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小説の中へ [6]



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投稿日 : 2009/01/06(Tue) 00:05 
投稿者 : フラービィ  

朝日が森を照らし、木洩れ日となって降り注ぐ。そのうちの一本が
眠っていたブレイドナイトに刺さる。
「む……朝か」
仮眠のつもりがしっかりと眠ってしまったらしい。そのおかげで頭はすっきりしているが。
いくつもの光の筋が不意に消える。が、光の筋はすぐに復活した。
また光の筋が消える。そして現れる。消えて現れるを繰り返していた。
空に何かがいるのだろうか。見上げたところで木に阻まれて見えないが。

その上空では、黒い影がうろうろしていた。
「困ったなぁ〜。ビュートさんと早く合流しないといけないのにぃ〜」
黒丸だ。朝になるまでビュートを探していたようだ。
「さっきのお城の場所すらわからないからなぁ〜。……ん?」
暗いうちはわからなかったようだが、大きめの建物が近くにあるのが見て取れた。
「闇もあるみたいだけど、……何でしょう〜」
そこに意識を集中させる。これは……取り付いてる感じ、かな?
ここにビュートはいない。それは簡単に読み取ることができた。ここじゃない。
「あっちかなぁ〜?」
森の上空から動き出した。方角は丁度デデデ城の方だ。

その数分後にメタナイトが、先程まで黒丸がいた場所を通り過ぎる。
先程まで黒丸が意識を集中させていた建物に近づき、中の様子を伺った。生物の気配は感じられない。
建物自身はボロボロで、外壁にも大穴が開いている。朝の光のおかげで、そこから内部もよく見ることができる。
なるほど誰もいない。クラッコの報告の通りである。が、どうもおかしい。
――私の部下のことだ。要塞から逃げ出すことはまずない。
静けさだけが充満する要塞の中に入り、周囲を見渡す。やはり部下の姿は無い。
――ならば、どこへ消えた。
沈黙した空気は何も答えず、ただただ沈黙を貫き通す。
「考えても無駄、か」
最後に一人つぶやき、翼を広げて雲の隠れ家へと向かう。
――どこへ行ったかわからないが、無事でいてくれ……!

さて、時をかなり進めて……
「……かーっ、駄目だ。完全にいかれてやがる」
周囲が落ち着いたところでカメラの映像を見ようとしていたカプセルJが唸る。
先程の戦闘の影響もあるだろうか、コントロールパネルと思しき物の損傷がひどい。
カメラ自体の損傷も結構大きいものらしく、やっと見れたいくつかも砂嵐だらけである。
「ま、当事者がいるわけだし、何があったかぐらいはわかるな」
「……では、わスがお話しするだス」
と、話に入ろうとしたメイスナイトをアックスナイトが制止する。
「待て、お前はここで起きたすべてのことを把握しているつもりか?」
その言葉にメイスはたじろぐ。
「一度、話をまとめる必要がある」
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メタナイツたちが話をまとめている間に本筋をざっくりまとめてみたり
カービィ組     デデデ組     バル組
↓         ↓        ↓
ガメレオと戦闘  メタが要塞へ行く   ↓
↓         ↓        要塞到着+ルナ合流
↓         ↓        ↓
↓―――――――――┘        話まとめてる(AM10:00頃?)
カビデデ合流(昼頃)
↓
雲の隠れ家行き

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投稿日 : 2009/01/06(Tue) 00:54 
投稿者 : tate  


 カービィとデデデが合流するのよりも半日ほど前のこと――

 デデデ城を制圧したビュートが、逃げ遅れた住人が零になったのを確認してデデデ大王
と戦いを繰り広げた部屋に戻ってくると、空で戦いを繰り広げていたはずのドロッチェが、
見慣れないフードの人物を連れて玉座に収まっていた。その彼は、暇そうにステッキを弄
んでいる。
 ビュートの姿を確認すると、ドロッチェは玉座から飛び降りた。
「おお、ビュート殿、戻ってきたようだね」
「……そちらの人物は何者だ」
 紫色のローブを纏い、これまた紫色のとんがり帽子を被った女性が一歩前に出た。
「私はドロシア。ゼロ様の命により、貴方の後を継ぎポップスターの統括を行います」
「と言うわけだよ、ビュート殿。君はあまり拠点防衛向きの戦闘スタイルではない、との
ゼロ様のご判断さ。とはいえ、ポップスターでの仕事はこれで終わりではないから、まだ
まだ我々には仕事が待っているわけだ」
「そうか。では、私は残されている仕事を完遂してこよう」
「夢の泉かい? そういや例のダークマターの姿が見えないようだが、あの子はどうした
のかい」
 じとっとビュートがドロッチェを睨め付けた。まるで、自分の領分に干渉するなとでも
い言いたげな瞳だ。
 ドロッチェは無言のまま小さく肩を竦めた。
「ダークマターはともかく、残りの仕事を済ませたら一度デデデ城に戻ってきてくれたま
え、ビュート殿。今後の話がある」
「承知した」
 そう言い捨て、ビュートは振り向くこともせず玉座の間から出て行った。

