×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

小説の中へ [21]



------------------------------------------------------------------------------- 
投稿日 : 2009/05/31(Sun) 23:48 
投稿者 : シンキ   


 夢の泉は静まり返っていた。
 復活を遂げ、新たな脅威となるはずだった悪夢は突然の来訪者によりあまりにも呆気な
く封印されてしまった。その男も演説のような台詞を長々と並び連ねた後どこかへ消えて
しまった。
 彼は一体何者だったのだろうか。間違いなく言えるのはルナ達とは一切の面識がないと
いうことだ。
 彼の現れたタイミング、そして行動はルナ達にとって有利な展開ではあったものの、さ
っきの話を聞く限りではゼロ側に与する者であると判断するべきだろうか。
 黒い剣を持ったダークマターがあの男とは面識のある様子だったこともあり、やはり現
段階では敵と見做すのが妥当だ。
 そして、問題はここからである。何とか命拾いしたものの今のルナはまともに立ち上が
ることすら儘ならない。先程かけられた圧力によって肩の痛みがより尋常ではないものに
なっていたからだ。普通なら失神していてもおかしくない。今、こうして意識を繋ぎとめ
られているのが不思議なぐらいである。
 このままでは眼前の仇に止めを刺されるのも時間の問題……のはずだった。だが、ダー
クマターはこちらの存在を忘れたかのようにさっきの男が去っていった方角を忌々しげに
睨み付けていた。
「アヤツメ……ヨクモ私ノ邪魔ヲ……!」
 ダークマターの目には怒りの色が映っていた。事情はよく分からないがどうもそこまで
友好的な関係ではないようだ。そもそもあの男自体が異質な雰囲気ではあったが……。
「ルナさん、今のうちに……」
 クラッコJr.が小声で寄ってくる。今のうちに逃げよう、という事だろう。相手も深手を
負っているとはいえ腐っても上位クラスのダークマターだ。この状況でも勝てるかどうか
は危うい。
 幸いにも戦略上ここでの最大の障害となっていた悪夢はどういうわけかいなくなった。
もしデデデ城が奪還できていればすぐに応援を呼ぶこともできるだろう。回復役でもある
彼女が無理にここで戦う必要もない。
「でも……」
 しかし、ルナは迷ってしまった。やはり家族の仇を討つチャンスをこのまま見逃すとい
う決断は彼女には難しかった。
「ルナさん早くしてください」
 Mr.シャインからの小声での催促。

 どうする? 逃げる? 戦う?

 普通に考えれば逃げるべきだろう。相手の不意をついて攻撃できたとしても止めを刺せ
る可能性は低い。今の奴ならこちらが逃げても構う気力が失せているかもしれない。引く
なら今のうちだ。
(それでも……!)
 結局、それが最悪かもしれない事態を招いてしまった。
 ルナは目の前の仇への憎しみのあまり、気づいたときには既に敵と目が合っていた。
「……コノママ引キ下ガレバ、ぜろ様ノ信用ガ失墜シカネナイ。貴様ラノ首ヲ手土産ニサ
セテモラオウカ」
 ダークマターが再び剣を構え、近づいてくる。その敵の表情には段々と余裕が戻ってき
ていた。
「ああ……」
 クラッコJr.が小さく震える。幼いあまり間近に迫りくる敵に恐怖を隠せないのだろう。
「ココデ特殊攻撃役ヲ一掃デキレバ今後ノ戦イヲ有利ニ運ベル」
 剣先がルナの眼前に突き付けられていた。次の瞬間にも深い闇の底に葬られる事は間違
いないだろう。ルナにももはや抵抗する術は残されていなかった。
(スラッド……)
 仇を討てなかった悔しさと、もう彼に会えない悲しさの両方が交じり合い、ルナの目に
涙が溜まっていた。
「サラバダ、娘ヨ」
 ダークマターが剣を振り上げている。

