳に
しない、軽快なメロディーが響き渡っている。
 その音源の周囲には物珍しさに数人の人々が集まり、音楽に溶け込んでいる。逆に興味
を示さない多数の通行人は軽く聞き流しながら通り過ぎて行く。
 所謂路上ライブを行っている青年は観客の多寡など気にする事もなく、自分の世界に入
り込んでいるかのように独特のリズムでギターを弾き続けていた。
 その風貌も、このプププランドにおいてはまた珍しいものであった。
 髪は前髪が赤く、残りは金髪のショートヘアー。服装は黒い革ジャンとその内側に白い
シャツ、そしてチェーン付きのジーンズを穿いている。瞳は緑色で、その表情は鋭そうで
あり、友好的な感じでもある何とも言いがたいものだった。
 それは『元いた世界』の時と変わらない彼のお気に入りのファッションであり、周りか
ら見れば彼の立場は風変わりな流離(さすらい)のミュージシャンといったところか。
 そんな中、彼はふと観客の一人に目がつく。見た目は普通のワドルドゥだが、ライブを
楽しんでいる様子はなく、その目は青年に何かを訴えているようであった。
 指の動きを止める事なくそれを視認すると、直後に曲調をガラッと変える。いや、むし
ろ全く別の曲を弾き始めたようだ。
 観客も一瞬息を呑んだが、物好きな彼による不意を突いた演出なのだろうと解釈し、新
しい曲も楽しみ始めた。
 曲を変えて暫くの時間が経ってから、青年は何かを確認したかのように視線で合図を送
ると、そのワドルドゥはさりげなくその場を後にし路地裏の方に姿を消す。それをしっか
りと見送りながら、彼は引き続き演奏に熱中していた。

「うぃーっす。待たせたかい?」
 十分後、路上ライブを済ませた青年が路地裏で待っていたワドルドゥ――コマンドタイ
プのダークマターが憑依している――に軽い感じで声をかける。
 彼はそのダークマターとの待ち合わせまでの時間潰しとして先程の路上ライブを行って
いたのだ。
 それには周りの者からこうした裏の顔を欺く意味もある。さすがにこの世界をこの奇抜
な格好で歩き廻っていては間違いなく怪しまれるだろう。だから世間には流離ギタリスト
としての表の顔を認知させておく必要があったのだ。
「任務に支障はありません。ゼロ様よりエルム様への最初の指令です」
 いかにも任務に実直、といった物腰のそのダークマターは長々とライブを続けていた事
を気にも留めず、新入りであるエルムに対しても相手が目上の者であるかのように語り始
める。
「明日、敵勢力によるデデデ城及び夢の泉の奪還作戦が決行されるという情報が入りまし
た。よって今から私とともに夢の泉に向かい、防衛に加勢せよとの事です」
 リズムを取るかのように体を上下に弾ませながらそれを聞いていたエルムはピタリとそ
の動作を止め、首を傾げた。
「夢の泉? ルート的にはデデデ城に向かった方がいいんじゃないのかい?」
 彼はデデデ城が夢の泉の最終防衛ラインとしての役割も持つ以上、先に戦闘が発生する
のはデデデ城であると考えた為、思考の食い違いが起きていた。
「奪還戦はデデデ城と夢の泉を同時進行するとの事であります。また、ビュート様は城内
に多数のトラップを設置し迎撃すると仰せでしたので我々は逆に動きにくくなるとの判断
を下されました」
 それを聞いた男は数回頷くと「ナルホドナルホド……」と呟き、軽い動作でクルッと半
回転する。
「オッケー、オッケー。んじゃ早速行こうか。え〜と……まぁ名前無さそうだしダークマ
ター君でいっか」
 ダークマターは「了解」と相槌を打ち、歩き始めたエルムの後ろからついていく。
「ところでダークマター君。『足』は用意してないのかい?」
 ここでいう『足』とは、所謂乗り物などの移動手段の事である。
「ウィリーバイクはエルム様の体格に合いません。他についても調達する手段が限られる
為今回は徒歩で移動する事になります」
 言うまでもなくこのオレンジオーシャンから夢の泉までの距離は徒歩で向かうには少々
遠く、しかも日は既に地平線の向こうに隠れようとしている時刻だった。
「こりゃぁ開幕までには間に合わないだろうな」
 エルムはシニカルに笑うとそう吐き捨てた。対するダークマターはそんな態度に構うこ
となく黙々と彼の後に続いていった。

