×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

小説の中へ [25]



[16スレ 1−5レスまで]
------------------------------------------------------------------------------- 

投稿日 : 2010/05/08(Sat) 03:37 
投稿者 : tate  


 西の空に僅かに橙が残る頃――
 オレンジオーシャンの要塞では、通路の一角を黙々とモップを掛けている少年の姿があ
った、ガントレットだ。被った水がすっかり蒸発し、再起動が掛かって身体を起こしたと
ころをジャベリンナイトに見つかった彼は、モップ、バケツに雑巾を至極自然に手渡され、
今に至る。
 「あの辺の絵の具を落としてくれませんか?」と頼まれた手前、完遂する前に放棄する
わけにもいかぬとかれこれ数時間、律儀にモップを動かしているが綺麗になる気配はない。
それでも淡々とモップを動かしていると、ふと視線の片隅にピンク色の球体が映った。
「やっほー! そろそろお掃除は終わりにするって、ジャベリンナイトが言ってたよ」
 カービィだった。その背後には白衣姿の少年が立っている。
「あれ……君……」
 白衣の少年は何か言いたげな顔つきを一瞬したが、すぐにガントレットから視線をそら
せた。
「ガントレットくんはこれからどうするの? ボクはデデデの所に戻ろっかなーと思って
るんだけど。フラービィくんは――まだ決めてないんだっけ」
「うん、ちょっと確認したいことがあるから。その内容次第」
 「私は……」とガントレットは言い淀んだ。自分の目的はとある人物を捜し出すこと、
その目的を達成するために最も効率のいい行動を取るだけだ。どうしたいのか等と問われ
ても、ガントレットの仮初めの自我から自発的な希望が出てくるわけもない。
「時に、あなたは何故私に声を掛けたのですか?」
「んー、何となく」
「何となく?」
「うん、ガントレットくんが見えたから。そうそう、これからボク達メタナイトのトコに
行こうと思ってるんだけど、一緒に行く?」
 メタナイト、確かこの要塞で最も権力を持っている人物のはずだ。彼なら有益な情報を
もたらしてくれるかもしれない。瞬時にそう判断したガントレットは、「宜しければ同行
させてください」と頷いた。