 城門付近に取り残されていたペイントローラーは、城の周囲に点在する茂みに身を隠し、
ドロッチェとビュートの目からなんとか逃れていた。空で戦いを繰り広げていたカブーラ
ーは、何時の間にやら姿が見えなくなっていた。ペイントローラーが作り出したクレヨン
の生命体がドロッチェたちを翻弄する間に、上手いこと逃げ果せたようだ。
 というこトハ、後は私が如何にかしてこの窮地を脱すれば良い、というこトカ……
 夜の闇に紛れながら、周囲を警戒する。
 ふと、デデデ城の搦め手から人影が一つ、表に出てきた。その影はデデデ城から程近く
にある夢の泉に向かっているようだった。彼が夢の泉で何をするのか見届けならない気が
して、ペイントローラーは逡巡しながらもその影を追った。

 オーロラ輝く空の下にあるのは、ポップスターの夢の泉。
 プププランドだけではなく、ポップスターに住まうすべての生命に夢と希望を与える光
のエネルギーの源である、この泉の前に青年が立った。
 青年が背後を一瞥する。その視線が、ペイントローラーが身を潜めている物陰を通り過
ぎたが、そのまま青年は夢の泉に向かい直し、刀を抜いた。ペイントローラーなど取るに
足らないとでも考えているのかもしれない。
 息を潜めてペイントローラーが見つめる中、青年は刀を徐に上段に構え、躊躇うことな
くスターロッドに向けて振り下ろした。
 スターロッドは呆気なくくろがねの刃に打ち砕かれ、その破片が残光を残しながら辺り
一面に散らばった。
 夢の泉から放たれる光が完全に途絶えたのを確認すると、青年は踵を返した。結局彼は、
ペイントローラーの存在に気づいていた素振りを見せながらも、特に手を出すことなく夢
の泉から去っていった。
 敵の気配が完全に無くなった頃合を見計らい、ペイントローラーはスターロッドの破片
を急いで拾い集め、そこから逃げ出した。
 デデデ大王達が何処に向かったのかはわからないが、とにかくデデデ城から離れる必要
がある。そう思いながらペイントローラーが闇の中を駆けていると、白い雲……大きさか
らして、クラッコと思しき影が小高い丘の上に降りていくのが見えた。

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投稿日 : 2009/01/06(Tue) 06:23 
投稿者 : あおかび  


 改めて周りを見回し、孤独な青年は面白くなさそうに「フン」と呟いた。
辺りには無色透明に限りなく近い水晶が、緑色の植物の代わりに生えている。
上手い具合に角張っているので、それぞれが混じりけのない雪のような小さく眩い光を放っている。
まさに、地上に落ちた満点の星空である。
この辺り一面の輝きに勝る物は、この星、いや宇宙のどこを探しても見つかるわけがない。

 しかし、この清らかな光はビュートにとって目障りな物でしかなかった。
水晶が輝く度に折ってしまいたい気持ちになるが、こんなところで刃を悪くするのは無意味だ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


事の発端は数日前のことだった。

「さて、我々の目的をもう一度確認してみよう」

 ビュートが夢の泉から戻ってくるやいなや、ドロッチェはぬけぬけと説明を始めた。

「我々は、ポップスターにゼロ様をお呼びするべく今まで活動してきた」

 今のゼロは、これまで「ゼロ」と呼ばれた物体より強大で分かりやすいだけの力を持っている。
一度動き始めれば星の戦士であれ何であれ、今のゼロを止めることは不可能だろう。
だが、今まで以上の不安定さも同時にはらんでいる。
泥水が少しでも混ざっている所では住んでいけない魚のように。
そのため、今のゼロを呼び出すためにはポップスターの環境を少しずつ作り替える必要があるのだ。

