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小説の中へ [23]



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投稿日 : 2010/03/06(Sat) 03:39 
投稿者 : tate  


「予想通り、溶けたね」
「ああ。要塞内のスプリンクラーを作動させれば、雑魚はいなすことが出来そうだ」
 端的な言葉を交わしたフラービィとメタナイトの足下には、僅かにオレンジがかった赤
色の水溜まりが出来ていた。先程二人が捕縛した、絵の具ワドルディの成れの果てである。
 絵の具ならば、水を浴びせれば溶けるのでは、というフラービィの仮説に基づき、水を
掛けた結果だ。
 メタナイトは手近なインターフォンから、要塞の司令室にいるアックスナイトに、スプ
リンクラーを作動させるように指示する。
 水をまいたらきっと要塞内は絵の具で大変なことになるだろうと思いながらも、対案が
思い浮かばなかったのでフラービィは黙っておくことにした。明日は皆でモップを片手に
大掃除かな、等と。

 間もなく、彼らの頭上に見えるスプリンクラーから水が噴出され始めた。フラービィの
視界には何者の姿も見えないが、同様に要塞内の至る所で降り注ぎ始めた水により、絵の
具により作られた疑似生命体達はやがて溶けて消えるだろう。
「フラービィ、私は司令室に戻る」
「あ、うん。要塞内の状況を把握する必要があるもんね。ハルバードも僕が無理矢理動か
したし」
「仕方あるまい。私がお前の立場ならば、おそらく同じことをしていただろう」
「そう言って貰えると、ちょっとは気が楽だよ」

 司令室へと戻っていくメタナイトの背中を暫く見送り、フラービィも踵を返した。
「雑魚が消えたということは、後は空中のドロシアだけだけど」
 果たしてフラービィがのこのこと出掛けていって、カービィの助力になるだろうか。
……足手まといになりかねないな、と諦めの表情を作りつつ、口角を僅かに上げる。上げ
ながらも、フラービィの足はカタパルトデッキに向かっていた。
 司令室からモニタ越しに、カービィの戦いを見守るという選択肢もある。だがそれでは
自分の目で戦況を直接確認することが出来ないし、カービィに助言も出来ない。
 リスキーだけど……あのドロシアには何かがあると思うのだ。

 途中、通路の脇にくたりと倒れ込んだ少年を見かけた。先程、ハルバードに向かう前に
カービィが連れていた少年だ。何故こんな所に倒れているのだろうと漠然とした疑問が湧
いてきたが、ここにいる限りは安全だろうし、今はカービィの方が先だ。
 フラービィは視線を前に戻すと、彼の脇を通り過ぎた。

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投稿日 : 2010/03/12(Fri) 01:07 
投稿者 : まび  


カタパルトデッキを見下ろす、要塞上空。
空中に浮かぶ2つの影に風が吹き付ける。カービィの緑色の帽子がはためき、ドロシアの焼け焦げた服の切れ端が舞う。
カービィは油断無くドロシアを注視したまま剣を握り直す。
ハルバードのレーザーにより大きなダメージを与えられたことは確かだろう。ドロシアは黙り込んだままピクリとも動かない。
しかし、その不吉なまでに輝きを増す瞳が、カービィに直感的に危険を知らせていた。

数分間の沈黙は、何倍にも希釈されたように感じられる。
その沈黙を破ったのは、カービィだった。

「……ねぇ、ドロシア」
警戒を緩めることなく、カービィはドロシアに言葉を投げかけた。
今のドロシアは何か奥の手を隠していそうで、攻撃するのは憚られたし、何より気になることがあったのだ。
ドロシアの反応は、ない。しかしカービィは言葉を続ける。
「君は、ゼロと敵対してる……んだよね?」

デデデ城での、ダークマインドとの戦い。その時現れたドロシアとデデデの会話。その全容は掴めなかったが、カービィは一つの結論を導き出した。
即ち、ドロシアの敵と自分達の敵は、同じなのではないかという事。
そして単純な疑問を抱いた。ドロシアがゼロと敵対しているなら、自分達を邪魔する道理はない。
「ボクたちもゼロと戦ってる。なのに、どうしてこんなこと……」