 ――もうダメ……。

 観念し、目を強く閉じるルナ。それに続けて焼きつくような痛みが……来なかった。そ
の代わりに場違いな音楽が耳を突き刺してきた。
 何かの弦楽器の音だろう。どこか切迫した雰囲気にさせるようなメロディ。少なくとも
現実で勝手に聞こえてくるはずはない。
 それまでの恐怖など消し飛び、ルナは固く閉じていた目をパッと開けていた。
 見るとダークマターは振り上げた剣を止めたまま、左の方をじっと睨んでいる。
 その視線を追うと、堂々とギターを演奏する青年の姿があった。
「オイ、貴様ソコデ何ヲシテイル」
 青年、エルムはその声に反応して弦を引く手を止める。
「おいおい折角BGM流してたってのにどうしてそこで止めちゃうかなー」
 エルムは溜め息をつくと両腕をブラッと垂らし、項垂れるような姿勢をとっていた。そ
の背後にコマンドタイプのダークマターの姿が確認できる。ゼロ側の者だとすれば剣士の
ダークマターには思い当たる人物がいた。
「オ前ガ例ノ新入リカ。BGMトハ何ダ。私ノ気ガ逸レテシマッタデハナイカ」
 ダークマターは剣を降ろし、エルムの方に体を向き直す。
「だってさ、今まさに敵に止めを刺すってところでこの空気じゃ盛り上がらないだろ? 
だから雰囲気に合う曲を弾いてやってたのに……。てか今の曲即興で作ったんだぜ? 俺
のセンスすごくね?」
 エルムは一応上司に当たるダークマターに対しても横柄に話し始める。これが味方でな
ければ今すぐにでも斬り捨てているところだったが、そこは何とか抑えた。だが、苛立つ
あまり今の状況を忘れかけていた。
「ガルル……食らえ!」
 ファイアーライオンは隙だらけになっていたダークマターに渾身の突進攻撃を加えた。
ルナの魔法によるダメージの影響もあり、相手は完全によろける。
「今のうちです!」
 Mr.シャインがルナの腕を引っ張って強引に逃走を試みる。
「痛っ!」
「すみませんが我慢してください。少しの辛抱ですから」
 当然深い傷を負っている肩に痛みが伝わっているだろうが、ここは耐えてもらうしかな
い。今全力で逃げなければ追いつかれてしまう。
「おっと敵前逃亡か?」
「逃サン」
 ダークマターが追いかけようとするが、途端に柔らかい何かが圧し掛かってくる。
 それはアイスドラゴンだった。その巨体を重力に任せ、背後から抱きすくめるようにし
てダークマターをその場に押さえつけている。彼自身が逃げる事などは一切考えてないだ
ろう。
「アイスドラゴン……すみません」
 Mr.シャインは心の中でアイスドラゴンに敬意を送っていた。彼もさっきのルナの魔法の
衝撃で大きなダメージを受けているはずなのにあんな勇敢な行動ができるとは……。
 本当なら彼も助けてあげたかったが、今はそんな余裕のある者はいない。
(いつか、必ず迎えに行きます)
 彼の姿を後に、Mr.シャイン達は走り去って行った。

「グッ……早クコイツヲドウニカシロ!」
 剣士のダークマターがエルムに訴えかける。本来であれば自身を拘束する敵を押し退け
自力で脱出する事など容易だが、大幅に体力を消耗した今の彼にそれだけの力を使う余裕
はないようだ。
「あー悪い。俺そんなスーパーヒーローみたいな馬鹿力ないし」
「貴様……」
 つくづく役に立たない奴だ、と彼は思った。妙な演奏で気を逸らし、こちらが動けない
間も易々と敵を見逃し、そしてこの邪魔者を退かす事もできないとは……。
 一体何の意味があってこんな足手纏いを応援に寄こしたのだろうか。
「まぁ応援歌なら弾けるし頑張ってくれ」
 エルムは再びギターを構えると先程のものとは打って変わって明るい曲調の曲を弾き始
めた。
「ソンナモノナド……ム、何ダコレハ?」
 妙な感覚だった。身体の奥底から何かが、泡のようにプツプツと湧き出てくるようだっ
た。これは闇だ。闇の力がどんどん高められていく。
 ある種の高揚感も得たダークマターが軽く力を入れただけでアイスドラゴンの巨体が宙
に弾き飛ばされた。ドスンと地面に落ちた後、氷竜はそのまま動かなくなっていた。
「ホゥ……コレガオ前ノ能力カ」
「そゆこと。ただ効果があるのは演奏中だけなのが玉に瑕だけどな」
 エルムが演奏を切ると途端に彼の言った通り、力が抜けていくのが分かった。
「マァ良イ。私ハココノ防衛ヲ続ケル。オ前ハ今逃ゲタ奴ラヲ追エ」
 一応夢の泉を防衛した事にはなるが、こちらの戦力を削がれ、おまけに元々こちらの手
駒として使っていたアイスドラゴンを除き、敵を誰一人として仕留められていないのでは
意味がない。
 自分が追いかけてもよかったのだが、どうせ戦うのであればあの娘とは全力で決着をつ
けたい。この男――話によるとエルムという名だったか――が仕留めたならそれでよし。
逃がしたのならこいつに責任を押し付け、再戦の機会を窺おう。
「オッケー。任せときなよ剣士君」
 エルムは親指を立て、軽いノリで了承する。続いて彼についているコマンドが身を乗り
出した。
「エルム様は単独での攻撃手段が乏しい為、私も同行させていただきます」
 コマンドはそう告げるとその隣で手を一振りしてから先に歩き出したエルムの後に従順
についていく。
 一人残ったダークマターは剣をしまい、その場に佇んだ。
「ククク……再ビ相見エル時ヲ楽シミニシテイルゾ、娘ヨ」