――――

時間軸は冒頭にもある通りデデデ城奪還戦の前日(18〜19時ぐらい?)に遡り、
騎士マターからの報告後ということでNo.464後とも言えます。
自分のオリキャラ、エルムについては戦闘には途中から乱入する形になります。
急な時期に配下にされたので今回の投入に関しても実験的な意味合いがある感じです。
また、エルムは新入りなのでビュート達はその存在を知りません。
あと自分の想定している敵内部での奪還戦及びその対策等の情報の流れは
騎士マターがヘビーモールから引き出す
→ゼロ4様へ報告
→各ダークマターへ伝える
→黒丸がビュートの対応(トラップ張る事等)をゼロ4様へ報告
→ゼロ4様がコマンドタイプを通してエルムに指令を出す(本文中の会話)
という感じです。

オリキャラの設定は次の投稿で……と思ってたのですが後続の人が考慮しやすいよう
今のうちに書いておきます。()内は補足です。

名前:エルム(偽名)
性別:男
年齢:19歳
種族:人間(日本人)
立場:ゼロサイド
口調:俺、君(キミ)、〜君(くん)、〜様(ゼロとかに)、〜だな、〜だぜ
 容貌は本文の通り。性格は温和で敵味方問わず気安くフレンドリーな話し方で接し、
相当目上の者以外は性別、種族問わず君付けで呼ぶ。
 本を経由して来ており目的は『多くの人々に自分のギターの腕を認めてもらう事』だが
ダークマター達によって間違った意味で認められる、もとい利用される事になる。
 魔力を秘めたギターを使い、音波に魔力を乗せる事で様々な能力を扱う。
その種類は
・策敵用の簡易レーダー(範囲は半径100mほどで対象の大体の形状も分かる。
ただし隠密性0で、防音性が高い壁に囲まれた場所の中にあるものは策敵不可)
・対物理攻撃用バリア
・対特殊攻撃用バリア
・闇に属する者の能力を向上させる
の4つであるが、演奏してる間しか効果がないので
複数の能力を同時に使用する事は不可。
また本人の攻撃方法もギターを鈍器代わりにして殴るのみなので単独ではほぼ無力。
バリア無しでは耐久も紙です。
要するにサポート中心キャラです。

本文のライブ中に曲変えたのはレーダーで周囲に敵がいないか確認してたためです。

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投稿日 : 2009/05/25(Mon) 23:15 
投稿者 : ヨツケン  


騎士の格好をしたダークマタが漆黒の剣を振り下ろした瞬間、戦いが始まった。戦場に居
た全ての者が、目の前の敵を倒すため、自らの得意とする技を一斉に放った。
「ダークマター!!」
放たれた無数の技によって出来た砂煙の中から出てきた、漆黒の剣を持ったダークマター
を見つけ、少女は魔法で翼を生やし、上空に向かうダークマターの目の前に飛んだ。 
「サァ……決着ヲ着ケヨウデハ無イカ、娘ヨ……」
「私も……最初からそのつもりです!!」
「ククク…来ルガ良イ……」 
ダークマターが抜き身の剣を目の前の少女に向け構えると、少女も何処からか細身の長剣
を取り出しダークマターに向け構える。
「……行きます!!」
不意に少女の姿が歪んだかと思うと、一瞬でダークマターの後ろに回り込み、後ろから剣
を一閃、それをダークマターは漆黒の剣でいなした後、少女から距離を取り、剣から無数
の黒い波動を連続で放つ。
「甘イ!!」
「くっ……」
黒い波動を魔法障壁で弾きながら少女は静かに詠唱を始める、魔法障壁が黒い波動を全て
受け切ると、少女は剣を左手に持ち替え、右手に溜めた魔力を使い、ダークマターの周辺
に無数の青い球体を生み出し、一気に爆発させる。
ダークマターの体が雲に覆われ見え
無くなった。
「ククク……此レグライデ我ガ殺レルト思ッタカ?」
「そ、そんな……」
雲の中からダークマターがゆっくりと姿を現した、白いマントから煙が出てはいるが、そ
れ以外は全く無傷であった。
「ソレデハ、今度ハ此方カラ行クゾ!!」
ダークマターは剣を目の前に構えると、無数のエネルギー弾を放つ、それを少女は魔法障
壁で弾きながら魔力を溜め、下を見る、下の方ではMr.シャイン達がアイスドラゴンの猛
攻を受けながら必死に戦っているのが見えた。
「遅イ!」
ダークマターの声に気付き、少女が慌てて前を向き直すと、ダークマターの漆黒の剣が魔
法障壁を斬り裂き、少女の肩に深く斬り込んだ。
「消エロ…」
そのままダークマターが剣を振り下ろすと剣の一撃をまともに受けた少女の身体は悲鳴と
共に地面に向かって墜ちていった。