 ぞろぞろと三人連れだってメタナイトの元を訪れる。彼らが目的とする仮面の騎士は、
要塞の司令室で何やら忙しげに何かを書き付けている所だったが、三人の姿を見ると、
「どうした」と手を止めた。
 司令室では、メタナイト以外にもアックスナイトらが忙しげにキーボードを叩いたり、
コンソールとにらめっこをしたりしている。この慌ただしさは何なのだろう、襲撃の翌日
だから色々と把握しなければならない事実は多いだろうけど、とフラービィは漠然とした
違和感を覚える。
「うん、えっとね。ボク、デデデの所に帰ろうと思って。大きな瓦礫は片付け終わったし、
ハルバードが動かないんなら一度帰った方がいいと思って」
「ああ、それがいいだろう」
 カービィの言葉に、メタナイトはあっさりと首を縦に振った。
「陛下ならデデデ城の奪還に成功されたそうだ。戻るのならデデデ城に直行するのがいい
だろう。そちらの二人はどうするのだ」
 ガントレットとフラービィに、仮面の騎士の目が向く。
 フラービィはガントレットの表情を窺うように一瞥し、特にガントレットの表情に動き
がないのを確認し、「先に確認したいんだけど」と話を切り出した。
「昨日、襲撃してきたドロシアの事なんだけど。ドロシアはラブラブステッキを持ってい
たように見えたんだよね。それが確認できそうな映像とかないかな、と思って」
 メタナイトは、「ラブラブステッキ……」と怪訝な声音で小さく呟いた。
「映像なら、残念ながらないぞ。ドロシアとかの攻撃でココもダウンしてたからな」
 憮然とした面持ちでアックスナイトがぶっきらぼうに答えた。そしてアックスナイトは
カービィ達を一瞥すると、すぐにモニタへと向き直ってしまった。その様子に漠然とした
違和感に確信を得たフラービィは、鎌を掛けてみることにした。
「何だか随分と忙しそうだけど、何かあったの? 僕の知識が力になりそうなら、幾らで
も手伝うけど」
 と、メタナイトを見遣る。
 仮面の騎士は暫くフラービィを凝視していたが、「早かれ遅かれお前達の耳には入るこ
とか」とぼやいた。
「陛下が、ゼロが居ると思しき場所を突き止めたそうだ。我々はその場所を特定、確認す
ることだ」
「ゼロが何処にいるかわかったの?」
「飽くまで、思しき場所、だ。まだ確定ではない」
 素っ頓狂な声を上げたカービィに、メタナイトは淡々と答える。
「要するに、調査をしろってことか。……それ、僕も手伝っていいかな」
 メタナイトは、デデデ大王のフラービィへの接し方を見ていたからだろうか、あっさり
とフラービィの申し出に首を縦に振った。
「詳しいことは、そこにいるアックスナイトから聞くといいだろう。それから――ガント
レット、と言ったかな。君も何か用事があるのかな」
 ずっと口をつぐんだまま、フラービィ達のやりとりを眺めていたガントレットに、メタ
ナイトの視線が向いた。ガントレットは徐に一枚の写真を取り出すと、メタナイトに差し
出した。仮面の騎士は何も言わずにそれを受け取る。
「人を捜しています。この少女を見かけたことはありませんか?」
「いや、私は無い。お前達はどうだ?」
 と、司令室に居合わせた部下達にも写真を見せたが、その少女のことを知っているモノ
はいなかった。
 メタナイトから写真を返されたガントレットは、「そうですか」と淡々と呟く。およそ
抑揚のないその声に何となく落胆の色が混じったような気がして、フラービィは思わず口
を挟んだ。
「人を捜しているってことは、情報が集まる場所に居た方がいいよね。メタナイト、オレ
ンジオーシャンにはそういう情報は入ってこないの?」
「確かにここは情報が集まる場所ではあるが、市井の噂話が流れ着くような所ではないか
らな。そういう意味では、陛下の元の方が様々な類の情報が集まるのではないだろうか」
「陛下?」
「デデデ大王のことだよ。今はデデデ城にいるんだよね、確か」
「そうでしたか、では私はデデデ城へ向かうことにします」
 ご協力有り難うございます、とぎこちなくガントレットは会釈をした。
「じゃあ、ガントレットくんはボクと一緒にデデデの所に帰るって事で。一緒にワープス
ターに乗っていこ」
 よろしくね、とカービィが差し出した手(というか腕)を、ガントレットは握り返した。


 ***


 ずい、と前に出たクラッコJr.はじっとダークマターを見つめた。
 間違いない、あの時お空の彼方で運命的な出会いを果たしたあの子だ、と確信を深める。
 と、確信は深まったものの、勢いに任せて前に出ただけだから、正直何を言えばいいの
か、頭の中はこんがらがってぐちゃぐちゃになっていた。
 それでもきっと、この熱意は伝わるに違いないと淡い期待を抱いてみる。が。
「ドチラ様ですぅ? 私はアナタのこと知らないですぅ〜」
 ぴしゃーん! 脳天に雷が落ちた――ぐらいの衝撃がクラッコJr.の身体を貫いた。痛
恨の一撃! クラッコJr.は倒れてしまっ……た…………ガクリ。


 「そんなことよりも、それ以上近寄らないで下さいですう!」と叫ぶダークマターと、
よろよろと力なく地面にぽてりと落ちたクラッコJr.を見遣り、やれやれとデデデ大王は
内心で溜息を吐いた。
 どういう経緯でクラッコJr.がこのダークマターのことを知ったのかは知らないが、一
方的に慕情を抱き、玉砕したといったところか。始まってすらいないのだから、まだまだ
これからだろうと応援したい気持ちを極僅かに抱きつつも、私情はさておき。
 話を続けようと口を開きかけた所で、少女が不意に身体を起こした。少女の上に鎮座し
ていたダークマターが転がり落ちる。ころころと二回転ほどしたところでダークマターは
状況を把握したのか、ふよんと浮き上がり少女の元にすり寄った。
 少女は緩慢な動作で辺りを、左から右へと見回した。その視線が今度は右から左へを戻
ってくる。そして目の前に立つデデデ大王と目が合うと、すぐ脇に浮かんでいたダークマ
ターをぱっと抱き寄せ、そして叫んだ。
「デデデ大王、アタシ達を匿って!」
「な、何だと……」
「アタシ達、ゼロの部下に追われてるの。何でここに居るのかはよくわかんないけど、ち
ょうど良かった。お願い、匿って」
 少女はぎっとデデデ大王を睨め付けてきた。
「むぎゅう……チナツさん、追われてるってどういう事ですぅ?」
「アイツがアンタを斬るって。アンタを連れ出してきちゃったから、アタシも唯じゃ済ま
ないと思う」
 ぎゅ、とダークマターを抱きしめる少女の腕に力が籠もる。