 そこで立ちはだかる巨大な砦が、夢の泉やマジルテなどのパワースポットである。
しかしそれらが全て無力化すれば、ハイパーゾーンと同じ環境を作り出すことは難しくない。
故に、ビュートは夢の泉にあるスターロッドを破壊した。
マジルテの力の根元を探すために、配下をそこに多く送り込んでいる。

「――そして、ついにマジルテの核を発見した。
 ビュート殿に行ってもらうよう、ゼロ様から仰せ言を預かっている」

 ドロッチェの顔には不敵な笑みが浮かんでいた。
いつの間にそんなに偉くなったのやら。
ネズミより化け狸でいる方がお似合いだ、とビュートは考えた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



結局、不承ながらもビュートはここマジルテへ徒歩で行くことになった。
デデデ城からマジルテはとても遠い。
ここへ来るまでに太陽と月の入れ替わりを何度見たことやら。

 しばらく歩いていると、水晶の物陰からブロントバートがのっそり飛び出した。
立ち止まりはしたものの、ビュートは得物を構えようとしなかった。
そんなピュートの姿を確認すると、虚ろな目をしたブロントバートは背を向け、危なっかしく前へ飛んでいく。
ビュートはそれについていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 同時刻、マジルテ「神秘の楽園」にて。
迷宮のような聖堂の中を歩く、一匹狼の姿があった。
誰もが目を引く水色の鎧。
一際大きな左肩の傷をはじめとして、鎧の至る所に大小様々な傷がついている。
見た目こそは美しくないものの、それらは剣士としての勲章でもあった。

 扉を開くと、広大な空間に出た。
壁や柱に彫られている装飾は厳かだが、それを除けば薄暗いことしか特筆すべきことのない、広いだけで何もない部屋だ。
地面にぽっかりと空いた巨大なクレーターを思わせた。

 何かの気配を感じたのか、そのブレイドナイトはある方向へ向かって歩いた。
しばらく歩くと、薄暗い空間の中にぼんやりと浮かび上がる物が見えた。
そこからさらに近づき、ブレイドナイトは足を止めた。

 月明かりのようなおぼろげな光に台座のような物が照らされていた。
そして、その台座には神々しい雰囲気に包まれた剣が突き刺さっていた。

 夢にまで見た至宝を前にブレイドナイトは息を呑んだ。
そして意を決したのか、駆け足で台座に近寄ろうとした――


 刹那、敵意と共に闇の中に一筋の閃光がきらめいた。
ブレイドナイトは後ろに退いてこれを回避した。
そして、懐から木刀を取り出す。
次の瞬間、視界の中に鈍く光る剣が音もなく飛び込んできた。
鈍い光が身体を通り過ぎる寸前に、ブレイドナイトは得物を構えてこれを凌いだ。

「また会えるとは。お前もこれを所望か」

 聞き覚えのある声が響く。
相手の剣が木刀を押し出そうと前へ出た。
ブレイドナイトも負けじと力を込める。

「だが、私はこれを壊さねばならない。邪魔をするというなら――」

 火花が飛び散り、剣がぶつかり合う音が虚ろな空間の中に響いた。
それから間髪入れずに、両者は互いに距離をとった。

「――この太刀の錆となるがいい」

 ダークブラウンの髪の剣士――ビュートは、距離を詰めるために右足を前に踏み出した。
それに対しブレイドナイトも、前足に体重をかけ、木刀を勢いよく振り上げた。
そして、飛び出してきたビュートめがけて振り下ろす――

 虚ろな空間の中で、火花が飛び散り轟音が鳴り響く。

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以下は勝手な補足。
・途中で出てきたブロントバートはダークマターに乗っ取られたものです。
 ビュートをマジルテの根源へ案内することが最初で最後の役割です。
・笹さんのブレイドナイトが求めている伝説の剣を、ビュートは任務で壊そうとしているみたいです。
(それ自体がマジルテの根源かどうかは不明)
・ビュートとブレイドナイトはただいま戦闘しているみたいです。
・ブレイドナイトが伝説の剣を偶然見つけたのか、事前に情報を得ていたかどうかは分かりません。
(好みで解釈してくだされば、と思います)

1月13日:追記
ビュートが夢の泉へ行ってから数日後の出来事です。
カービィたちはもう宇宙へ行った頃かもしれません。

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投稿日 : 2009/01/06(Tue) 11:22 
投稿者 : tate   