-------------------------------------------------------------------------------
投稿日 : 2009/06/09(Tue) 19:55 
投稿者 : ヨツケン  


〜話は遡ること雲の隠れ家出発から数時間後〜

雲の隠れ家を発ってから数時間、未だに一行は目的地に向かって進んでいた。
「まだ着かねぇのか…」
猛スピードで移動するロブの背で、自分の膝の上で軽い寝息をたてながら、すやすやと寝
ている少女の、蒼くサラサラとした髪を優しく撫で上げながら青年がぼやく。
「……よし、止まれいぃ!」 
「ようやく着いたか……ロブっ止まれ!!」
デデデ大王の声を合図に、周りの者逹が一斉に移動を止める。慌ててスラッドがロブに呼
び掛けると、ロブはピピピと電子音で答え、背に乗る者達を落とさぬ様に、ゆっくりと停
止する。ロブが完全に停止したのを確認すると、スラッドはルナを両手で抱き上げ、ロブ
の背から飛び降りる、同じように、後ろに乗っていたファイヤーライオンもロブの背から
ゆっくりと降りた。
「さてと…、ルナ起きろっ」
「……んっ、スラッド…もう着いたの?」
スラッドが抱き抱えた少女の身体を揺り動かしながら呼び掛けると、少女は擦りながらゆ
っくりと目を開き、潤んだ瞳で愛しそうにスラッドの顔を眺め、ゆっくりと呟く。
「あぁ、やっと着いたぞ…」
「!……あ、あの……スラッド……」
「んっ?どうした?」
「あの、その……お、降ろして……」
「んっ?あぁ、わかった……」
ルナが頬を赤く染めながらスラッドに頼む。どうやら抱き上げられてる事に途中で気付い
て、急に恥ずかしく成った様だ。彼女が頬を赤くしたのを見て、スラッドは一旦身体を屈
め、彼女の足が地面に着いたのを確認すると、支えていた腕をゆっくりと彼女の身体から
離す。
「此処でお別れ…だな……」
「……うん」
スラッドが辺りを見回すと、クラッコが一つしか無い眼を真っ赤に染めながら独りしか居
ない息子との別れを雨を降らしながら惜しんでいるのが眼に入った。ゆっくりと周りを見
回した後、スラッドが少女に話し掛けると、彼女は悲しそうな表情を浮かべながら顔を逸
らす。
「……なぁルナ、一つ約束しないか?」
「約束?」
「あぁ……無茶は絶対しないって……」
「……良いよ、その代わり、この作戦が終わったら、私のお願い聞いてくれる?」
「あぁ……約束だ……」
そう言ってスラッドは少女の腰と髪に手を添え、彼女の頭を引き寄せ、彼女の唇に顔を近
付ける。少女はそれを受け入れるかの様に、身体の力を抜き、瞳をゆっくりと閉じる。彼
女が瞳を閉じた後、スラッドは彼女に自分の唇を静かに近付け、少女の熱く甘い吐息を奪った。
「スラッド…大好きだよ……」
「あぁ…俺もだ…ルナ……」
ゆっくりと唇を離し、言葉を交わした後、スラッドがルナを優しく包み込む様に強く抱き
締める。彼女の身体は細くて柔らかく、繊細でそして身体の奥底から甘く優しい香りがし
た。少しでも強く抱き締めると硝子細工の様に簡単に壊れてしまいそうだった。彼が腕に
込める力を強める度に少女の身体はギシギシと悲鳴を上げた。 
「す、スラッド……く、苦しいよぅ……」
「……もし辛くなったら何時でも此処に帰って来い……」
「うん…わかった…」
彼の腕の中で、ルナが頬を赤く染め、息を荒げながら必死に訴え掛けると、彼は優しくそ
う言って、ようやく腕に込めた力を緩めた。
「よし、では出発だ!」
「おっと時間だ…、じゃ…後でな……」
「うん…また後で、頑張ってね……」
大王の号令を聞き、スラッドがゆっくり少女の身体を解放すると、ルナは彼に向かってにっこりと微笑んだ後、慌て
てMr.シャイン達の背を追い掛けて行った。それを見届け、スラッドは再びロブに飛び乗
る、するとゆっくりとデデデ大王が近付き、ロブの背に乗る。
「同乗させて貰うぞ、クラッコがあんな状態ではワシまで乗せて飛べんだろうからな…」
大王が指差した先を見ると、未だにクラッコがゼロ状態で眼を潤ましているのが遠目から
でもよくわかった、よほど息子が心配なのだろう。
「わかったぜ大将、行こう!、」
「うむ、よし出発あぁっ!」
「行くぜ、ロブ!!」
大王が号令を掛けると周りの者逹は一斉に声を上げ、再び移動を始める、ロブもスラッド
に呼び掛けられ、ピピピと電子音を鳴らし、高速で移動を開始した。暫く走って草原を抜
けると、やがて遠方に巨大な城が見えてきた。
「見えて来たぜ…大将」
「うむ……」
二人が少し話してる間にも城がどんどん迫ってくる、もう直ぐそこまで城が迫っていた。
「もう少し…」
城のテラスに立っていた少女は、側に立て掛けて置いた弓を手に取り、指輪から生成され
た矢を握り、深く深呼吸をして、静かに狙いを定める。その目にはスラッドが写っていた。
「皆、気を付けろ、何が仕掛けて在るかわからんぞ!」
大王が後ろの部下達に呼び掛けたと同時にロブは城へと続く跳ね橋を渡り終え、少女は握
り締めていた矢から手を放した。
「……入った」
その瞬間、スラッドの頬を何かが通り抜けた。
「くっ!?……」
「どうしたスラッド!」
「な、何でも無い」
血の滴る頬を抑え、何かが飛んできた方角を見ると、オレンジ色の髪をした少女が弓を構
えて此方を睨んでいた。
「あの娘は……くっ!」
オレンジ髪を見ていると、いきなり上から不思議な色の液体が降ってきた、咄嗟に身をか
わし、液体を避ける。液体が少し腕に掛かり、掛かった場所が焼ける様に痛んだ。
「ロブ!、一気に抜けろ!!」
スラッドが叫ぶとロブはピピピと電子音を鳴らしスピードをあげる、後ろにいたクラッコ
達は自分達から少し後ろで黒い雲と戦っていた。
「!……スラッド!!」
「なっ…!?」
デデデ大王の呼び掛けに反応して、スラッドが城の方を見ると、爆発音と共に無数の黒い
球体が城の至るところから放たれた、最初の黒い球体の一団は何とか避けれたが、体勢を
立て直す間も無く、再び二団目が撃ち込まれ、ロブの前後左右に着弾、そして激しい爆音
と共に爆発を起こした。
「ぐはあぁ……!!」
余りの爆発の強さに煽られ、スラッドとデデデはロブの上から投げ出され、別々の方向へ
飛ばされて行った。 
「くそ…まさか大砲まで使うとは……」
ロブの背から投げ出され、スラッドは何処かへ飛ばされ、地面に落ちた。幸いにも身体を
強く打っただけで、何処にも怪我は無い様だった。
「早く大将と合流しねぇと…」
そう言ってスラッドが両手を突き、立ち上がろうとした時、彼の目の前に刀が突き付けら
れていた。スラッドが顔を上げると刀を突き付けている青年の冷たい瞳がスラッドを見下
ろしていた。