 仲間割れでもしたのだろうか。その結果、この少女とダークマターは仲間の元を追われ、
逃走を続けているとでも?
 デデデ大王にもこの状況は把握しかねていた。
 もしかしたら、敵の罠かもしれない。この少女をスパイとして送り込み、デデデ大王達
を蹴散らす計画が進んでいるのかもしれない。
 それにしては回りくどく、不確実な方法でデデデ城近くまでこの少女はやってきた。そ
れにデデデ大王を見上げてくるその瞳はあまりにも真っ直ぐで、謀略の臭いを感じない。
 ……捕虜として扱い、かつ不意打ちへの警戒を密にすれば良いか。

 デデデ大王は重々しく口を開いた。
「相応の処遇しかできんぞ。お前がゼロに加担していた過去は皆が知っている。それにそ
のダークマターをそのまま城に放すわけにはいかん」
「わかってる、その辺はそっちに任せるわ。それでも、外をうろうろしているよりは全然
安全でしょ。……ゴメンね、黒丸」
「? 何でチナツさんが謝るですう?」
 ダークマターはきょとんと円らな目をしばたたかせると、少女にその身をすり寄せた。

------------------------------------------------------------------------------- 

投稿日 : 2010/05/22(Sat) 22:29 
投稿者 : ヨツケン  


デデデ城の一階、ボイラー室と工房とが一体となっている部屋でスラッドは壊れていた
ロブの前に座っていた、その右手には被覆付きの溶接棒が取り付けられたホルダ、左手に
はハンドシールドが握られていた。
「ここで最後か……」
彼は左手のハンドシールドを自分の前に持ってくると、慣れた手つきで右手の溶接棒をロブの外壁の隙間に押し当
てるが何も起こらない、スラッドは少しイラつきながらも溶接棒を床に擦り付け、被覆を
剥がした後に再び当てると、今度は強烈なアーク光とバチバチという音が聞こえてきた。
「よしっ」
激しく火花を放つ溶接棒の先端をウィビングビードと呼ばれるやり方で、外壁の隙間を
縫うように動かしながら少しずつ溶接してゆく、ようやく隙間を埋めてハンドシールドを
顔から外し、溶接した部分を見ると金属は赤くはなっているものの隙間は完全に塞がって
いた。
「よし、これで終わりだな!!」
ボイラーと溶接の熱で異常な暑さを感じながら溶接部分が冷えるのを待つ、暫くすると
赤かった溶接部分が冷えて黒々としたスラグが現れる、それをスラッドはピッチングハン
マーで砕き落としワイヤブラシで表面を磨くと、落ちたスラグの内から綺麗な金色のボデ
ィが現れた。
「ふぅ……」
達成感からか心地好い疲労がスラッドの体を襲う、実際この城を取り返してからと言う
ものスラッドは倒れたルナの看病をしたり、ルナが何処かに行ってからはずっとこの場所
に籠ってロブの修理を行っていた。
幸いロブの破損状況は軽く、ボディや配線が破損しただけで内部の精密機器には全く破
損は無かった、そのため少し配線を張り直したりボディを溶接するだけで完全に修復する
ことが出来た。
時間は既に修復作業を初めてから1日が過ぎていた、その為か異様な空腹感を感じる。
「メシでも食うか……」
道具を元々置いてあった棚に直し、ボイラーの周りでうろうろとしているボボ達を後目
に部屋を出る。廊下は先程までの熱が渦巻く部屋とは違い、清らかで新鮮な風が吹いてく
る、深呼吸を一回して食堂に向かう。
ふと、ポケットに手を入れると何やら硬い何かが入っていた、取り出して見るとそれは
ルナが何処かに行く直前に託してくれたペンダントだった。
「アイツ、まだ帰って来てないのか……」
彼女の顔を少し思い出しながら廊下を食堂に向かって歩く、歩いていると何処からか言
い争う声が聞こえた。
「だから、大変なんですよ!」
「分かった、分かったから少し静かにしてクレ。直ぐに大王様も戻って来る筈だカラ。」
廊下の真ん中で言い争うルナとペイントローラーの姿を見付けたスラッドは思わず溜め
息をついた、出来れば無視したい所だったがそういう訳にも行かず2人に近付く。
「あっスラッド!!」
「何してんだよお前ら……」
ルナはスラッドの姿を見付けるとすぐに駆け寄って飛び付いてきた、それを受け止めな
がらペイントローラーの方を見ると、彼はやれやれと言う感じで大きく溜め息をついた。
「いや、ルナがダークマターの軍隊がこの城に向かって来ていると報告してけれたんだけ