ポスッ…

不意に身体が軽くなったのを感じて、ゆっくり目を開き、下を見ると、小さな目玉の付い
た雲が真下で自分の身体を支えていた。
「……クラ君?」
「大丈夫ですかルナさん?」
「大丈夫……ありがとうクラ君」
「ルナさん……何か僕に出来る事は無いですか?」
「危ねぇ!!」
不意に飛んで来た氷塊を赤い焔を纏ったライオンが横から飛び出し、鋭い牙で氷塊を噛み
砕く、辺りに無数の氷の破片が飛び散る。
「気を付けろよ!!」
そう言って走り去った炎獣を見て、少女は何かを思い付きローブの中から一枚の紙と、白
く輝く筆をクラッコJr.に渡す。
「あの…クラ君、私達がどうにか時間を稼ぐから……」
少女の後の言葉は轟音によって掻き消された、少女の近くの地面が黒い半月状の波動によ
って轟音と共に深く抉れた。
「サァ…娘ヨ、続トイコウカ……」
「お願いクラ君!!」
小さな雲が少女の側を離れ、高く舞い上がりながら頷く、少女はそれを確認すると、目の
前に浮かぶダークマターを睨み付ける。
「サテ……急ガナケレバ、モウスグ重要ナ事ガ有ルカラナ……」
「重要な事?」
「悪夢ノ復活……気付カナカッタノカ?アノ球体ハ今、入リ込ンダ我ガ同胞ヲ糧ニ、復活
シヨウトシテイルノダ……」
「えっ……?」
「サァ、剣ヲ構エロ……決着ヲ着ケヨウ……」
不意にダークマターが剣を振り、漆黒の刀身から雷を帯びた黒い半月状の波動が飛ぶ、少
女はそれを避けながら魔力を溜め、右手で左肩を抑えつつ、左手から無数の光線を撃ち出す。
「無駄ダ…」
「(クラ君…まだ?)」
ふと見るとクラッコJr.が回りに浮かぶ四つの雲を回してるのが遠くに見えた、それを見
つて、少女が再び前を向くとダークマターは剣で光線を打ち払い体勢を立て直す。
「(クラ君からの合図だ!)」
「コレデ終ワリカ、デハ……」
「(ありがとうクラ君……)」
「死ネ…」
ダークマターは少女との間合いを一瞬で詰めると、目の前の少女を漆黒の雷を帯びた剣で
一閃、少女の身体から大量の血が噴き出した……はずだった。
「ナニ!!クッ!」
少女の身体から出てきたのは強烈な閃光、ダークマターが斬ったのは少女の幻影だった、
幻影から発っせられた光にダークマターは思わず眼を閉じた。
そして、ダークマターが再び眼を開けた時、少女は夢の泉の上空にいた。
「ルナさん、書いて来ましたよ〜」
「ありがとうクラ君♪休んでで良いよ」
「は〜い…」
クラッコJr.を優しく撫でると、少女は剣を仕舞い、静かに詠唱を始める。
「業を切り裂く魔の重砲よ…」
「コレハ……魔法ノ詠唱!?マズイ!!」
「全てを砕きて罪深き咎人に終焉をもたらさん…」
少女の身体が光に包まれ、上空の雲から大きな魔法陣が姿を表し、少女の魔力と同調し光
を強める。それに気付いたダークマターが上昇を開始するが……遅かった。
夢の泉を眩い光が包んだ。「断罪せよ…パニッシュ・ブレイカー!!!」
しばらくの轟音の後、光が徐々に薄れ、うっすらと夢の泉が見えてくる、アイスドラゴン
の口から黒い雲が現れて消えると同時に少女は黒い球体の横に降り立つ、そこにMr.シャ
インとファイヤーライオンが駆けつける。
「やりましたねルナさん!!」
「ガルル…やったな」
「あ、ありがとうございます!」
「残念…ダガ時間…切レ…ダ……」
不意に後ろから聞こえた声に驚き慌てても振り返ると、其処にはダークマターが浮いてい
た、流石にマントもボロボロでかなりダメージを負ってるらしい。
「あぁ!何が時間切れなんだガルルルル…」
「まさか!」
ルナが後ろを振り返り、釣られて他の二体も後ろを振り返る、振り返ると球体の回りが剥
がれ、中から星柄の球体が現れ、それが一瞬闇の気を放ち、一人の魔導師に姿を変えた。
空には星が輝いていた。
「悪夢ノ復活ダ……」