 雲の隠れ家……ちょうど、グレープガーデン、ヨーグルトヤード、オレンジオーシャン
が作る三角形の中央辺りに、空に浮かぶ雲にまぎれて存在する空間だが、そこにやってき
たカービィとフラービィを待っていたのは、スターロッドの破片だった。
「……え? えええ??? 何で!? デデデがやったの?」
「違うわい、ワシの城を攻めてきた輩の仕業だ。どうやら、奴らの目的は最初から夢の泉
の制圧だったようだ」
 フラービィは砕かれたスターロッドの一片を手に取った。淡い光こそ放ってはいるが、
ポップスター全域に光のエネルギーを行き渡らせる程の力はないだろう。大小さまざまな
大きさの欠片をスターロッドの形に並べてみるが、所々に隙間がある。これをこのまま繋
いでも、元のスターロッドの姿には戻らなさそうだ。
「このまま接着すればいいのなら、僕が直せるかなと思ったけど……これじゃつぎはぎロ
ッドになっちゃうね」
 フラービィは苦笑いを作り、カービィを見遣る。カービィの眉がハの字になった。
「フラービィ君でも直せないんだ……デデデは直せないの? 前、デデデはスターロッド
を分けたりくっつけたりしてたじゃん」
「あの時とは事情が違うわ。ワシの手で分割したのでなければ、元には戻せん」
「どうしよ……」
 カービィが、フラービィとデデデ大王の顔を順番に見て、しゅんと肩を落とした。

「あ……お帰りなさいませ、メタナイト様」
「お帰りなさいませ、要塞は如何でしたか?」
 誰もが言葉を発することも出来ず、沈黙が場を支配しているところに、メタナイトが戻
ってきた。その姿を目敏く見つけたブレイドナイトとソードナイトの二人が、無言のまま
隠れ家に入ってきたメタナイトに声を掛けた。
 メタナイトは小さく手を挙げ、それに答える。
「おお帰ったか、メタナイト。その様子だと……クラッコの報告どおりだったようだな」
「はい。ですがこれは我々の話、先にスターロッドの問題を解決致しましょう」
 デデデ大王が眉を上げた。憮然とした表情で、仮面の騎士を見遣る。
「よいのか?」
「ええ。彼らも幾多の戦いを潜り抜けた戦士です、自身の力で状況を打破できましょう」
 メタナイトの言葉に、デデデ大王は嘆息した。オレンジオーシャンの一件は、メタナイ
トにとっては内輪事以上の何物でもないようだ。そして彼が一度言い出した事は簡単には
撤回しないことも、デデデ大王には良くわかっていた。
「お前がそう言うのならば、もはやワシはその件については気にしないことにしよう。し
て、スターロッドはどうする。このままでは夢の泉の奪還もままならんぞ」
「……大彗星の力を借りる、というのは如何でしょう。かの大彗星ノヴァならば、スター
ロッドの修復も可能かと」
「大彗星……ノヴァ……」
 フラービィがメタナイトの言葉を反芻する。
「そっか! えっとね、ノヴァってのは、何でもお願いを叶えてくれる彗星のことなんだ
よ。いつもは何処にいるのかわからないから、ポップスターの周りにある星の夢の泉にお
願いして、呼び出してもらう必要があるけど」
 と、カービィがフラービィに説明する。
 それは知ってるよ、とフラービィが頷いた。
「銀河の果てにいるんだよね。確かに、大彗星ノヴァなら何とかしてくれそうだけど……
フロリアやアクアリスとかの七つの星を回る必要があるよ」
 言葉を切り、フラービィは隠れ家にいる者を一瞥した。今すぐにでも戦えそうな面子は
……半分もいない。それに、ダークマターの襲撃がこれで収束したとはとても思えない。
「そうだ、ワシ達全員がポップスターを引き払うわけにはいかん。だから、カービィ」
「ほえ?」
 デデデ大王はスターロッドの欠片を睨め付けた。
「お前が、大彗星ノヴァを呼び出しスターロッドを修復させてくるのだ」

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投稿日 : 2009/01/09(Fri) 22:57 
投稿者 : フラービィ  