------------------------------------------------------------------------------- 
投稿日 : 2009/07/06(Mon) 23:04 
投稿者 : フラービィ  


「さあて、引っ掻き回してやろうじゃないの」
夕暮れに浮かぶ魔女。その周りを、ふわふわと可愛らしいステッキが遊泳している。その
ステッキを掴み取り、眼下の建物に向けて思いっきり振った。ステッキの先から、星とも
ハートとも取れない物体が、流れ星のように一筋煌き、着弾。立て続けに幾筋もの流星を、
魔女ドロシアは建物にぶつけ始めた。

「これは……どうしたことだ」
同時刻、基地の中では襲撃の警報を伝えるサイレンが鳴り響いていた。全ての部屋に地響
きが伝わる。小刻みに、かつ大波のように轟音と地響きが、サイレンの音と混じり、戦場
の不吉なメロディーを奏でていく。その旋律のさなか、基地内の各々に緊張が走る。
「ご報告いたします!」
メタナイトがいる会議室の扉を勢いよく開け、二人の兵士と、会議に参加していなかった
フラービィが流れ込んできた。
「基地上空に正体不明の浮遊した物体を発見。先程からの爆音や衝撃は恐らくそれから発
射される飛来物が原因であると思われます!」
「ついでに言わせて貰うけれど、浮遊した物体は一つ。……いや、一体と言った方がいい
かもしれない。この間のダークマインドみたいに、単独犯だ」
最後に、多分ね、と付け加えてフラービィは口を閉じる。報告をうつむき加減で聞いてい
たメタナイトは顔を上げた。
「飛び道具隊は対象への攻撃と飛来物の相殺! 半数づつをそれぞれあてがえ! 地上部
隊は基地内外の警備に当たれ!」
サイレンに負けないほどの大声で発せられた各部隊への通達を、先程入ってきた兵士二人
が聞き、すぐさま部屋の外へと駆け出した。部屋の中にいた兵士、メタナイツもそれぞれ
の持ち場へと急ぎ、残ったのはフラービィとメタナイトだけになった。
「ところでメタナイト、ハルバードの調整はどれくらい?」
「飛び立てるようになるまではまだ大分かかる。が、兵器は使えるはずだ」
その言葉を聞き、フラービィは笑みを漏らす。
「少し借りるよ」
その言葉を残して、彼は部屋から離れようと外に走りかけた。が、何かを思い出したかの
ように立ち止まる。
「……言い忘れてた事がある。挟み撃ちには気をつけて」
次にメタナイトが見た時には、彼の姿は部屋になかった。