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投稿日 : 2009/05/29(Fri) 01:18 
投稿者 : 優夜  


その空は、不気味だった。
その星の光は、歪だった。

その魔導師は、悪夢の象徴。

――ナイトメア、そう呼ばれる者の、復活。

「悪夢ガ復活シタ今、消耗シタオ前タチニ勝チ目ナドアルモノカ…志半バデ死ヌガイイ!」

言葉と共に漆黒の剣を構える。
先の大技…パニッシュ・ブレイカーによってかなりのダメージを負っていると言えど
彼にとっては、攻撃できない程ではないのだろう。
紅き一つ目が、ルナ達を睨み付けた。


ダークマターが突っ込んでくると同時に、ナイトメアの手中から無数の星が放たれる。
闇の力を持ったそれは、地を削り、全てを吹き飛ばさんばかりの勢いを持っていた。

救いがあるとすれば、狙いが定まっていない、という事だけか。


ナイトメアの復活という不測の事態に、思わず保っていた集中力が霧散する。
それによって、徐々に強くなる痛みが肩を蝕んでいった。
これでは大技を放つどころか、呪を唱える為に意識を集中させることすら難しい。


「…このままじゃ…っ」


逃げるにしても、どうやって逃げればいいのか。
自分が囮になったとしてもこの負傷では数分と持たない。
ナイトメアはともかく、目の前の仇はみすみす見逃してくれるわけが無いであろう事は容易に想像出来る。
第一、それは仇なのだ。あの時のようにただ逃げるなんて。
ぐるぐると思考だけが巡る、迫るダークマター。

ゆっくりと、しかし確実に。命中の精度が上がっているナイトメア。


逃れる術は無いと、人は言うかもしれない。
死ぬより他無いと、人は言うかもしれない。
けれどもそれでも、彼女は

「私、は…っ!」


目前に迫った星に、ダークマターに。

一つでも、生きる道を作る為に。

痛む肩を、吹き出る血を、死へ対する恐怖を。
全て押し込んで、口を開いた。

正確には、開こうとした。



『――星屑は塵となりて、夜露に消ゆ』

声が空間に響き渡る。
同時に、自分の目を疑う光景。

…つい先程まで目前に迫っていた、星が。
それが、言葉通り塵となって消失する。

『そして地に、私に平伏し、己が無力さを、嘆け』

続けて響いた言葉は、命令。
途端、重力が降りかかる。
のしかかるその圧力に思わずルナは地面に膝をつく。
目の前に迫っていたダークマターも、何事かとこちらに視線を向けていた。
見れば、ファイアーライオンもクラッコJr.もMr.シャインも
突然の出来事に戸惑いを隠せないようで、各々に視線をさ迷わせている。
その場に居た誰もが謎の圧力に行動を制限され、身動きが取れないようだった。
ナイトメアだけは、辛うじて宙に浮いたままではあったが。


拍手。

其れだけがこの空間に響く音になった。


「実に愚かだ、特殊技能に長けた生物であるという事は攻撃を主体にしているという事であるということは解かる、が
 それにしたとしてもせめて肉壁、うむ、言い方が悪いが仕方が無い。守りの人材も割くべきではあると思うのだが。
 少数精鋭とでも言うのか?まったく精鋭には見えないがな、何も考えず一人でただ目前の者を倒す、大いに結構!
 しかし美しくはない、その行為でどれだけの被害が起こる事やら、一人の負傷で全ての首を持っていかれんばかりだ!
 生きる気があるのであればお勧めはしない。一人で捌けるという確証があるのならばまだしも、だが……」