一方ドロシアは、カービィの言葉を聞きながら忙しく思考を巡らせていた。
破壊すべきハルバードは、今まさに眼下にある。ゆっくりと格納されていくそれは、今近づけば完全破壊とまではいかずとも、致命的なダメージを与えることはできるだろう。
しかし、恐らく速さで言えば自分はカービィに敵わない。ハルバードに到達する前に邪魔が入るに違いない。やはりどうにかして、目の前のこいつを排除しないと……!
ドロシアの手が、懐に隠したステッキの柄に触れた。
その時、カービィが再び言葉を紡いだ。

「ねぇドロシア、君はなんでボク達を攻撃したの?」

一瞬の間のあと、思わず漏れそうになった失笑をドロシアは抑える。
こんな時に、なんて間の抜けたことを言うのだろう!そんなこと、尋ねるまでもなく自明の理だろうに。
ステッキの柄から手を離さずに、もう片方の手に不意打ちのための一撃をひっそりと溜め始める。

そう、なぜなら…………なぜなら?

そこで、ドロシアは、今まで疑問にも思わなかったある事実に気付いた。
(そういえば……どうして?)
どうして、マルクは、『メタナイト達を攻撃するように』言ったのだろう?
メタナイト達、ひいてはカービィ達もまた、ゼロと敵対している。マルクの目的がゼロを倒すことならば、わざわざ苦労してカービィを倒す必要などないのでは?
それは奇しくも、カービィと同じ疑問であった。
そしてカービィよりも多くの事実を知っていたドロシアは、結論に辿り着いてしまう。
瞬間、ドロシアの背筋を悪寒が駆け抜けた。
(まさか……あいつ)


ドロシアの瞳が一際強く輝いたのを見て、カービィは戦慄とともに剣を構え直した。
先ほどから、ドロシアは一言も言葉を発しない。その沈黙はひたすらに不気味で、カービィは思わず切りかかりそうになる衝動を抑えた。
そして、ハルバードを守るかのように、要塞を背にドロシアにしっかりと向き直る。
ドロシアが攻撃を加えてきた理由は、分からない。理由が分からないなら、本当は戦うべきではないとも思う。
けれど、この要塞は、ハルバードは、仲間達は守りぬかなくてはならないのだ。
そのためには、理由の如何など問うてはいられない。
いつ来るか分からないドロシアの攻撃に備えて、カービィは意識を集中させていく。


カービィの放つ気が、研ぎ澄まされた刃のように自分へと突きつけられているのを感じる。
ドロシアは、今なお消えない戦慄を無理矢理思考の外へと追いやった。
そう、マルクの目的が何だったとしても、初めから何も迷うことはない。ゼロに復活させられる前から、カービィは自分の敵だったのだから。
そして自分の目的と、マルクの目的の一部は一致している。ゼロを倒すこと。それが今の自分の目的。
そのためには、理由の如何など問うてはいられない。
ハルバードへの道に立ち塞がるカービィに攻撃を加える、その瞬間のために、ドロシアもまた意識を集中させていく。





その瞬間だった。
ドロシアの視界に、カタパルトデッキに現れた人影が飛び込んできたのは。



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投稿日 : 2010/03/15(Mon) 21:59 
投稿者 : guri  


サクッサクッサクッ……

 小さな洞の中を、ドロッチェとビュートが緩やかに降る。一面に敷き詰められた黄翠色
の光苔がふんわりと輝き、暖かな雰囲気を醸し出していた。
「なかなか豪奢なものだな」
 素直なのか皮肉なのか、感じとれぬ口調でビュートが言う。
「素晴らしいものだろう、発明家ドクの研究の賜物さ」
 道なりに暫く歩くとでっぷりと太った蒼い服のねずみが居た。大きなケーキを片手にむ
しゃむしゃと食べている。
「おや親分。そいつは……?」
「客人のビュート殿だ、失礼の無い様になストロン」
「りょーかいです、もぐもぐ」
「見た目は原始的だが、ドクの技術の粋をもって作られた巣穴だ。侵入者など猫一匹許さ
れない。安心して養生したまえ」
 ストロンを残し更に歩くと、丈夫な木製の扉へ到着した。
「さて、まず手当てをしなくてはな。ここがドクの部屋だ」