ドネ、陛下が居ないから対策も練りようが無いんダヨ……」
「ダークマターの軍隊?本当かルナっ!?」
スラッドがルナの両肩を掴んで眼をしっかりと合わせて聞くと彼女は縦に首を振った後
に、再びスラッドに抱き着き始めた。
「仕方ないから陛下がお帰りになるまで待とうと言ったんダガ。私が言ってもどうしても
聞いてくれなくテネ……」
「なるほど……」
「出来れば君から彼女に言ってやってくれないカナ。君の頼みなら聞いてくれるかも知れ
ないかラネ」
「……分かった、俺から言ってみよう」
自分にしっかり抱き着いていた彼女の肩を掴み、再びしっかりと眼を合わせる、彼女は
その蒼色の瞳でスラッドを見つめ返してきた。それを確認すると、スラッドは口を開いた。
「ルナ、旦那が帰ってくるまで静かにしててくれないか?」
スラッドが問い掛けると、彼女は少し目線を逸らして頬を染めながらゆっくりと首を縦
に振った。彼女の頭を撫でつつ、ふとペイントローラーを見ると彼は驚愕の表情を浮かべ
たまま固まっていた。
「ねぇ、早く報告出来る様に入り口で待とうよ」
彼女が上着の裾を引っ張りながら訴えて来たので、仕方なくスラッドはルナと未だに固
まっているペイントローラーを連れて城の入り口まで移動した。
「ところでルナ、ダークマターの軍隊って何体ぐらい居たんだ?」
「わかんない……少なくとも1000は超えてたとしか……」
入り口に着き、ふと彼女に問い掛けて見るとそんな答えが帰ってきた、1000体と言
えばかなりの軍勢である。確かに早めに策を練らないと簡単に数で押されてしまう。
「1000体か……一体後何時間後に……」
その後の言葉は口に出せなかった、ルナが入り口から見て正面の少し離れた場所を睨み
付けながら左腕を上げて制したからだ。
「ダークマターの気配がします……」
彼女はそれだけ言うと、右手に魔力を溜め始めた。確かに彼女の睨み付ける先には誰かの
姿が有った、2つの浮かんだ球体に4つの影。
「まさか、もうダークマター軍隊が来たのか?」
そんな事を口走りながらその影達を見続ける、暫くするとそれらに色が付き、より鮮明に
成ってきた。
「……あれは……陛下?」
ペイントローラーが呟いた。

------------------------------------------------------------------------------- 
投稿日 : 2010/06/23(Wed) 02:41 
投稿者 : tate  


 チナツの申し出を受けたデデデ大王は、彼女とダークマターを連れて城へと戻る。城門
で彼の帰還を待っていたルナが胡乱な目を向けてきたが、チナツの抱えるダークマターを
一瞥するとその表情も消えた。
「大王様にご報告が」
「急ぎか」
「急ぎます!」
 ルナの鬼気迫る表情を見て、デデデ大王はチナツ達をソードナイトとブレイドナイトの
二人に託す。
「地下牢に対ダークマター用の結界を張り、そこに入れておけ。結界はケビィに頼めばい
いだろう。チナツよ、それで良いな」
「アタシには選ぶ権利なんてないから」
 ぼそっと呟くと、少女は大人しくソードナイトらの後について行った。
「してルナよ、報告とは何だ」
「ポップスターに戻ってくる途中でダークマターの大群を見ました。こちらに、デデデ城
に向かって移動しているように見えました」
「ほう? まだそれだけの群れを作れるほど、ダークマターがポップスターに残っている
ということか。こちらに向かっているのであれば、返り討ちにしてくれるだけだ。城の守
りを厚くし、哨戒兵の数も増やそう」
 即座に、城の警備を行っているワドルドゥとワドルディ達に命を下す。
「でも、数が……千以上の大群で」
「だが所詮はダークマターだ、憑依にさえ気を付ければ問題なかろう」
「あの、群れにはコマンドタイプも数十いましたし、それに白い多面体の初めて見るタイ
プのものもいましたし」
 ルナの言葉に己の耳を疑った。
「今、なんと言った」
「白い多面体ですか? 無数の赤い目が付いていて、それからも闇の気配を感じました」
 ミラクルマター。
 デデデ大王自身は直接対峙したことはないが、あのカービィが酷く苦しめられたという
闇の生物だ。あれがポップスターに現れた、なんと言うことだ。
 身体に走る戦慄を抑えながら、デデデ大王は声を張り上げる。
「ワドルドゥ、見張りを今以上に密にしろ。戦えるモノを掻き集め、敵襲に備えるのだ!」