男の声は少々耳障りな程に大きく、長く続く。
手を眼前に振りかざし語る様は、演説者気取りか何かか。
誰一人として、こんな男は見た事が無かった。

周りの様子に気が付いたのか、ぐるりとルナ達を見回すと、再び口を開く。

「うん?あぁ、そうか、そうだ、私の事を何者だと言わんばかりの顔があるな、全て、全てだ。
 しかしそうか当たり前か、私はお前達誰一人として会った覚えはおろか見かけた記憶すらない!
 もしかしたら見たかもしれないが、記憶に留める価値は正直私にとってはない。必要性が無い。ああ。嗚呼私には関係ない
 興味をそそるような事は何一つとして、してはくれない。こんな舞台では金すら取れないぞ?
 あぁ、ゴミとかは飛んでくるかもしれんがまあ私はどうだっていい
 こんな生物達に必要以上に固執する目玉の気が知れん。
 …と、一応主だったなアレは。あんなもの一つとして私の世界ではないが」

一人、長々と語る。
彼の言葉を邪魔する者は誰一人としていない。…呆れ返っているだけかも知れないが。

ふ、とダークマターに目を向ける。
哀れみと、失望の入り混じった表情で、溜息を吐いた。


「しかし早計だったな、やはりお前も所詮はダークマターという固体の一匹という事なのか。
 今この状況でソレを復活させたからと言って何の意味があるのか、
 必要性は?今丁度使えたからと言って今後に回せるモノだろうか、ソレは?
 たかだか一匹で復活したソレの力など程度が知れているだろう。いいか?私から見たソレは、今、必要ない。
 圧倒的な力と言えど、振り回し消耗した所を突かれて終わるだけの玩具はいらない、
 ではソレはどうしようか。ふむ、それは問題、問題だ。
 かと言ってソレをそのまま放置していては変わらない事になる。
 消されて終わりだ、ならば現段階において必要の無い役者はどうする?裏に戻るだろう。戻るべきだ。
 うむ、やはり私の考えは、私の世界は間違っていない。ならば後は実行だけだな、そうだろう?」

満足そうに笑ってから、徐に右手薬指に口付ける。
その指を飾っていた薔薇の指輪が僅かに震えた気がした。

見る間にただの指輪の装飾であるはずの薔薇の花弁が枯れ果て
その中心から伸びる深緑の蔦が生き物のように蠢く。
それは持ち主の腕に絡みつきながらも、その手中で別な形をとり始めていた。

やがて現れたのは美しくも何処か禍々しさを放つ、一振りの大鎌。
それを片手に携え、ナイトメアに歩み寄る。

その姿は、まるで、死神。


ゆっくりとした動作で腕を振り上げる。

「こういう際には常に相手の言の葉を聞く。というのが主流だったりするが…、
 私はそんなものを聞きたい訳ではないからな。
 非常に残念だがご退場願おう。さらばだ、この世界の悪夢」

微笑み。

無情にも刃は、振り下ろされた。

止める術は無い。動くことすらままならないルナ達はただその光景を見守るだけ。
ある意味では、この状況はルナ達にとって有利なことなのかも知れないが。

だが。

「あ」

間の抜けた声と同時にその腕が止まる。
刃は獲物を狩り取る直前で止まっていた。


「忘れていた、忘れる所だった。これでは怒られてしまう所だ、其れは困る。大いに困る!
 私の世界に私の行為を否定されてしまっては私は私ではいられなくなる、
 つまり必要の無い私になってしまうと非常に困ってしまう!
 しかしこれを残すという行為も中々に気に食わないものがあるが、しかしそれは私の世界が必要だと言っている事に反してしまう
 それは嫌だ、それは間違っている、それは駄目だ。
 嗚呼私の世界、私の世界が世界である限り私は世界の為に動こう。
 と、なれば…悪夢よ」

鎌を下ろし、ナイトメアを見据える。
先程までの殺意は微塵も無く、ほんの少し悩むような素振りを見せてから、口を開く。

『眠りを守り誘うは、まどろみの中の母なる揺り籠、目覚めの鐘響くまで――』

何処となく楽しげにそんな一節を高らかに発する。
宙に浮いていたナイトメアが微かに震え、地に落ちた。
見る間に特徴的な柄を持つ球体へとその姿が変化していく。
それを、静かに噴きあがった泉の水がまるで繭のように取り囲んだ。