-------------------------------------------------------------------------------
投稿日 : 2009/07/10(Fri) 22:20 
投稿者 : ノーザンライツ  


(……まずいことになったな)

 格納庫のハルバードへ向かう最中、得体の知れない生きものたちに
囲まれたフラービィは、心のうちで呟いた。生きものたちは、子どもの
らくがきのように線が崩れ、ペンキの入ったバケツを数個かぶったように
でたらめな体色をしている。襲いかかるタイミングをはかっているのか、
彼らはフラービィの周囲に円を描いて並び、動かない。張り詰めた空気が
胸を圧迫する。バックパックに手を伸ばせば、中の道具を取り出すより
前に彼らは飛びかかってくるだろう。

「てい!」

聞き覚えのあるかけ声と共に、生きものの一匹が真っ二つに割れ、
絵の具があたりに撒き散らされる。緑色の帽子をかぶったカービィが、
両刃の剣を持って立っていた。その背後に、見慣れない人物を連れて。

「助かったよ」
「どこに行くの?」
「ハルバード。武装は使用できるみたいだからね、外から攻撃して
きてる奴に対抗できるかもしれない。それでカービィ、お願いが
あるんだけど」

*

 外から見ていても、内部で起きているだろう騒ぎの様子は分からない。
蒼い髪を風になびかせつつ、ドロシアは上空に浮かび、攻撃を続けていた。
そろそろ中へ入って行動を、つまり本来の目的であるハルバードの破壊を
行うべきか、とドロシアが考えはじめたとき、要塞の一角から星が飛び
出してきた。それは猛スピードでドロシアのいる方向へ飛来する。星の
背にはピンク色の球体が、剣を片手に乗っていた。

「あーら、いきなり英雄のご登場? 要塞内はよっぽど戦力が不足して
るのかしら」

 ドロシアの挑発には答えず、カービィは星……ワープスターの上へ立ち
上がり、斬りかかってくる。ふわりと避け、シャボン玉に似た虹色の球体を
出し、カービィに向かって高速で投げつける。あるものはかわし、ある
ものは剣で斬りつけてはね返すカービィ。
 カービィの前ででラブラブステッキを使用するわけにはいかない。
マルクが嘘をついていなければ、ラブラブステッキは破壊されたことに
なっているのだから。これはあくまで、最終手段。それに、カービィなら
ともかく、戦艦ハルバードならば、絵筆を使った攻撃でも破壊できるだろう。

(それにしても……)

 カービィと戦いながら、ドロシアはなにか引っかかるものを感じていた。
向こうの攻撃は当たらないが、こちらの攻撃も当たらない。全力を出して
戦っていない、という印象を受ける。攻撃を当てて倒せるチャンスが
めぐってこないので、こちらも全力を出すことができず、だんだんと
苛立ってくる。なにか別の目的でもあるのだろうか?
 突然、カービィはドロシアと距離をとり、どこかから一台の携帯電話を
取り出した。アンテナの先に、本体と不釣合いなほど大きな星が輝いている。
それを顔の横に当て、カービィは電話の向こうにいる何者かと会話している。
今だ。

「もらったわ!」

 今まで放ったどの弾よりも大きなものを生み出し、狙いを定めて
カービィへ投げつける。球体の影に隠れて、カービィはワープスターごと
見えなくなった。邪魔者は消えた! ……そう思ったドロシアの耳に、
遠くからの轟音が響いた。次の瞬間、凄まじい衝撃と熱が体を襲う。
衣服が焦げ、髪が焼かれた。悲鳴を上げることもできないほどの痛みに、
ドロシアは意識を失いかけた。

*

「フラービィ君、当たったよ!」
『それはよかった』
「でもちょっと……やりすぎじゃないかなあ」
『放っておいたらこっちがやられていたかもしれないんだ』
「うん……」

 すっかり焼け焦げて動く気力もなくなったらしいドロシアと、要塞の
離陸用カタパルトに姿を現したハルバードとを見比べる。
 今、ドロシアを襲ったレーザーは、ハルバードの甲板にある二連主砲の
下部砲台から放たれたものだ。フラービィに、エネルギーを充填するまで
ドロシアをひきつけてほしいと頼まれたので、気付かれないように誘導
していたのである。できればレーザーの射程内に、とも言われたが、
どれくらいまで届くのかよく分からなかったため不安だった。しかし、
ドロシアはあの有様なので、なんとか成功したようだ。