 ソードナイトらに連れられたチナツは、薄暗い地下牢の一つに膝を抱えて座っていた。
彼女以外の客人は居ない、その割にはこざっぱりとした場所だった。
 青い変な生物……おそらくそれがケビィという名前なのだろう……の作業はものの数分
で終わり、しばらくはチナツ達の様子を窺っていた二人の剣士も既に地上へと戻っていっ
てしまっている。
 溜息を吐くと、妙に響いた。
「チナツさん、元気出すですぅ! きっとビュートさんが助けに来てくれるですぅ、だか
ら大丈夫ですぅ」
 チナツにぴったりと身を寄せて丸くなっていた黒丸がもそもそと動くと、こちらを見上
げてきた。
「アイツはきっと来ないよ」
「何でですぅ?」
 それはね、と口を開き掛けたチナツの耳に、扉の開く重い音が聞こえてきた。反射的に
黒丸を抱き寄せて身を堅くする。鉄格子の向こうからやってきたのは、水色の髪を持つ少
女だった。
 つかつかと少女は歩を進め、チナツの目の前で立ち止まった。彼女とチナツ達の間には
対ダークマター用の結界が展開されている。が、おそらく少女からの攻撃はそのまま通し
てしまうだろう。
 視線をスライドさせると地下牢の入口近くにはもう一人、銀髪の男性が立っていた。
 一体彼女は何をしに来たのかと、その表情を窺う。深い蒼を湛えた双眸は淡々と黒丸を
見下ろしている、そこに感情の色はない。
 ダークマター、と彼女の唇が音もなくそんな言葉を紡ぐ。その真意はわからないが、好
意的な目ではないことは確かだ。
「言っておくけどアタシ、売られた喧嘩は流石に買うからね」
 等と言ってはみたものの、得物がなければ自分など唯の中学生だ。虚勢を張ることしか
できない。いざとなったら黒丸に戦って貰うしかないけれど、この状況でこの子は戦える
のだろうか。
「ルナ、彼女達は大将の捕虜だ」
 少女の背後に控えている男性が口を開いた。
 チナツを……いや、黒丸を見下ろしていた少女は男性の言葉に促されたのか、ふいと踵
を返すと小走りに男性の元に戻る。そして二人して地下牢の外へと消えていった。
 ルナと呼ばれていた。
 ということは、あの少女が以前チナツの手当をしてくれたのだ。
 それにしては雰囲気がぎすぎすとしすぎていて……とても他者に救いの手を差し伸べる
ような人物には見えなかった。

 *

 カービィとガントレットはワープスターに乗り、デデデ城へ向かってプププランドの空
を飛んでいた。空の色が黄昏時の橙から、オーロラを彷彿とする虹色へと呈し始める頃、
ガントレットがある一点を指差した。
「どしたの?」
「あの一体だけ闇が深いです。それ以上の視覚情報は得られませんが、何でしょうか」
 ガントレットの指差した方向に、カービィも視線を向ける。カービィ達の居場所からは
大分離れた空の一角が、確かにそこは一段と闇が深い。
 空一体が妙に静かなのも気になる。ワープスターが風を切りながら進む音以外、何も聞
こえてこない。
「ガントレットくん、急ごう! 何か、嫌な感じがする」
 彼らの乗るワープスターが一段と速度を上げた。