「眠れ悪夢、其の身を母の揺り籠に閉じ込められてな」

ゆっくりとも早くとも言えない動きで、水は泉へ帰っていく。
その中にナイトメアを内包したまま。

それを見届けた男は満足そうに

「うむ、これで私は世界に否定される事は無いな!一安心と言った所か。
 それにしてもこの後またあの目玉と対面するとなると非常に不愉快なのだが
 まあ四六時中アレと共に居るという訳でもないのだからまだマシなのだろうな。
 私から見ればアレと四六時中共に居る生き物は可哀想で仕方が無い
 …あぁ、そういえば揺り籠の囚人…、人か?
 違う気もするがまあいいか、それ以外にもイキモノは居たか、ふむ…」

ちらりとルナ達に視線を向けるが、直ぐに興味を失ったかのように背を向けた。
手持ち無沙汰なのか、右手に絡み付いたままの蔦を弄びつつ歩き始める。

「お前達のようなモノには興味が沸かない、特別強い訳でもなければ凡人から見て弱い訳でもない、言ってしまえば普通、か
 いや、私にとっての普通はこの世界にとっての普通でない場合もあるが、それはまあ置いておくか。
 とにかくお前達に興味が沸かん。この様子ではお前達の主や英雄のようなモノにも期待は出来ないな。あぁ出来ない。
 名を覚える必要すらない。いや、お前達という存在すら私にとっては必要が無い。興味が無いとはそういうモノだ。
 可哀想に、とでも言っておくか?屈辱しか与えないであろう哀れみの言葉でしかないが。
 ああしかしそうか、そうだな。私の世界にとって必要ではないお前達に興味を持つ必要性がまず見当たらないのか、
 そんな簡単な事も忘れるとはなんと愚かなのだ私は!」

立ち止まり叫んでから、一つ溜息を吐いた。
そうして天を仰ぎ見、驚いたように目を見開く。

「こんな事をしているうちに…!やはり言葉というものは曲者だな、用事はとうに済んでいるというのに長居をしてしまう、
 生き物が噂話だの何だのしているとそうなる現象だな!
 私の世界に見捨てられてしまう前に帰らねば。いや、見捨てはしないか、この程度ではきっと見捨てはしない。
 というわけで私は帰らせていただくが問題はないだろう?では、失礼する」

視線を彼女らに向ける事無く、言の葉を伝える。
そうして今度こそ彼はその場を後にする。

指一つすら、動かす事は無く。
ただただ、其れを見ている事しか出来ない。

無力であると思い知らされるような感覚に、誰かが歯軋りしたような、気がした。



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登場したオリキャラについて。

名称:タナトス(通り名)
性別:男性
年齢:20前後の印象を受ける。
外見:髪は肩までの長さの霞色、その先は背中ぐらいまでの辰砂色。
   右の瞳を包帯で隠しており、見えている左の瞳は菖蒲色。
口調:一人称「私」二人称「お前」「ソレ」「アレ」「コレ」名前では決して呼ばない。特別でない限りは。
   「〜だ」「〜だろう」
基本的に話が長い。彼の言う世界以外に興味を示す事は殆ど無く、ゼロの元についているのもその世界の為だという。
彼の行動原理である世界については後述。

戦闘は前衛系、大鎌を片手で振り回す程度には力はあるようだ。

言葉を発する事により、その内容に応じた効果を及ぼす事が出来る『言霊』を用いるが
術者よりも精神力が高い者や、言葉の通じない者には影響を及ぼす事が出来ない。
なお、その場の状況が著しく変化することによっても効果が解除される事がある。
例…今回の場合、平伏す対象である彼がその場から去った事によりルナ達への呪縛は解除される事になる。
ただし今回は、興味を失った時点(背を向け、立ち去ろうとした時点)で、効力は切れています。
他、術者の意思により、解除される事もある。

彼の発言が無駄に長いのは(文字数的な意味で)仕様である。

あの場に居た誰とも(騎士マターは除く)面識は無いようですので、
動けなくなった理由が彼の使用する『言霊』である。ということは現段階では把握出来ないものと思われます。

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投稿日 : 2009/05/29(Fri) 21:02 
投稿者 : ノーザンライツ  