「やっ、お邪魔してるのサ!」
 扉を開けると、ピエロ帽子がにこやかに振り向いた。
「ド、ドロッチェ団長ぉぉぉ」
 ドクが勢いよく泣きながらしがみ付いてくる。
「……………………へ?」
 ドロッチェの顔が呆れ顔に崩れマントがズレ落ちる、額に汗が一筋タラリ。
「マル、マルクがわしの研究をぉぉお」
「思いっきり入ってるな。侵入者」
 ビュートの突っ込みがザクリと響く。だがドロッチェも然る者、瞬時に平静を取り戻し
た。
「こ、これはこれは……珍しい事は続くものらしい。稀代の魔術師マルク殿が我が巣穴に
どのような御用向きかな」
「キミも似たよーなモノなのによく言うのサ」
 マルクは読んでいたドクの資料を置くと、ドロッチェに向き直る。
「簡潔に言うよドロッチェ、ゼロを倒すから手伝うのサ」
「ほう……?」
 書類の束をペシペシと叩きながらマルクは続ける。
「色々見させて貰ったけどサ。どう見ても、ゼロの為の研究じゃないよねコレ」
 きっぱりはっきり言うマルクを値踏みするように眺め、ドロッチェはニヤリと嘲う。
「くっくっく成る程成る程。とても焦っておられるようだ」
 ドロッチェの言葉に一瞬マルクの顔に影が差す。
「一度滅び、闇の力で復活したという噂は本当だったようだね」
「……だからどうしたって言うのサ」

 ドロッチェは口篭もるマルクを一瞥すると、ビュートをちらりと見る。
「ぁードク。ビュート殿の手当てをしてやってくれたまえ、長話をしていては可哀想だ」
「りょ、了解じゃ」
 ドクが慌てて手当ての準備をするのを見て取ると、ポンっと何処からか赤い洋風の椅子
を取り出し、仰々しく腰掛けた。

「以前ドロシア嬢から闇の力を検出した事があってね、彼女は闇の者では無いはずなんだ。
それで好奇心が疼いてね、調べてみた訳さ」
 ステッキをマルクにピッと突きつけ、高圧的に喋る。
「君もドロシア嬢も、復活の対価に闇の尖兵となる契約を結んだ、そんな所かね。そして、
その契約がもし反故になったら……ボン、かな?」
 手を勢いよく広げ爆発の様子を形作り、くくくと嘲う。
「笑いたければ笑うがいいサ!」
「ああ滑稽だね、私ならそんな状態に身を窶してまで生きるぐらいなら、お宝と一緒に散
る道を選ぶ。よって君の手伝いなど御免蒙る」
「………………」

バチバチバチッ

 唐突にマルクを中心に魔力が渦を巻く。右肩から金色の翼が生えかける。漏れた怒りが、
壁にヒビを入れガラスを割る。
「団長!危険すぎますじゃっ!」
 ドクが慌てて止めるが、ドロッチェは何処吹く風であった。
「だが……我が団に入ると言うなら考えなくもない。我がドロッチェ団は、懐に逃げこん
だ小鳥を無下に扱う事はないからだ」
 ドロッチェはさらに続ける。
「確かに君の力ならば、我等を巣穴ごと全滅させる事は容易いだろう。だがその後続くの
かね?ゼロに単身戦いを挑み散るのか?それともカービィと戦いゼロを利するのか?」
暫し沈黙が続き、激しい風の音だけが洞穴に響く。そして、
「ふん……背に腹は変えられないのサ」
 魔力の渦はその言葉と共に、おだやかに収束し、止んだ。
「賢明だな、新たな同志を歓迎しよう。ビュート殿も先刻我らの戦列に加わってくれた事
だ、これからとても面白くなってくれる事だろう」
「ちょっと待て、何故私も入っている!……痛ッ」
 包帯でぐるぐる巻きにされたビュートが、抗議の声を上げる。
「はっは、怪我人は大人しくしていたまえ」

「さてマルク。当然策のひとつもあるのだろうね。聞かせて貰おうか」
 ドロッチェはニヤリと言った。

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投稿日 : 2010/03/17(Wed) 01:33 
投稿者 : 笹  