-------------------------------------------------------------------------------
投稿日 : 2010/10/18(Mon) 00:30 
投稿者 : ヨツケン  


デデデ城の奥にある静かな一室、そこに置かれた砕けたスターロッドの前に彼は居た。
ふと彼はゆらゆらと揺らぐ自らの蒼き炎を静かに鎮め、集中を始める。彼がゆっくりとそ
の一つ目を閉じると、すぐに置かれていた欠片が光り始める。そしてが輝きが増したなが
ら欠片が一つ、また一つと浮き上がり、それぞれがまるで星のように自転と公転をしなが
ら中心に集まってゆく、そして輝く星となった欠片どうしが組み合わさり、元々の杖の形
に成る。が
「やはりまだエネルギーが足りませんか……」
ケビィが目を開きながら呟くと、形を取り戻したばかりのスターロッドに再び亀裂がは
しり、砕けて欠片に戻ってしまった。それを残念そうに見つめる彼は身体を再び揺らめく
蒼き炎に包み込みながらその場を離れ、廊下に出る。
「まだ修復には時間がかかりそうだと伝え……?」
ふと、何か闇の気配と殺意を感じたケビィの動きが止まる。一瞬、報告に有ったダーク
マターの大軍が動き始めたのかとケビィは思ったが、その気配は明らかにダークマターの
軍勢からこの城を挟んで反対側から感じていた。それも並みのダークマターの比では無く
、軍勢の方に一つだけに感じた強大な気配に負けるとも劣らない、それほど強烈な気配だ
った。しかも、ケビィはそれが自らをポップスターの夢の泉に到着する前に其処から発せ
られてた気配と同じである事に気付いた。
「急いで伝えなければ……」
敵の策は恐らく、大軍にこちらの軍勢が出向いてる間に手薄になった城を少数で後ろか
ら落とす不意討ち、知らずに戦っていれば容易に城を落とされていた筈だ。そして、城を
落とされれば拠点を失った自分たちは休む事すらままならなく成る、そうなれば全滅は確
実だ。
ケビィの身体を激しい炎が包み、轟音と共に爆発的な推進力を生み出す。ほとんどの兵
が哨戒に出されてる為か、廊下には誰も居らず、直ぐにこの城の持ち主が居る部屋にたど
り着く事ができた。扉の前で炎を落ち着け、ゆっくりと扉を開ける。中にはしかめっ面を
している城主とその隣に頭にバンダナを巻いたワドルディが居た。
「一体、何事だ」
「今、つい先日までこの星の夢の泉に居たダークマターと同じ気配を敵軍と反対方向より感知しました」
「なんだと!」
ケビィの言葉にデデデ大王は思わず立ち上がった。
「恐らく、時間差による不意討ちを行うつもりなのでしょう」
「……バンダナ、今すぐクラッコ達を集めろ、軍議を始める!!」
思案顔をしていたデデデ大王がケビィの言葉を聞いてワドルディに命令を伝える、する
とワドルディは慌てて廊下に駆け始めた。
「敵の予想攻撃開始時刻は……?」
「恐らく、日没と同時でしょう」
ケビィの言葉に大王は頷いた。ダークマターは闇の生物であり、一応日の射す中でも活
動出来るようだが、それでも日が射さない方が活動しやすいらしい。事実、ポップスター
に攻めて来た過去二回は空を雲で覆い、太陽を隠していた。
「しかし、ルナ達を蹴散らしたあのダークマターか……厄介な相手だ」
それでも、この城を再び奪われる訳にはいかなかった。多くが犠牲となってようやく取
り戻したこの城を。
デデデ大王は走ってヘトヘトに成ったワドルディが戻って来るまで、ハンマーを強く握
り締めていた。

-------------------------------------------------------------------------------
投稿日 : 2010/11/07(Sun) 00:05 
投稿者 : tate  