「とりあえず、僕はポップスターに残るよ」
フラービィの声だ。皆は頷いている。
――スターロッドの修理くらい、誰もが考えるはず。ノヴァのところへ行く事も考えてあるだろうな。
  人員を割かせるのと同時に守りを手薄にさせる。なるほどいい考えだ。
  十中八九攻めてくるだろうね。
  でも、ノヴァまでにもきっと誰かが待ち構えているだろうな。まあ、カービィなら大丈夫だろうけど。
と、そんなことを考えていた。
――後は、他のパワースポットを守るくらいしかできそうになさそうだ。
「他に、ポップスターを守っているような所はある?……大王様」
「いや、ワシもポップスターを全て統括しているわけではないのでな」
――無理、か。
だったら、と新しい方法を考えてみる。
――スターロッドの修理が終わったら夢の泉にまた挿せば光の力は戻る。
  光の力を忌み嫌っているわけだから……どう対処しに来るだろうか。
  泉の破壊……?いや、それだったら一緒に壊しておけば済むはずだ。
次第に頭を抱え始める。様々な考えが頭の中を駆け巡り、絡まりあう。
――やめよう、これ以上考えるのは。
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投稿日 : 2009/01/10(Sat) 10:42 
投稿者 : あおかび  


 おぼろげな闇の中で閃光がきらめき、火花が舞う。
それに追いつこうとしているかのように、遅れて刀同士が打ち合う綺麗な音が響く。
不規則にゆらめく閃光や舞い散る火花は、たまゆらに熱く輝く陽炎のよう。
それらに続く戦いの旋律は陽炎の鼓動を観る者聴く者に伝えようとしていた。

 感性が足りない者ですら、観れば心を奪われ聴けば心が躍るに違いない。
様々な作品に触れたことのある者ならなおのこと、涙を流さずにはいられない。
これを、芸術と呼ばずに何と呼ぼうか。

――しかし、それは安全な場所にいるのだからそう感じるだけにすぎない。
当の本人達は、賛美されたくて剣を交えているわけではもちろんない。
相手の誇りを砕くために、彼らは己の命をベットにして戦いの音色を奏でる。
至る所にある神経を逆立たせ、振り下ろす刃に渾身の力をこめて――


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ハアァッ!」

 必死の猛攻の中でわずかにできたビュートの隙を狙い、ブレイドナイトは木刀を左下めがけて振り下ろした。
ビュートの胴には鎧らしい物が付けられていない。
そのため、この一撃が決まれば相手は確実に太刀から手を離すことになる。
――が、そんなにうまくいかないことは、ブレイドナイトにも分かっている。

 木刀の着弾点に突如小刀が現れた。
刃にこめられた力なら、飛び出してきただけの小刀よりも思いっきり振り下ろされた木刀の方が当然強い。
しかし、ビュートは無駄のない手さばきで小刀を操り、ブレイドナイトの一撃を受け止めた。

 ビュートは二刀流の使い手である。
2本の刀で同時に攻撃するのも二刀流であるが、そうやって刀を使うことは案外少ない。
状況にもよるが、片方を盾の代わりに防御に使い、もう片方に攻撃を任せるのが基本のスタンスである。
自身のスタイルではないが、剣士としてブレイドナイトにも知識はある。
もちろん、流派によって細かい型や戦い方は異なるが、大まかな戦術は変わらない。
それはこの青年においても例外ではないらしい。

 舌打ちをしながら、反動を利用してブレイドナイトは遠く後方へ跳んだ。
木刀の構えは崩していない。
着地前に追い打ちを仕掛けるためか、ビュートは瞬時にに距離を詰めた。
あと2歩踏み出せば太刀が届く――そんなとき、ブレイドナイトの木刀が輝き始めた。
闇の中であるにも関わらず、木刀は光という光を貪欲に集めていた。
やがて木刀には、直視したら眼をつぶす程の光が集まっていた。

 あと1歩。
足が宙に浮いているまま、ブレイドナイトは剣を横に振るった。

「ソード、ビーム――!」

 木刀を包んでいた光が、鋭利な刃となって放たれた。
不意の一撃に、ビュートは思わず防御せざるを得なかった。
光の刃に逆らおうとするも虚しく、ビュートは後ろへ押されていく。
光はだんだん小さくなり、勢いも弱くはなってゆくものの、小刀を構え直すことはできなかった。
光が完全に消え、体勢を立て直したとき、目の前には突きの構えで飛び込んでくる水色の剣士の姿があった。

 回避する暇さえなければ、小刀で受ける時間すらなかった。
ソードビームを受けきった反動のせいで、小刀を防御に持って行くには1秒もなくともコンマ数秒ほど足りない。
だからといって太刀で凌ぐのも、両手持ちの木刀の前ではいつか致命的な隙を作るのも目に見えている。