『まだ戦意はありそう?』
「わかんない……でも、もうボクひとりでもだいじょうぶそうだよ」
『じゃあ、僕は要塞内の騒ぎをどうにかしてくる。気をつけて』
「うん」

 携帯電話をしまってから、カービィは目の前のドロシアを見つめた。
無残な姿を呈していても、髪の間からのぞく彼女の瞳はぎらついていた。

-------------------------------------------------------------------------------
投稿日 : 2009/08/28(Fri) 00:38 
投稿者 : ヨツケン  


「娘ヨ……オ前デハ我ヲ倒ス事ハ出来ン!」 
そう言い放ち、騎士の格好をしたダークマターが漆黒の剣を構え、ルナに向かって飛んで
くる。急いで障壁を張ろうとするが、声も出ず身体もまるで石に成ったかの様に動かない。
「消エロ……」
振り上げられた剣は弧を描きながらゆっくりと少女に迫る。やがて、剣が肩を斬り裂き心
臓に迫る。余りの痛みに声を上げようとするが、叫びは声に生らずただ意識だけが闇に落
ちて行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「うっ…ううっ……はっ!!」
悪夢にうなされ、眼を覚ますと最初に見えたのは石造りの天井、そして次に自分が寝てい
たベッド、悪夢を見ていたからか頭痛が酷く、眼のピントが合わなかったが其れだけは判
った。
「ここは一体……ッ!!」
起こそうとして身体に力を入れた瞬間、肩に激痛が走る。そこでようやく左肩を斬られた
事を思い出し、肩に右手を当て、痛みをこらえながら呪文を唱える。
「また、なのかな……」
あれだけ魔力を使った魔法を受けても倒れ無かったダークマター、その後、クラ君に促さ
れても動けずただ成り行きを観ていて、遂には気絶してしまった自分。
「やっぱり、私はあの時から何も変われて無いのかなぁ……」
そんな事を考えながらベッドに身を沈める。
「帰ろう……このまま、戦いに参加してても皆に迷惑を掛けるだけだ……」
「何処に帰るんだ?」
不意に聞こえた声に振り向くと、そこには所々を包帯に覆われた、銀と赤の髪をした彼が
立って居た。
「スラッド……凄い怪我!!どうしたの?」
「あぁ……戦いの時、ビュートって奴にチョットな……」
自分のベッドの横に来た彼の身体を見てルナが慌てて身体を起こし、彼の身体に手を当て
急いで呪文を唱える。
「ありがとう、だが……」
スラッドはそう言って素早く彼女の肩を持って抱き寄せる、いきなり抱きしめられた彼女
は彼女を赤らませながらもトロリと眼を閉じる。
「俺は言った、ルナの帰る場所は此処だと、辛く成ったら何時でも帰って来いと……」
「うん……」
「だから行って来い、そして帰って来い……必ず元気でな!」
「ふぇ?」
「心に迷いが有ったら嫌だろ?だから行って迷いを払って来い!」
「スラッド……うん!」
スラッドが励ますと彼女は少し元気を取り戻した様で、元気な声で返事をして何やら支度
を始めた。
「あっ…スラッド」
「ん?何だ」
「これを持ってて欲しいの……」
そう言って彼女が差し出したのは、彼女が何時も肌身肌身離さずに着けていた、三日月型
の金色のペンダントであった。
「必ず戻って来るから……」
「ルナ……あぁ約束だっ!!」
「じゃあ、行って来るね♪」
「あぁ」
そう言ってベランダに出ると彼女は呪文を唱え始めた。
「星よ……我に暗き宇宙を渡る翼を与えよ……スペース・フライ」
呪文を唱えると彼女を光が包み空へ向かって飛び立つ、それを見送りスラッドは少し頭を
悩ませた。
「大将に何て言おうか……」

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

「ムッ!」
夢の泉で報告を終えた騎士の格好をしたダークマターの上をデデデ城の方から出た一筋の
光が通り抜ける。
「アレハ……アノ娘カ?マァ良イ……」
そう言って漆黒の剣を抜き赤い瞳で剣を見る。
「サァ……我が主ノ命ニ従ッテ行クカ」
ふとダークマターが倒れたアイスドラゴンに近付き、上から来たアイスドラゴンを見据えたま
ま剣を構える、まだこの竜は気絶している様で眼を閉じている。
「流石ニモウ用ハ無イ、カ……」
ダークマターは剣を仕舞うとアイスドラゴンから眼を放し、マジルテへ向かって移動を始
めた。
「クックックッ……再ビ戦ウ時ヲ楽シミニシテイルゾ、娘ヨ……」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

-------------------------------------------------------------------------------
投稿日 : 2009/09/02(Wed) 00:53 
投稿者 : ノーザンライツ  