 頭上を仰ぐブレイドナイトの視界を、一閃の炎が横切った。
 次いで現れた一つの影は彼の頭上で動きを止めたかと思ったら、急速に大きくなってく
る。咄嗟に、手が腰に下げた剣の柄を探す。
「おい、大丈夫か!」
 聞いたことのある声に手の動きが止まり、それはそっと体の横に戻った。
 木々の間隙から姿を現したのはMr.ブライトだった。バタービルディングの主が何故、
わざわざベジタブルバレーを走るこんな小道にやってきたのだろうか。真意が掴めずにま
んじりと見上げると、Mr.ブライトは、「お前……」と僅かに眉を寄せた。その視線は断
ち切られた兜の付物に向けられている。
「ブライト殿がベジタブルバレーにやってくるとは、何か事件でも?」
「あ? ああ、ダークマターの群れらしい黒い雲が上空に出来始めていたんでな、ウィス
ピーの旦那は大丈夫かと思って、一応様子を見に来たってわけだ。さっきも上空のダーク
マター達を吹っ飛ばしてやったぜ」
 したり顔でMr.ブライトが笑う。
「ウィスピー殿ならば無事だろう。先程までウィスピー殿の元で、森に入り込んだダーク
マターらと戦っていた。粗方とは言わないが結構な数は倒したと思う」
「そうかい。じゃあ、ウィスピーの旦那の所にまでは行かなくてもいいか」
「む……ブライト殿は何処かに向かわれる予定でも?」
 おうよ、とMr.ブライトは大袈裟に頷いた。
「ダークマターが雲になるほどの群れを作ってるんだ、異常事態だろ。だから俺はデデデ
城に向かうつもりだ。お前さんはどうするよ、ブレイドナイト。陛下の元に向かうつもり
なら連れて行ってやるぜ?」
 太陽の双眸に、見上げるブレイドナイトの姿が映り込んだ。

 *

 デデデ城正門から入って間もなくの広間に、クラッコ、Mr.シャインらデデデ大王配下
のモノが一同集められていた。一同の前には、厳しい顔で仁王立ちするデデデ大王の姿。
軽口をたたけるような雰囲気ではなく、クラッコJr.も神妙な顔つきでクラッコの傍にち
んまりと浮かんでいる。
 広間に立つ柱の影では、バンダナワドルディがひっくり返っている。せわしなく上下を
繰り返す腹部を見たルナが、「大丈夫?」とタオルをそっと手渡したところで、デデデ大
王が口を開いた。
「ブライトはどうした」
「バタービルディングで哨戒を続けていると思いますが、デデデ城に向かうように使いは
送りました」
 と、Mr.シャインが答える。
「ブライトの到着を待つ余地もないのでな、会議を始めるぞ。ミラクルマター率いるダー
クマターの群れがワシの城に向かっていることは、皆も承知しているだろう。そのダーク
マター達について新たな情報が入った」
 ざわり、と集まったモノの間に緊張が走る。
「ここにいるケビィが、別方向から迫ってくるダークマターの気配を察知した。ミラクル
マター達とは、この城を挟んだ反対方向からやってくる。しかもその群れを率いているの
は、件の黒い剣を持つダークマターと同じ気配を持つモノらしい。ヤツが群れを率いてや
ってくると思っていいだろう」
 デデデ大王は一度言葉を切り、そっとルナの表情を窺った。拳を胸の上で握りしめた彼
女の表情は硬い。あらかじめ釘を刺しておかなければならないだろう。
「ワシは、挟撃してくるダークマター側の軍勢が本隊だと考えておる」
「ということは、背面に戦力を集めるということでしょうか」
 うむ、とクラッコの問いに頷き返した。
「だが仰々しく守りを固めてしまっては、優位が取れんだろう。飽くまでワシらが挟撃に
気が付いていないという姿勢を見せてやり、逆にダークマター達の不意を打つのだ」
「成程、流石は大将だぜ。逆にボケ一族に奇襲を掛けてやれってことか。戦力配分はどう
するつもりだい」
「スラッド、お前は背面側だ」
 そう言われたスラッドは、目を見張った。
「いいのかい? いや、大将がそう判断したのなら俺は従うだけだが、俺はあのタコすけ
とはあんま相性良くないぜ」
「そんなのは百も承知しておる。それからクラッコ、Mr.シャイン、お前らもだ。特にお
前ら二人は一度対峙している相手だ、勝手も分かっているだろう。スラッドを上手いこと
使って対処しろ」
 また無茶振りを……とクラッコが小さくぼやいたが、デデデ大王はそれは聞こえないふ
りをした。無茶は承知だが、無茶をしなければ如何ともならないのが現状だ。
「ケビィは引き続きスターロッドの修復を頼む。アレがないことには何も始まらんからな」
「承知いたしました」
 青い炎が仰々しく頭を垂れた。
「バンダナ! バンダナワドルディは何処にいる!」
「ははは、はい! ここですここですぅ」
 柱の影で転がっていたバンダナワドルディが、慌てて立ち上がり、短い手でぴっと敬礼
をした。
「お前はケビィとの連絡役だ。ケビィよ、ダークマター共の動きに変化があれば、逐一報
告して貰えるな」
「わわ、わかりました! ……えっと、大王さまはどちらにおられるのですか?」
「ワシか」
 デデデ大王は傍らに置いてあったハンマーを掴むと、ニヤリと口角をつり上げた。
「ワシは正面で、ミラクルマターを迎え撃つ」
「だっ、大王さま一人でミラキュル……じゃない、ミラクルマターと戦うのですか! ム
チャですよぅ」
 デデデ大王の無謀を止めようと、バンダナワドルディが両の手足をぱたぱたと必死に動
かして前に一歩出る。が、デデデ大王の腹にぶつかり尻餅をつき、その勢いでころころと
柱の影まで転がっていった。
「一応言っておくが、ワシ一人で迎撃するのではないぞ。ファイアーライオンと、ここに
はおらんがブライトも正面だ。二人の火力を活かすのならば、味方は散在していない方が
よいし、かといって大将が正面で待ちかまえていないのであれば、挟撃を察知されたと思
われかねんだろう。そういうことだ。以上解散、各自持ち場につけ」