鉄の床の上を人々が行きかって、足音を反響させる。誰かが誰かに指示をし、されたほうは、
足音や機械の駆動音に掻き消されてしまわないよう、大きな声で返事をする。
オレンジオーシャン要塞は、五日後に迫ったハルバード発進の準備を行う者たちで、騒がしく
なっていた。ハルバードに積みこむ武器や食料などの調達をするもの、計器類や武装の点検を
行うもの、さまざまだ。要塞に出入りするものも多く、何事かと様子を見に来るものや、この
作戦の総指揮をとるメタナイトに同調し、手伝いを申し出るものもいた。
そんな中で、カービィはなにをしていたのか。なにもしていなかった。ワープスターの点検と
いっても、彼は完全な機械ではないし、輝き具合を確かめて、だいじょうぶ? と尋ねて、そ
れでおしまいだった。手持ちぶさただが、皆それぞれに割り振られた仕事が忙しいようで、な
にかすることはないかと訊くのもためらわれ、そのために、カービィはハルバードの中をぶら
ぶらと歩いていた。

「ここがハルバードの心臓部だ。……本当に任せて平気なのか? ヒューマノイドとはいって
も、耐えられる限度というものがあるだろう」
「平気です。破損したら修理すればいいのですから」

ソードナイトに案内されて、ハルバードの心臓部、リアクターのある部屋へと入っていく、一
人の少年。少し前にオレンジオーシャンへやって来て、ソードナイトとブレイドナイトと、な
にごとか話し合っていたのを、カービィはちらりと見た。話の内容はよく分からなかったが、
彼も、メタナイトと共にハルバードへ乗りこみ、フロリアへ向かうことになったようだった。
一旦は閉じられたドアを開け、露出した機器類が放つ点々とした明かりを見ながら、暗い通路
を進む。通路が終わり、開けた場所に出ると、そこにはリアクターがあり、その前にソードナ
イトと少年が立っていた。ソードナイトの指示に従い、少年が工具でもって、リアクターの一
部を取り外し、内部に上体のみ入りこむ。「ジジッ」と電流が走るような音が聞こえてくる。

「あぶないよ、やめさせないと!」
「カービィ? どうしてここに」
「それはいいから!」
「ガントレット、大丈夫か!」

ソードナイトが呼びかけるが返事はなく、リアクター外部に出たガントレットの下体は少しも
動かない。過度の熱や電流に中枢を壊されてしまったのではないか、と心配になったが、しば
らくすると、何事もなかったように外へ出てきた。

「痛みが見られたので、修理しておきました」
「怪我は?」
「ありません」
「無茶はよくないよ!」

声をかけると、ガントレットはこちらを振り向いて、何の感情も浮かばない目で見つめてきた
。今の言葉をどう受けとめているのか、読み取れない。相手は視線をそらし、取り外したリア
クターの表面部分をはめ直してから、ソードナイトに案内されて、別の場所へと移動した。リ
アクターは大きいので、点検するにもさまざまな方向からしなければならないようだ。

「ボクも手伝う」
「駄目だ」

カービィの言葉に返事をしたのはソードナイト。ガントレットはというと、振り向きもせず、
点検箇所を見つめている。

「リアクターはハルバードの心臓部だから、点検作業でも一歩間違えば重傷を負いかねない」
「ガントレットだっておんなじじゃないかあ!」
「彼は電気に耐性をもつヒューマノイドだ。だから、私たちが防護服をつけて入っていかなけ
ればならないような箇所でも、ガントレットはあのままで点検を行える。カービィ、おまえは
ヒューマノイドではないだろう」

黙りこむ。確かに、静電気程度でも驚いて手を引っこめてしまう自分に、その何百倍もある電
流が縦横無尽に駆け巡っているところを点検できるとは思えない。オレンジオーシャン海底に
沈んでいたのだから、修理するべき箇所は多いのだろう。

「ワープスターの点検をしてはどうだ? 陛下が技師を送って修理させたとはいえ、乗りこな
す者にしか分からない微々たる加減というものがあるだろう」

それはもうした、と言いそうになるが、ここに残ってもすることがなく、邪魔をしてしまうか
もしれないので、大人しく部屋を後にした。

*

ご苦労だったな、と礼を言われるが、それに対して何の反応も返さず、ソードナイトを少しの
間見てから、リアクターのある部屋を出る。リアクターは、ある程度なら自身で思考し、行動
することが出来る機械だ。だが、メモリーなどの電子機器を介しても、会話は出来ない。この
要塞に来る途中で出会った、名前も分からないロボットのことを思い出す。原形をとどめない
ほどに破壊され、無残に散らばっていたロボット。中枢と思しき部品を拾い上げ、自身のメモ
リーに接続し、なにがあったのかを読み取ろうとするが、モードを切り替えた視界に映るのは、
灰色の砂嵐ばかり。時折かすかに見える歪みのようなものも、何を表しているのかまるで分か
らない。彼はただの鉄屑になっていた。
 中枢の部品は、そこに置いてきた。運がよければ、近くを通りかかった人間が見つけ、直し
てくれるかもしれない。運がよければだ。あれほどまでに破壊されたロボットを修理出来る、
天才的な機械技師でも通りかかれば。所詮、すべて運なのだ。運がよければ長持ちするし、運
が悪ければあっという間にスクラップになる。