 べちゃっ

「うっ……」
 上空のカービィ達を見上げながらカタパルトデッキに飛び出したフラービィは、足下か
ら聞こえた嫌な音に一瞬硬直する。恐る恐る足下に視線を向けてみると、案の定、左足が
盛大に『元ドロシアの部下の絵の具』を踏みつけていた。
 この場合、こんな所にまで兵を置いたドロシアを恨めばいいのか、それともこんな所に
まできっちりスプリンクラーを付けたメタナイトを恨めばいいのか……一瞬そんなことを
考えてしまったが、軽く頭を振り、そろりと左足を後退させると、改めて上空を睨み付け
る。
 遙か上空で対峙するカービィとドロシア。遠すぎて表情などはとても見えないが、カー
ビィは自分に気付いていないように思える。ドロシアの方は一瞬、こちらを向いた、だろ
うか。いずれにせよ、足手まといにならないようにカービィをサポートするためにも、ド
ロシアに徹底的に注意しなければならない。


 一方上空のドロシアは、フラービィが感じたよりも遙かにしっかりと、デッキに現れた
少年のことを捕捉していた。
「(また面倒そうなのが出てきたわね……)」
 デッキの少年は、一見する限りではこの間合いで攻撃できる武器を持っているようには
見えない。しかし、確かあの白衣は雲の中の拠点で見た覚えがある。カービィの仲間だと
すれば何をしてくるか分かったものではない。目の前のカービィから目を逸らさないよう
にしつつ、少年の動きにも細心の注意を払う。
「…………」
 対峙するカービィは、ドロシアの返事を待っているのかいないのか、再び沈黙している。
しかしその目も、放つ気も、鋭く真っ直ぐにドロシアだけに向けられている。ほんの小さ
な動きすら見逃すことはないだろう。迂闊に動くことはできない。
「(くっ……)」
 ドロシアは焦り始めていた。このまま睨み合っていてはまずい。あの少年が出てきたと
言うことは、艦内の騒動は収まりつつあるということなのだろう。そうなればいずれ増援
が現れ、カービィを倒すことは勿論、ハルバードを破壊するという目的すら達せずに、辛
うじて逃げ帰るのが関の山になってしまうかもしれない。
 ローブの下でラブラブステッキを握る右手に、自然に力が入る。これを使えば、カービ
ィを倒すことができるだろうか。それで倒せるなら、倒しておくべきだろうか。

 ドロシアはここで改めて、先ほどカービィに問われた問いに、漸く理解したばかりのマ
ルクの企みに、自分の最終的な目的に、思いを巡らせる。自分の目的は、ゼロを倒すこと。
マルクの企みは、ゼロを倒すためのもの。そして自分が今戦っているのは、ハルバードを
破壊し、メタナイトの計画を止めるため。
 そして、一つの結論に辿り着いた。
「(……まぁ、確かに合理的かしらね。ちょっと癪に障るけど、良いわ、乗ってやろうじ
 ゃないの。口は達者なくせに、肝心なところで説明不足な、あの魔術師の謀略に!)」

 ドロシアは不意に主力武器である絵筆を出現させると、自身の僅かに前方、カービィと
の間の空で踊らせ始めた。カービィはその動きにいち早く反応し、剣を構える。
 あの絵筆自体が武器でないことは知っている。描かれる絵が本体だ。でも、ドロシアが
描いている絵は小さい。描き上がるまでに攻撃するのは無理だ。それならば、絵が効果を
発揮する瞬間、その隙を突いて反撃する!
 カービィがたったこれだけのことを考えている間に、ドロシアの絵筆はカービィの体よ
りやや大きい程度の絵を、額縁ごと描きあげる。
 そこに描かれた絵に、カービィは見覚えがあった。額縁の縦の幅を一杯に使った、円錐
状の棘の絵……周囲のそこかしこから鋭い棘が突き出して襲ってくる、恐ろしい魔法。か
つてカービィがドロシアと『ドロシアの世界』で戦った時に多用された魔法だ。
 しかしそれ故に、カービィの頭には一つの疑問が浮かんだ。ここは空中、絵の具ででき
た『ドロシアの世界』ではない。絵の具という媒体のないこの空中で、一体何が起きるん
だろう?
 戦場に、再び沈黙が訪れた。絵は間違いなく完成しているが、魔法が発動する気配はな
い。ドロシアも動かない。必然的に、カービィも動くことができない。
 その時不意に、カタン、という音でも立てそうな挙動で、ドロシアの前に浮いた額縁が
左肩下がりに傾いた。
「?!」
 声にはならなかったが、カービィは思わず驚愕の表情を浮かべてしまう。一方額縁は、
カービィに絵の描かれた面を見せたまま、ドロシアの前を通って滑るように真っ直ぐ落下
していった。
 そこへ、先ほどまで一言も喋らなかったドロシアの声が聞こえてくる。
「……そうね、あんたの言うとおり、今アタシがあんたと戦っても良いことは何もないわ」
 その言葉を聞き、カービィは再び驚愕する。確かにそう言ったのは自分だが、まさかこ
の相手の理解を得られるとは思っていなかったのだ。
「……じゃ、じゃあっ」
「……だからね、今日の所は、アイツの作戦通り動いて、帰ることにするわ」
「え……?」
 そう、マルクの計画におけるドロシアの役割は、カービィを倒すことではない。メタナ
イトを倒すことでもない。むしろ倒してはいけない。ハルバードを落としさえすれば、カ
ービィ達の戦力分散を阻止することだけすれば、良いのだ。
 何故なら。マルクはカービィ自身の言う通り、カービィもメタナイトもゼロと敵対する
者、転じて、ゼロを倒すための手駒と考えているのだから……!