 表に出しはしないものの、メタナイトは焦っていた。負傷者の話
では、ポップスターの住民に扮した敵側の存在が、正体を隠した
まま要塞内へ潜りこんでいるという。フラービィは単独犯だと推測
していたが、内部へ既に侵入者があったようだ。これは迂闊だっ
た。下手をすれば同士討ちになりかねない状況の下、どうやって
侵入者たちを撃退すべきか、有効な手段が思いつかない。判別
する方法があればよいのだが。

「メタナイト」
「ああ、フラービィか。どうだった」
「二連主砲のレーザーは当たったよ。あとはカービィがなんとか
してくれる」
「分かった。ところで、おまえの知恵を借りたい」
「いいけど、何?」

 ポップスターの民の姿を借りた侵入者のことをフラービィに話す。
フラービィは腕を組んで考えたあと、サンプルが一体欲しい、と発
言した。どのような方法で姿を変えているのか分からなければ対
策が立てられない、と彼は言う。もしかしたら、ダークマターがいつ
もそうするように、ポップスターの住民へ憑依しているのかもしれ
ない。そこまで話を進めたとき、ドアを蹴破るようにして入ってくる、
一体のワドルディの姿があった。その手に、誰から奪い取ったの
か、短剣を握りしめている。かわいらしい外見に似合わない殺気
をまとい、ワドルディはメタナイトへ斬りかかった。耳を突く金属音
が響く。メタナイトは金色に輝くギャラクシアで、ワドルディの短剣
を受けとめていた。

「向こうから飛びこんできたぞ。これは……好機だ!」

 ギャラクシアを振って、短剣ごとワドルディを吹き飛ばす。その際、
ワドルディの頬をギャラクシアの切先がかすった。

「……絵の具?」

 金の刃に伝う、虹色の絵の具。ワドルディを見れば、ギャラクシア
により負わされたらしき傷跡から、血の代わりに絵の具が筋を引い
て流れ落ちていた。絵の具……メタナイトはあることを思い出す。

「奴はドロシアがつくりだした存在だ」
「そうか、だから絵の具が……メタナイト、水はどうだろう」
「水?」
「スプリンクラーがあれば最高かな。それを作動させて水を浴びせれ
ば、溶けるかもしれない。ちょっと乱暴だけど、手っ取り早いと思う」
「ならばまずは、こいつで試してみるとしよう」
「オッケー」

 サンプルを入手すべく、二人は絵の具ワドルディへ飛びかかった。

*

「ここなんだが」

 たどり着いた先は、デデデ城。あたりに味方、つまりゼロ側につい
ている者の気配はなく、どうやらもともとの持ち主が力尽くで奪い返
したらしかった。目前にそびえたつ城を見上げ、ため息をつく。ここは
敵の本拠地だ。城の分厚い外壁に阻まれて、索敵をすることができ
ないとはいえ、結構な数の人員がいるだろう。それに対して、こちら
は二人。うち一人はサポートがメインで、直に戦うことは不得手とき
ている。賭けに出るには危険すぎた。

「……今の状態で突入するのは賢くないよな」
「エルム様の仰るとおりです」
「んー、どうしたもんかね」
「一旦、本部へ帰還すべきではないでしょうか」
「ここまで来ておいてかー?」
「突入するのが賢明でないと発言したのはエルム様です」
「……」

 いちいち冷静に突っこんでくるコマンドを呆れ半分、腹立ち半分で
見たのち、エルムは踵を返して本部へと向かうことにした。提案者の
コマンドは、無言のままエルムのあとへと続く。今の状態で敵の本拠
地らしき場所へ踏みこむのが危険だという事実は変えられない。本
部へ戻って作戦を立て直すか、新たな作戦へ参加するか、ともかく
すべては戻ってからだ。新入りなので、他者に挨拶をしておく必要も
あるだろう。しかし、どこへ行くにも歩きというのは不便だ。

-------------------------------------------------------------------------------
投稿日 : 2009/09/11(Fri) 00:00 
投稿者 : シンキ  