 話しながら広間を出て行くクラッコとMr.シャインの背中を見送ってから、改めて視線
を戻すと、そこにはルナとスラッドが立ちつくしていた。
「私への指示はないのですか?」
「お前は城内に待機し、出るであろう怪我人のフォローだ」
 握りしめていたルナの拳が白くなった。
 正面側にはこれ以上戦力を配置する必要はないし……正直な所、デデデ大王と部下二人
だけでミラクルマターが倒せるとは思っていないが……背面の戦力をサポートさせてもよ
いが、それよりは怪我人のフォローの方が適材だとは思う。おそらく厳しい戦いになる、
嫌でも怪我人は出るだろう。ルナの回復魔法は絶対に必要になる。が。
「――と言っても、お前は納得せんだろう。だからルナ、お前は背面での迎撃組のサポー
トに回れ。スラッド達が上手く立ち回れるような場を作るのが、お前の役割だ。よいな」
 そう言い渡すと、デデデ大王はハンマーを手に彼女らに背中を向けた。

 *

「これはいいね、快適だ」
 オレンジオーシャンからレインボーリゾート、それもデデデ城へと続く道路を、一体の
ウィリーバイクがエルムを乗せて走っていた。エルムの背中には、コマンドタイプのダー
クマターが微妙な目付きで張り付いている。
「一つ不満を述べるのならば、後ろに乗せているのがダークマター君ということかな。何
で俺の後ろに乗ってるわけ? つーか、何でそんなに俺に密着しているわけ?」
「ミラクルマター様の影響下でダークマターを使役させるためには、近距離に置いておく
必要があるのです」
「あっそ……」
 エルムが乗っているウィリーバイクには、ダークマターが一体入り込んでいる。徒歩で
の移動の効率の悪さに辟易したエルムが、ダークマターを憑依させた一体のウィリーを足
として使っているのだ。
 ダークマターはコマンドタイプの命令で動いているのだが、どうやらミラクルマターな
る親玉がポップスターに現れて以来、コマンドタイプでは一体のダークマターを行使する
のが精一杯になってしまったらしい。しかも距離が離れるとミラクルマターにコントロー
ルを奪われてしまうらしく、楽しく愉快なタンデムツーリング状態を取らざるを得ないと
いうわけだ。
「しかしそこまで強力なヤツが現れたってことは、ゼロ様もマジできたってことだろうけ
ど。次の戦いでポップスターの全権……ってかデデデ大王一派を潰すつもりなんかね」
「おそらく、エルム様のおっしゃるとおりでしょう」
 背後で、もごもごとダークマターが返事をした。
「ま、せいぜい俺も活躍させてもらうかな」
 ゼロ様のお眼鏡にかなうぐらいのね、と口の中で呟き、エルムはギターケースを一瞥し
た。

------------------------------------------------------------------------------- 




前へ リストへ 次へ