(一か八か……)

 青年は自分に向かい来る相手を、鋭い眼光で睨みつけた。
そして、太刀を握る手に力を入れた。

 ブレイドナイトは、ほんの数刻前までは自分の勝利を確信していた。
太刀で受けられてもしょせんは片手。
両手で持つ方が力も入るのは誰でも分かる。
だが、自分の目の前に太刀が飛んできたとき、そんな甘い考えは彼の中から消え失せた。

 ビュートは唯一の命綱であった太刀を投げつけたのだ。
それと同時に即座に横に跳んだ。
何もなければ回避行動をとっても、間に合わないことは予測できていた。
だが、少しでもブレイドナイトの勢いが落ちれば、何とかそれも可能になる。
そしてビュートの思惑通り、ブレイドナイトは目の前に現れた太刀を薙払った。
そのときのブレイドナイトの意識から青年の姿が消えたこと。
これが彼にとって致命的な瞬間であり、ビュートにとっては願ってもいない好機だった。

 太刀が音を立てて床に落ちた。
次に着陸したとき、ブレイドナイトは背後からのローキックを受けて身体が吹き飛んだ。
木刀は放物線を描いて手元から離れた。
身を起こした時に、無慈悲な太刀が振り下ろされ、彼の剣は真っ二つに寸断された――


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「お前の負けだ。ブレイドナイト」

 ビュートは、傷だらけの鎧に太刀の切っ先を向けた。
しかし、ブレイドナイトは物怖じもせず静かに腰を下ろしていた。
そして、中心にある赤い玉(おそらく、それが眼であろう)は切っ先ではなく、勝者の眼を捉えていた。

「肝は据わっているようだな。さすがと言うべきか」

 ブレイドナイトは顔色ひとつ変えずにビュートの顔をじっと見つめていた。
自分の記憶に、深く刻み込もうとしているかのように。

「なぜ平然としていられる」
「私とて剣士の端くれだ。この程度の覚悟など、とうの昔に出来ている」
「……覚悟とは」
「貴様には2度も敗れた。いい加減ケジメを付ける必要がある」

 もともと赤いブレイドナイトの眼は、真紅の光を湛えていた。
しかし、それには興味がないと言わんばかりにビュートはそっぽを向いた。

 何かを思い出したかのように、ビュートは太刀を持ったままブレイドナイトから離れた。淡い光に覆われている台座――剣の前で止まった。
 そして太刀を構えた。しかし、ビュートは台座と同化したようにそれっきり動かなかった。

「壊すんじゃないのか?」

 ビュートは眉一つ動かさなかった。

 やがて太刀を鞘に収め、台座に刺さっている剣を引き抜いた。
そして、剣の全貌が露わになった。
剣と台座から光は消えて辺りは暗くなったが、互いの眼はいつの間にか暗闇に慣れていたので何も問題なかった。

 ビュートは背を向けながら、ブレイドナイトの座っている方へ剣をおもむろに放り投げた。
空虚な音が空間に広がり、すぐに吸い込まれた。

「それがあれば強くなれるか」

 誇り高き剣士はすぐに反応できなかった。
それに構わず、身勝手な青年は続けた。

「また会おう」

 そうとだけ言ってビュートは闇の縁へ向かって歩いていった。
その姿がほとんど消えかけていたときにやっと、ブレイドナイトは口を動かせるようになった。

「壊すんじゃ、なかったのか……!
 こんなもの、どうやって受け取れと言うんだ……!
 どうして、トドメを刺さない……!
 私を、生かすな――!!」

闇の外へ抜け出た青年の耳には届かなかったようだ。
行き場を失った言葉は、静かな空間の中で虚しく木霊した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「マジルテの無力化に失敗、か」

 洞窟の出口へ向かいながら、青年はひとりごちた。

「泥棒ネズミにとやかく言われるだろうが」

 この洞窟――マジルテには、たくさんの配下が送り込まれていた。
その主な目的は、マジルテの力の源の発見と制圧である。
繰り返すが、マジルテを制圧するために軍勢の大多数をここに回していたのだ。
そして、1人の青年のわがままのせいで、目的を達成できなかった。
となると、この損失は笑って無視できない規模であることは誰にでも想像できよう。
……常識がある人なら。

「この程度の損失など、小さくないわけがない」

青年は、歩いて帰ろうか迎えを待とうかと呑気に考えていた。
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