 本部への帰還を余儀なくされたエルムが不機嫌であることはコマンドの目から見ても明
らかであった。その理由が何なのかについては特に尋ねる必要性はないとみて言及しなか
ったが、黙ってるのが嫌な性分のためかエルムの方から勝手に語りだした。
「はぁーあ。初任務がこんな結果じゃ後味わりいぜ」
 当然といえば当然の、単純明快な理由であった。
「この任務はエルム様の実戦テストも兼ねています。いくつかのデータも手に入ったので
成果はありました」
 実際、エルムは敵が手負いを逃がすための陽動にまんまと引っかかり、軽い戦闘が起き
た際にはバリアとパワー増幅の能力を巧みに使い分け、コマンドのサポートをこなしてい
た。……もっとも、その敵には結局逃げられたわけだが。
 実戦で使わなければ実際の効力が分からない彼の能力の性能を知る事が今後の戦略にお
いて重要となるため、むしろ今回は任務そのものの方がオマケ程度のものであったが、あ
くまでもエルム自身は任務に拘っている様子である。
「あの時はさすが俺、って感じだったけどな……。何つーかこう、もっと周りに自慢でき
るような手柄が欲しかったんだよな。分かる? この気持ち」
「分かりません」
「あっそ……」
 コマンドの即答にエルムはますます機嫌を悪くしたようであった。
「じゃあダークマター君、何かジュースでも奢ってくれよ」
 エルムは冗談のつもりで話を振るが、それを聞くなりコマンドは突然その場で動きを止
める。何かを熟考してる様子とも思えた。エルムもコマンドの挙動を不思議に思いながら
立ち止まる。少ししてからコマンドはエルムの方を向き、一言。
「奢るという言葉の意味を教えてください」
 想定外の返答。そんなことを真剣な眼差しで尋ねるコマンドにエルムは思わずその場で
コケそうになった。恐らく任務に当たって必要のない情報はあまりインプットされてない
のだろう。
「いや、もういいわ……」
 ここまで会話の自由がきかないとなるといい加減疲れてくる。歩くのを再開するなりエ
ルムは無意識のうちに溜め息をついていた。
「もうちょっと話して楽しい奴になれないのかい?」
「そうなるとどのようなメリットがあるのですか?」
 するとエルムはフ……と軽く笑みを浮かべてこう答える。
「俺の気分が良くなる」


 そうしてゼロサイドの者がデデデ城から離れていく一方、こちらはデデデ城中庭。奪還
戦の最中にスラッドとビュートによる戦闘が繰り広げられた場である。戦いが終わった今
は、当然静寂に包まれている。だが、しばらくはこの静寂のままでなければ困る者が一人
いた。
(……してやられたか)
 ダークブラウンの髪に細いフレームの眼鏡をかけた剣士。まさにここで戦闘を繰り広げ
たビュートその人である。戦闘においては敵の主戦力を分散させ、確実に一人ずつ仕留め
ていくはずだったのだが……。
(まさかあんな奇策に打って出るとはな……)
 あの男――白椿と名乗っていた――との戦いの最中、敵の大将であるデデデ大王は直接
合流せず城の内部に攻め込み、こちらの隙を見計らって城壁の一部を力業で崩してきたの
だ。もちろんこうした手を全く想定していなかったわけではないがそれにしても対応が早
すぎる。決断の早さもさることながら、あの程度のトラップや部下達では足止めにもなら
なかったということか……。
 迫り来る煉瓦の雪崩。ビュートもとっさに避けようとしたのだが、あの時白椿は自身も
危険でありながら鎖刀で足止めをしてきたのだった。それを捌いたのも束の間、硬い衝撃
が次々と殺到し彼の身体は飲み込まれていったのである。その後、意識を取り戻した時に
は既に戦いが終わっていた。幸いにも瓦礫の山は何とか自力で脱出できる程度に覆いかぶ
さっていただけだったが、身体は所々が痛み、特に右腕に力が入らなかった。瓦礫はある
程度自然な形に戻しておいたため当分は巡回兵が来ても不審に思われないだろうが、いず
れ敵にビュートが存命であることを悟られるのは避けようがない。
(さて、ここからどうしたものか)
 まずは状況を把握する。恐らく戦闘が終わってからまだ間もないだろう。ざっと見回し
た限り見張りはそれほどの数ではない事や、そもそもあの場を監視すらつけず野放しにし
ている事から、まだ戦後の体勢が整っていないことは容易に想像できた。だが城門前の様
子を探ると他所と比べ多めの見張りが配置され、跳ね橋も上げられており、城壁を飛び越
えようにも今の体調では足の痛みが酷く、城外に脱出するのは難しい。そして最も厄介な
のは敵に見つかった場合の対応だ。骨折まではしていないようだがとにかく右腕が使い物
にならず、このままでは見張り一人を沈黙させるのも手こずるだろう。おまけにこちらが
仕掛けた罠全てが撤去されてるとは到底思えない。下手に動き回るのも危険だ。こちらの
生き残りもほぼ撤退したと見てよい。仮にまだ城内に潜んでいる者がいたとしても接触す
る可能性は薄い。状況は彼に不利な事ばかりだった。今この場面で頼れる者は……。
(ドロッチェだけか……)
 これまた幸いにも、ドロッチェと連絡を取るための携帯電話はほぼ無傷であった。ここ
で借りを作るのは少々気が乗らないが、他に当てが無いので仕方ないだろう。後は安全に
連絡を取れる場所を探すだけだ。一番注意すべきは上空から巡回している一つ目の雲であ
ろう。今までは常に死角をとって移動していたが、やはり連絡を取る際には無防備になる
ためそれらを含めた見張りの目を確実に盗める場所を選ぶべきだ。
 ビュートはここまでの思考を一旦整理し、そして慎重に行動を開始した。

-------------------------------------------------------------------------------



前へ リストへ  次へ