 艦上のフラービィは、遙か上空の戦場を睨み続けていた。この距離では細かい状況が掴
めない。話し声も届かない。だからといってカービィに電話をかけたら間違いなく隙を作
ることになる。どうする……。
 その時、ドロシアの近くから、小さな何かが離れるのが見えた。
「(ん、なんだろうアレは……)」
 落下してくるのは、長方形の薄い板。ドロシアの持ち物だとしたら、キャンバスか何か
だろうか。でもそんなものをこのタイミングで落とすこともないだろう。目を凝らして落
下物を分析する。
「(あれ、額縁かな? ん、絵の裏側に、何か光るものがあるような……?)」
 落下物が重力に任せて自分に近付いて来るにつれ、段々とその全容が見えてくる。下に
いる自分からは見えるが、カービィからは死角になる、絵の裏側。そこに隠れているのは、
暖かそうな光を放つ、桃色の……
「(アレは……そんな、いや、まずいッ!)」
 それがなんなのか理解したフラービィは、咄嗟に叫ぶ。
「カービィ! その絵を止めてぇーっ!!」
 渾身の叫びはどうやら上空の戦士に届いたらしい。やはり今までフラービィの存在に気
付いていなかったのか、上空のカービィは一瞬驚いたように硬直した後で、ワープスター
の推力を重力に重ね合わせて急降下してきた。ここで漸くカービィも気が付く。落下する
額縁の裏に、光り輝く桃色の杖、ラブラブステッキが添えられていることに。
 カービィは驚きながらも躊躇いなく額縁に近付き、手を伸ばした。

 が、一瞬遅かった。

 カービィが額縁に手をかけようとしたまさにその瞬間、額縁から、桃色と紫色が混ざっ
たような、不思議な色の光が燦然と放たれる。その波動を顔面にもろに受けたカービィは
ワープスターごと弾き飛ばされ、やや離れていたフラービィも、思わず両腕で顔を覆った。

「じゃあねー♪」
 数秒の後、女性の声に我に返ったフラービィが慌てて前を見据えると、ドロシアがラブ
ラブステッキを掴んで飛び去っていくのが見えた。追いつけるわけもないのに、体が前に
向かって飛び出そうとする。
 だが、目の前に何かの影が表れ、逆に尻餅を付いてしまった。
 フラービィの目の前に表れたのは、水っぽい絵の具の塊。よく見れば、先ほど踏んだ絵
の具の水たまりが、甲板を離れ、宙に浮かんでいるようだった。
 絵の具は最初ぶよぶよと歪んだ水玉の形で浮いていたが、徐々に細長く歪んでいき、ま
もなく、それまでの体積を無視した、フラービィの身長の3倍はあろうかという大きく長
い棘に変化した。
「あっ……」
 何をすべきか考える暇も与えず、棘はその先端をハルバードの甲板に向け、真っ直ぐに
直進する。そして木材や金属板が貫かれる鈍い音を立てながら、深々とハルバードに突き
刺さった。
 ほぼ同時に、後方や足下からも同様の音が響き、ついで爆発音。ドックは瞬く間に、ハ
ルバードから吹き出す黒煙に包まれた――

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