「やっほー!」

桃色の球体に手と赤い足がはえたものが、手を振りながら駆け寄ってくる。だが、待たなけれ
ばならない理由もなく、立ち止まらずに歩き続けた。相手は自分の隣に並び、顔を見上げてく
る。弾力性のある体をしているらしい。顔と胴体が一体化しているようで、首にあたる部分が
見当たらない。それは腕や足にもいえた。宇宙には不思議な生物が大勢いるものだ。

「ガントレットくん?」

頷いて返す。
相手の自己紹介によると、彼は「カービィ」というらしい。この星に住んでいる生命体は、皆
このような一頭身の球形型なのだろうか。準備のために要塞内を走りまわっている人々も、ソ
ードナイトも、形こそ違うが、皆ほとんどが一頭身か二頭身である。

「無事だった?」

再び、頷いて返す。
するべきことがなくなってしまった。海底から回収したと聞いたので修理箇所は山ほどあるの
かと思っていたが、技師は意外にも大勢いるらしく、ほとんど直し終わったのだという。
初期のロボットは、人間に命じられなければ動けない存在だった。組みこまれた選択肢の中か
らしか、行動を選べなかったのだ。その自分が、何をすればいいのか分からずにいるとは。そ
れが、ロボットとヒューマノイドたる自分を分ける境目なのだろうか。

「ねーってば!」

口を閉ざしたまま振り向く。こちらからの言葉を待っているようだったが、かけるべき言葉も
ないので、相手が発言するのを待った。

「ボク、することないんだ」
「そうですか」
「いっしょにいてもいいかな?」
「どうぞ」

共にいてそれで何かが変わるのか疑問をもったが、断る理由もなく、頷いた。姿形だけでなく、
思考まで変わった生命体であるらしい。

*

橙色の夕陽が放つ光を受けて、同じ色に輝く海。この眺めはまさに「オレンジオーシャン」で
ある。夕陽の下には光の道ができており、波の動きに合わせて流動していた。そんな景色を、
はるか上空から見下ろすものがひとり。金の髪が、海からの風を受けて揺れる。帽子と顔まわ
りに巻きつけた布の間からのぞく瞳は、メタナイトの要塞を見下ろしていた。
名もなき絵画より生まれた魔術師。名は、ドロシアソーサレス。彼女は、マルクに手渡された
「ゼロが恐れる最後の宝物」、ラブラブステッキを見る。ステッキは、魔法の絵筆のように彼
女のすぐそばを浮遊し、ついてまわって離れない。ハートが光を放ちながら回っている。ずい
ぶんとかわいらしい武器だ。こんなものをゼロが恐れているのだと思うと、笑いたくなる衝動
さえわく。
実体化させた絵から得た情報によると、メタナイトは今、大勢の仲間たちと共にハルバードの
発進準備をしているらしい。目的地はフロリア。ノヴァを呼び出すために巡らなくてはならな
い七つの惑星の、スタート地点。もっとも、ノヴァはマルクが呑みこんでしまったのだから、
彼らの目的がノヴァを呼ぶことであったとしたら、とんだ無駄骨を折ることになる。ノヴァは
まだ存在する、と思わせつつ、行く手を妨害したほうがいいのだろうか。ノヴァはいないと教
え、希望を打ち砕くほうがいいのだろうか。

(頭脳プレイは他の奴らに任せましょ。とにかく、ハルバードを壊しちゃえば、大勢が一度に
移動する手段は減るんだし)

ドロシアはひとりだが、実体化させた手下を数十人、要塞内にもぐりこませてある。大勢が要
塞内に集い、協力をすると申し出ているので、難なく潜入させることが出来た。声をかければ、
待機させてある手下と合わせて、外と中から同時に攻められるというわけだ。

(今の私には、これがあるものね)

ラブラブステッキは、ドロシアの忠実な僕のごとく、彼女のそばへ付き従っていた。

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